税の学習コーナー

税の学習コーナー税の作文(中学生・高校生)令和5年度 中学生の「税についての作文」各大臣賞・国税庁長官賞受賞者発表

令和5年度 中学生の「税についての作文」各大臣賞・国税庁長官賞受賞者発表

内閣総理大臣賞

【題名】繋がる社会、人、未来

【都道府県】東京

【学校名・学年】北区立明桜中学校 3年

【氏名】松ア 潤

 税が話題となる時、なぜ負担という面が強調されるのだろう。誰もが税の恩恵を受けているはずなのにと不思議に思っていた。僕が税を意識するのは消費税を払う時くらいだが、それでも通学路の整備や学校整備、教材や実験道具、部活の試合を行った体育館、幼い頃から通い続ける図書館など、身の回りには享受している物が多い事を実感している。これらは納税の仕組みが整っているからこそ活用できるが、人は税による恩恵をあまりにも当然のように受け入れ、その目的や役割よりも負担感に視点を向けるのではないか。

 では、納税しなければ負担が減り楽なのだろうか、と興味を持ち調べてみると、そうではない実例を見つけた。一九八十年代、南半球の人口一万人程の小国は、リン鉱石で財をなし、無税のまま医療も教育も公共サービスも提供した。結果は資源の枯渇と共に約三十年で国の経済は崩壊、近隣先進国の援助に依存し現在も苦心している。僕は財政破綻は当然だが、人々から勤労意欲と納税意識、税に対する関心が消滅した事が怖いと思った。国や地域を衰退させた元凶だと感じたからだ。

 税は財源があるからとやみくもに配分したり、後先考えず一時を謳歌する為に使うものではない。納税している人だけがサービスを受けるものでもない。それでも税を納めるのは将来社会を支える子供達の為、今後の社会をより良くし、誰もが安心して暮らせるようにと願うからだ。税は「社会と人を繋ぐ」「現在と未来を繋ぐ」大切な役割を担っている。子供の僕達も、少しでも教材や施設を大事に使う、ゴミの量を減らす、省エネを心掛け、自身の健康を保つなど貴重な税を大切に使う事に協力はできる。そして何よりも税は大人が考える事だと決めつけず、関心を持ち続けることが必要だと思う。

 今後、少子高齢化が更に進み、税を納める人は減るのに福祉や医療に使う税金は増えるだろう。今、身近にある課題は将来の自分に関わると自覚を持ちつつ、税の目的や使い方を学びたい。僕が小学生で大怪我をした時もその後の通院も、また税について情報収集しに行った図書館も、誰かの尊い税が使われている。それならば、いずれ僕が働き手となった時、納税の意義や目的をきちんと理解していたい。そうする事できっと納税を「負担」ではなく「誇り」と思えるだろう。

 僕達の暮らし一日にどれだけの税が活かされているのか今一度考えたい。社会基盤を支える税を無駄にしていないか。災害や疫病への備えは十分か。地域の課題は何か。情報やサービスを受け取れない人はいないか。税について大人も子供もオープンに意見を交わす事で学びを深め、発信力を高めれば「社会と人、現在と未来を繋ぐ税」というものをより身近に感じ、正しい在り方を見つける力になると思う。

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総務大臣賞

山林と都市を税でつなぐ試み

【都道府県】山梨県

【学校名・学年】山梨学院中学校 3年

【氏名】疋田 櫂

 マウンテンバイクで櫛形山の山道を走り下りるのは、最高にスリリングな体験だ。スキーや登山とはまた違った、自然の中に自分を投げ込むような気分が味わえる。先輩たちと一緒にスコップで掘り、飛び跳ねて踏み固めたコースには、樹冠の枝葉の間から木漏れ陽が差し込み、吹き抜ける風に下生えのシダが揺れ、小鳥がさえずる。ここは夏でも涼しいエアコン要らずのスポーツフィールドだ。

 けれども、私は見て知っている。山梨県内の多くの山林は、このように美しい景色からは程遠くなりつつあることを。かつて林業で栄えた地域でも、山林から出荷する材木の価格が落ち込み、伐採や植林にかかる費用と見合わなくなってきたため、儲かる見込みがなくなったと判断されてしまうと、間伐や枝打ちもされなくなる。結果、ひょろ長い木が密集した、異様に暗い森になり、下生えも育たず、木は病害虫に侵され、降った雨はしみ込まずに土砂とともに斜面を流れ下る。こんな山林では、何年後か何十年後かはわからないが、いずれ必ず、ふもとの市街地へ水害や土砂災害が襲い掛かることになるだろう。山林に囲まれた甲府盆地では、治山なくして平和に暮らし続けることはできないのに、みんな気づかない振りをしている。

 この悪循環、地域の暗い未来を変えるために、新しい税金ができたと聞いた。その名は森林環境譲与税。来年から、全国でおとなほぼ一人当たり千円の森林環境税を集めて、六百億円の財源をつくる。そして間伐などを行う市町村やそれを支援する都道府県に配る、つまり譲与する。これは要するに、都市に住む多くの国民に、遠く離れた地域の林業を一緒に支えてもらおう、という試みだ。都会に住む人は、「そんな山林、自分には関係ない」「うちは木造じゃなくてコンクリートでできている」「こんな税金払いたくない」と感じるかもしれない。でも、そうではない。山林は、木材の供給源であるだけじゃない。水源であり、二酸化炭素の固定先であり、災害を防止する防災基地でもあるからだ。それどころか、「森は海の恋人」、つまり海の魚や貝や海藻ですら、山林からの恵みを、川を通じて受け取って育っていることがわかってきた。そもそも山と川と海は、大きな循環を担うひとつの生態系だと考えた方が、おかしな間違いを繰り返さなくて済む。

 今、日本の山林には伐期つまり切りごろを迎えた木材がたくさんある。これをちゃんと切って使い、代わりの苗木を植林していくことで初めて日本は持続可能な開発目標(SDGs)を達成できる。森林環境譲与税は、都市と山林を税でつなぎ、山と川と海の絆を結び直す、壮大な試みだ。これが成功し、少しでも多くの山林が、あの櫛形山のトレイルのように美しく快適で健全な森林環境を取り戻すことを、私は願わずにはいられない。

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財務大臣賞

【題名】税は社会を反映するバロメーター

【都道府県】熊本県

【学校名・学年】熊本大学教育学部附属中学校 2年

【氏名】冨田 蒼渚

 沖縄にとっての特色ある産業は、暖かい気候を生かしたサトウキビの生産ときれいな海を生かした観光産業である。今年の夏、私は家族と沖縄旅行に出かけた。離島まで足を運び、見渡す限りのサトウキビ畑の中をゆっくりと自転車で回り、きれいな海では優雅に泳ぐ野生のウミガメに出会うことができた。

 政府もこの強みを生かした沖縄県の発展のための政策に力を入れている。その一つとして国内では珍しい租税特別措置等がとられている。いわゆる免税店のことである。私は那覇空港でこの存在を知った。調べてみると、これは沖縄型特定免税店制度と呼ばれるもので、沖縄から出発する旅行客が自己使用の目的で購入するものについて、空港内や決まった店舗で商品を購入する時に、税金の一部が免除されるという制度であることがわかった。

 税収は医療や介護、教育などの私たちのくらしになくてはならない国の財源である。免税店は、税金を課さないため税収の意味では減少することになる。しかし、この制度のすばらしさはその先にあると感じた。それは次のような理由である。

 同じ商品なら関税がかけられている商品とそうでない商品、安い方を選ぶのは人の心理として自然のことである。しかし、価格が安いとその分、消費量が上がり、店舗の売り上げが向上し、さらに、増加した来客対応のために新たな人材を雇うことで、雇用が生まれることになる。すると、店舗にかかる法人税や個人にかかる所得税、住民税などの税収につながることが考えられ、その結果、さらに地域が発展し、正の循環が生まれるからである。

 世界に目を向けてみるとユニークな税制が設けられている。一つ目はイギリス。渋滞税と呼ばれるものである。首都ロンドンは特に日常的な渋滞がひどく、それを改善するために導入され、その結果、交通量が十五パーセント減少するなど、一定の効果が表れていると考えられている。二つ目はハンガリーのポテトチップス税。名称はポテトチップス税であるが、糖分や塩分などの割合が高い食品に課税され、国民の健康維持を目的として導入されたそうだ。

 沖縄型特定免税店制度をはじめ、国家の税制について感じたことは、課税や免税の運用には工夫がなされていることやその根拠に時代や社会的な課題が反映されているということである。車や住宅など環境問題を考慮した税制もその一つである。そして、外国の例も含め、共通していることは、国民のくらしの質の向上を目指したものであることに他ならない。

 税制は社会の課題を反映するバロメーターである。私は、国民の一人として、国の税制に関心を持ち、同時に社会に対する広い視野を持った人になりたいと思う。

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文部科学大臣賞

【題名】税金が造る文化と歴史

【都道府県】栃木県

【学校名・学年】大田原市立黒羽中学校 3年

【氏名】渡邉 千采

 「お役人様、それを持っていかれたら、おらたち飢え死にしてしまうだ」昔話で出てくるこのやり取りが私の税金のイメージでした。権力者が農民から年貢を取り立てる、そんな印象でした。現在でも大人が、なぜか給料から引かれていて、それで公共施設や道路ができているとか、消費税が十パーセントになって、高いけど計算が楽だな、といった認識で私にとっては遠い物と感じていました。

 学校で行われた税金教室の後、父とそのような話をしたら、「何言ってるんだ、うちは税金ととても近いところにあるんだよ」言われてしまいました。私の家は造り酒屋を営んでいます。言われてみれば、父は毎月末に酒税の申告書を作るのが大変だと言っていました。確かに、日本酒は飲み物なのに管轄が税務署であることを不思議に思っていました。

 そこで色々と調べてみると、特に間接税に面白いものがありました。酒税、たばこ税、入湯税、ゴルフ税、航空燃料税、自動車重量税などです。主に嗜好品にかけられている税金で、あってもなくてもよい物にかけられているという雰囲気の記述でした。しかし、裏を返すと、あってもなくてもよい物、すなわち誰も保護しなくてよい物という解釈もできてしまいます。それでは嗜好物という文化が衰退してしまいます。そんな産業の保護のために税金は使われています。

 酒税を例に挙げると、酒税は鎌倉時代以前に存在し、特に明治、大正時代は税収のトップで、日本の近代化に大きく貢献しました。税収の安定化の為、国立の研究所も造り、近代的な研究もされました。父も年に数回、酒類総合研究所や関東信越局の講習会に参加しています。今では、酒税により徴収された税金で日本の文化であるお酒造りの継承と普及にも税金は役立っています。最近では日本酒は海外で人気があり輸出量は伸びており、日本文化を代表する飲み物となっています。その普及活動にも税金は使われています。

 その他でいえば、ゴルフ税は周辺の環境保護、青少年にゴルフの普及、入湯税は観光の促進や周辺設備の整備、航空燃料税は騒音対策や空港整備と、その活動を支えるために必要な公共事業もそれぞれの間接税が担っていることを知りました。

 私は今まで、税金というと、公共事業や、公務員の給与といった、直接的で目に見える部分しか知りませんでした。しかし、歴史と税金は切り離せない物で、その時代の世相を反映し、文化の育成にも貢献してきたのだなと改めて感じさせられました。富の再分配という税金の大きな意義は素晴らしいものだと思います。しかし、それ以外にも税金により、伝統文化であったり、スポーツ文化、観光資源といった物の保護を育成し、後世につなげていく役割も税金はしてくれています。そして、それを将来担っていくのは私達の責任だと強く思いました。

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