税の学習コーナー > 税の作文(中学生・高校生)> 令和6年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表
令和6年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表
国税庁長官賞
【題名】日本の環境を守る
【都道府県】北海道
【学校名・学年】北海道旭川商業高等学校 三年
【氏名】和久 穂香
私の兄は、中学二年生のときに国際交流研修で台湾に行った。台湾から帰ってきた兄は「日本は清潔な国だ」とよく言っていた。兄によると、台湾にあるトイレのほとんどはトイレットペーパーを流せないし、とても臭う。水道水は飲めないため、気温が高くても温かいお茶が出てくるとのことだった。私は、この事実にとても衝撃を受けた。
日本は清潔さや衛生管理において、世界的に高い評価を受けており、多くの観光客がその点を賞賛している。特に、公共施設や公園のトイレなど、誰もが利用する場所の清潔さが際立っている。これらの施設をいつでも快適に利用できるように保つためには、一人ひとりの心遣いはもちろん、税金が大きな役割を果たしている。
税金は、国や自治体が公共の利益のために様々な事業を行うための財源であり、日本では公共サービスやインフラ整備に使われている。例えば、公園の維持管理や清掃活動は税金によって賄われており、私たちがいつでも気持ち良く利用できるようになっている。
台湾に限らず、海外の一部の国ではトイレットペーパーを流せないトイレが多く、不快な臭いがすることもある。しかし、日本ではほとんどのトイレが清潔に保たれており、トイレットペーパーを流すことができる。この違いは、単に技術やインフラの違いだけでなく、税金を使ってしっかりと管理されているかどうかも関係していると考える。日本ではトイレの清掃やメンテナンスに多くの費用がかけられており、その費用の一部は私たちが納めた税金から捻出されている。
さらに、日本の水道水が安全であることも税金のおかげであると考える。日本の水道水は非常に高い基準で管理されており、直接飲むことができる。これもまた、税金を使って水質管理が徹底されている結果である。調べてみると、台湾では水道水をそのまま飲むことは推奨されておらず、兄が体験したように温かいお茶が提供されることが一般的だということがわかった。このように、日本と他国との違いを考える中で、私たちが普段、何気なく享受している安全で清潔な環境が税金によって支えられていることに気づかされた。
税金は私たちの生活に直結しており、清潔で安全な日本のイメージを支える重要な役割を果たしている。日本の公園や公共のトイレが清潔に保たれていることや、水道水を直接飲むことができることは、私たちが納める税金によって整備されているおかげである。
私たちは普段、税金について考えることはあまりないが、税金は公共施設やインフラだけでなく、教育や医療などのあらゆる場所で私たちの生活を支えている。将来、税金を納める立場になるときには、税金の使い道に関心を持ち、政府や自治体が適切に使っているかを監視することが重要である。そして、日本の安全で清潔な環境を守るために日本国民が一丸となって取り組むことが大切である。
【題名】「予備」から「常備」へ
【都道府県】秋田県
【学校名・学年】秋田県立大曲高等学校 一年
【氏名】長澤 美来
私は中学生の頃、所得税について学ぶ機会があった。収入額に応じた一定の割合を納めるのが所得税、さらに所得税額の二・一パーセントを納めるのが復興特別所得税である。そしてこの復興特別所得税は、東日本大震災復興のために設けられた期限付きの税であることを知った。
私はこの税が東日本大震災限定ではなく、日本中で起きている災害のために広く使われるものになればいい、使わなければ貯金のように貯めておけばいい、今どれくらいの貯金があるのか分かりやすく公表すればよいのではないかと思っていた。
こう考えたのは、自営業をしている父の事務仕事を引き受けている母が、
「所得税は、給与からひとまとめにして引かれるから、自分自身がどれくらいの復興特別所得税を納めているか、はっきり分からない人が多いかもしれない。」
と話していたからだ。
しかし、その後ニュース等で、私が思っていたものとは違う方針が検討されていることを知った。課税は延長され、税額は引き下げられるが、半分程度が復興へ、残り半分は国の防衛費にあてられるかもしれないという内容だった。
少しがっかりした。なぜ復興という言葉がついているのに、防衛に使われるのかよく理解できなかったし、分かりにくいと感じた。
私は春から高校生になり、自宅から両親の運転する車で通学している。今年の夏、秋田県では大雨の被害があった。同じ市内では浸水した場所もあり、警戒を知らせるアラートが止まらなかった。電車で通学している部活動の仲間は、数日間運休となりなかなか会うことが出来なくなってしまった。秋田県だけではない。お正月には石川県での地震もあり、日本中で毎年のように災害が起きている。そのようなニュースのたびに、聞こえてくるのが「予備費」という言葉だ。国の予備費から支出されたお金が、災害にあった地方の復旧復興にあてられるそうで、調べてみると「使い道をあらかじめ定めずに景気変動や自然災害等に備える予算」とあった。このことを知った時、私は自然災害に関しては、もう「予備」ではなく「常備」するべきだと思った。予備費を減らし、限定ではない復興税が必要だと思った。
私が就職して、納税者という立場になった時、様々な税金を納めなければいけない。しかし、日本中で頻繁に起きている災害のために納税できていると分かれば、自分も社会の一員として役に立てている実感がわくと思うし、離れた地域の災害も身近に感じられる。私が産まれ、義務教育を終え、今まで多くの補助や手当があったことは知っている。だからこそ、次は誰かを支えられるように、自分が納めるべき税、そしてその税がどのように使われているのか、強い関心を持ち続けたいと思う。
【題名】国民ファンクラブ
【都道府県】群馬県
【学校名・学年】群馬県立桐生高等学校 一年
【氏名】齋藤 佳音
「日本の税金は高いなぁ。」「もっと安ければいいのになぁ。」私はふとこう思った。それと同時に世界の税金はどのようなものだろうと興味が湧いてきた。調べてみると、税金が最も安い国は五パーセントの台湾とカナダ、そして日本は六位に位置していた。また、最も税金が高い国は二十七パーセントのハンガリーで日本の二倍以上の税金に非常に驚いた。台湾の税金が安い理由としては国全体で「社会保障に頼らず自立しよう」という考え方が関係していて、台湾の方々の意識の高さに感銘を受けた。一方、ハンガリーなどヨーロッパの国々では高い税金を払う代わりに医療費、教育費、介護費が無料などと社会保障制度が整っているそうだ。保障制度の充実は国民の「安心」に繋がる大切なものである。
私は世界の国々の税について知っていく中で税金とは「ファンクラブ」の仕組みに似ていると思った。推し活ブームの到来により、ファンクラブに入っている人も少なくないだろう。会費を払うことで様々なサービスを受けられ幸せをもらえる。まさに税金じゃないか!ファンクラブと聞くと良いイメージが浮かぶ。しかし、税となるとどうしても嫌なイメージが強くなってしまう。同じような仕組みなのにどうしてこんなにも受ける印象が違うのだろうか。これは、私たちに返ってくるものが目に見えるものなのか見えないものであるかという違いだと思う。ファンクラブではお金を払うことでアイドルからの目に見えるサービスを受け取ることができる。それに対して税金とは払ったところでどのように恩恵を受けているのか分かりづらい。しかし、払った分だけ充実した社会保障を受けることができ、生活を豊かにしてくれる。ただ、ファンクラブと税にはひとつ大きな違いがある。それは、サービスを受け取ることのできる人だ。一般にファンクラブでは自分で会費を払い、自分がサービスを受けれるが、税を払うことは自分がサービスを受けられることに加えて自分以外の国民もサービスを受けることができる。自分だけでなく家族や友達、ましてや知らない人までもが一人一人の納める税に助けられている。
税金は安い方が良いという私の考えは間違っていた。一人一人の納税のおかげで助かっている人がいるということを忘れてはならない。税とは国民の幸せを願うファンが、支援を受け取って活躍するアイドルにお金を払うという素晴らしい仕組みだ。だから私も将来きちんと税を納め、国民の幸せを願い、貢献できるファンになりたい。
【題名】優しさの循環−あなたへの手紙−
【都道府県】千葉県
【学校名・学年】学校法人高橋学園千葉学芸高等学校 三年
【氏名】石川 真生
私は、先天性心疾患を持って生まれました。二歳の時に手術をし、現在は定期的に検診を受けています。高校生になり「税とは何か」を学ぶと、この病の治療が、どれほど税金に助けて頂いているのかを、知ることになったのです。
小児慢性特定疾病対策による小児特定疾病児童等への医療費助成。十六種の対象疾患を持った十八歳未満の児童が対象の制度です。私は手術時に対象になり助成を受けました。この社会保障制度は、全て税金で賄われています。そうです。今、私が元気に生きているのは、税金の助けがあったからです。
幼い頃から、母に何度も言われてきた言葉があります。
「あなたは、たくさんの方々に支えて頂いている。『ありがとう』を忘れないで。」
今までは、治療してくださる医師や看護師の方々、家族や先生方、友人たちに、感謝の心を……と、受け止めていました。しかし、この言葉には、もうひとつの意味がありました。それは、出会ったことのない納税者の方々への感謝の心です。「たくさんの方々」という表現も、しっくりきます。母に、答え合わせをしてもらいました。
「正解。今、その答えに辿り着けたのも、助けて頂いて、成長・勉強出来たからだね。」
と、そっと笑いました。顔の見える方々だけではない。顔の見えない方々からも紡いで頂いた命。繋がり。心が暖かくなります。
「税金」や「義務」という響きは、硬い表現で身構えてしまうものがあります。ですが、税金が苦しむ誰かの助けになっていると考えると、柔らかく受け取れます。例えば、目の前で困っている方がいれば、手を差し伸べるでしょう。目に映らなければ、困っていることすら知らないままでしょう。納税することで、私たちの届かない手の代わりを務めてもらうのです。見えない・知らない・届かないを解消してくれる。優しさの循環を興すことが「税金」という制度なのだと思います。
私は、頂いた恩をどう返せるでしょうか。医療の現場に、看護師として恩返ししたいという夢があります。ですが、これだけでは足りません。出会ったことのない納税者の方々への恩返し。出来ることは、ただひとつ。私自身が、納税の義務をしっかりと果たすことでしょう。私を助けてくれた方々に。大切な方々に。新たに誕生する生命に。巡り巡って誰かの命を紡いでくれるものだから。
納税者、全ての方々へ手紙を送ります。
命を紡いでくれたあなたへ
出会ったことのないあなたへ
私を助けてくれて、ありがとう。
今があるのは、
あなたにお力添えを頂いたおかげです。
私も将来は、あなたのような
優しさの循環の一部でありたい。
更に、次の誰かに命を紡げるように。
大切なあなたに、心からの感謝を込めて。
【題名】税のバトンを受け継ぐ我等
【都道府県】石川県
【学校名・学年】石川県立大聖寺高等学校 一年
【氏名】西野 由夏
令和六年一月一日。マグニチュード七・六の大地震が能登半島を襲いました。私は、祖父母の家で、お正月の団欒を楽しんでいた時に被災しました。無数の道路が寸断され、救助や支援物資の配給が極めて困難になっている能登の悲惨な現状が報道される日々が続き、何もできない自分がもどかしく、申し訳ない気持ちでいました。
しかしながら、余震が続く中でも昼夜問わず、自衛隊の物資運搬のヘリコプターが小松基地から能登方面へ飛び立つ光景を見た時、「ありがとう!頑張って下さい!」と祈る気持ちが湧き上がりました。そして、連日テレビや新聞で被災地域に入って救済活動を行う警察官や消防隊の姿や、自らも被災しながらも懸命に動いて下さる医療従事者の方々の活動を知り感謝の気持ちで一杯になりました。
私は、今回の地震の経験から、「税金とは、人々の生活や命を守ることに直結するありがたいものだ」と実感することができました。
けれども、震災から数ヶ月過ぎた頃、「能登半島地震であえて問う〜二十年後に消滅する地域に多額の税金を投入するべきか?〜」と議論されている記事を見つけ、とても寂しく悲しい気持ちになりました。
なぜなら、私の住む市もこの記事に掲載された能登地域と同じくらい人口が少なく、高齢化や過疎化が進んでいるという共通点があるため、この記事を他人事のようには思えず、身近で切迫した問題であると感じました。
そもそも、税金の役割とは何でしょう。それは、道路や橋などの整備、警察による犯罪防止や交通安全の確保、誰もが安心して学べる教育環境の提供、社会保障など私達が健康で文化的な生活を送るために必要不可欠なものばかりです。
しかし、今後の日本ではさらに高齢化や人口減少が進み、地球温暖化の影響で、気候変動による水害や風害、天災などが増加することが予想されています。私は、このままでは将来人口の多い地域と少ない地域とで、投入される税金の配分に偏りがでてしまうのではないかと危機感を持ちました。配分が充分にされない地域では、暮らしにくさを理由に人々がその土地を離れ、さらに過疎化が進んでしまうかもしれません。だからこそ、税金投入の配分によって、「助かる地域と見捨てられる地域」の差が生まれてはならないはずです。なぜなら、私達は税金があるからこそ、安全な暮らしや命が守られていることを忘れてはいけないと思うからです。
だからこそ、今の時代に合った税の在り方や配分について、社会全体で議論を深めていく必要があるのではないでしょうか。そして、私達若い世代も積極的に税金について広く深く学び、政治をより身近なものとすることが、自分達の命や生活を守る一歩につながっていくことでしょう。
【題名】見えない贈り物
【都道府県】静岡県
【学校名・学年】常葉大学附属橘高等学校 二年
【氏名】宮澤 莉子
私の人差し指には小さなキズがある。これは小学生の頃遊んでいるときにガラスで手を怪我し、治療してできた手術痕だ。大量出血に加え血管、神経を切る大怪我、特別な手術が必要だと言われた私は市外の大きな病院で七時間に及ぶ大手術をした。その頃の私は大好きなピアノに熱中していたこともあり、もう二度とピアノを弾くことはできないかもしれないという恐怖に駆られ、手術費に入院費、通院費など多くかかったであろう費用のことは頭の片隅にもなかった。しかし高校生になった今、ふと指に残る傷を見たときに、あの指の怪我を今の元通りの指にするために一体いくらかかったのだろうかと思った。そこで母に聞いてみると、
「難しい高度な手術だったから本当は何十万もかかるところだったけれど五百円で済んだんだよ。」
と。意外な答えだった。調べてみると私の住む静岡県では子ども医療費助成制度があり、病気やケガなどで入院・通院したときの保険診療医療費の一部が助成されていることが分かった。そしてこれらは税金が財源となっていることを知った。私は税に支えられて生きているということを身をもって実感した。税のおかげで私は、傷跡さえあるものの普段通りの生活を送り、大好きなピアノも続けることができている。誰かが納めてくれたお金が形を変えて私を救ってくれた。なんだか目には見えないプレゼントを受け取ったかのように感じて嬉しくなった。
しかし、以前の私は納税に対してあまり良いイメージは無かった。なぜなら納税は国民の「義務」とされていて、大切なお金を搾取されているというイメージが頭のどこかにあったからだ。しかし、よく考えてみると医療や教育など多くの分野で私たちの生活は税金による恩恵を受けているということに気付かされた。私はその恩恵があることを当たり前に思って過ごしてしまっていたからこのようなイメージを持ってしまっていたのだと思う。これでは誰かからもらったプレゼントをお礼も言わずに使っているようなものだ。税金に助けられて日常が送れているということを忘れてはならないと強く実感した。
私はいずれ社会人となって働く立場となり、所得税や住民税などを納めることになる。今の日本は高齢化が急速に進んでいるため二〇五〇年には現役世代一・三人で一人の六十五歳以上の方を支えなくてはならないと言われている。現役世代の負担の増加が見込まれるこれからを生きていくためには多くの人が税金への関心を高め、真剣に向き合っていく必要があると思った。税金を納めるということ、それは送り先も贈るものも見えないけれど誰かに幸せをプレゼントするということ。私はこの考えを持って社会の一員として貢献できる大人になりたい。
【題名】税は『当たり前』を支えるパスポート
【都道府県】兵庫県
【学校名・学年】兵庫県立小野高等学校 一年
【氏名】山内 莉瑚
「母子手帳なくなるんや。」
ポツリとつぶやいた母が読んでいたのは、母子手帳がデジタル化するという記事だった。現行の紙での配布をなくし、マイナポータル上で同様の仕組みを構築。アプリ上で、検診や予防接種の予約、問診票への入力が可能になり、負担軽減や効率化を図るという。
「りこはもう高校生やし、この先ほとんど使うことはないと思うけど。」
そう話しながら、私の母子手帳を取り出し、見せてくれた。中には母や病院の先生の手書きの記録、成長曲線の点、予防接種の欄にはスタンプがビッシリと押してあった。
「私って、すごい数の予防接種してきたんやなあ。」
驚いていると
「そうやで。しかもこの中のほとんどが小学校入学前に打ち終わらなあかんからな。お母さん一人やったら、いつどこで何のワクチン打てばいいか把握できんかったと思う。それにワクチンが有料やったら何個かはあきらめたかもな。」
冗談っぽく話す母に、私もひどいなあと笑いながらも、『当たり前』に無料で受けれることって、実はすごいことなのではと思った。
予防接種法によると、必要とする国民すべてが等しく接種できるよう全額国庫負担する、とある。つまり税金が、貧富の差によって打てるワクチンの数や、命に関わるリスクの差をなくしているといえる。税金を支払うことは国民の義務。学校で学び理解はしているものの、どうしても貧しい人ほど負担が大きく『奪われるもの』というイメージがあった。しかし予防接種のように、貧しい人にも平等に『与えられる』ことに使われる税金が多くあることに目を向ける必要があると思う。
母子手帳もそのひとつだ。市役所や保健センターで税金により無料で発行される。妊娠・出産・子供の健康の記録がまとめられ、保護者が手元に保管できる一冊。この日本で生まれた仕組みが今、世界に広がっている。難民の親子のカバンの中に母子手帳があり、国境を超えても予防接種記録を基に医療を受けることができたという。このことから母子手帳は『命のパスポート』と呼ばれるようになった。
誰も取り残されない社会へ。税金もまた私たちの社会の『当たり前』を支えるパスポートだ。私が将来手にする母子手帳はデータ上で、形は変わるかもしれないが、その仕組みは変わらない。税もまた、社会や生活様式が変わっても『当たり前』を支えることは変わらないだろう。税金は、世代を超え人々を将来を未来を繋ぐパスポートに違いない。
【題名】魔法の紙がくれたこと
【都道府県】山口県
【学校名・学年】山口県立下関中等教育学校 五年
【氏名】康富 暖叶
幼い頃よく体を壊していた私は、病院の受付事務の人によくピンク色の紙と保険証を渡していた。ピンク色の紙について母に聞くと、「これがあれば暖叶は無料でお医者さんに診てもらえて、お薬ももらえるんだよ。」と言われ、この一言に幼いながらも私は衝撃を受けた。
成長し、あの魔法のようなピンク色の紙が何だったのか理解できるようになった。「こども医療費助成制度」の紙である。私が住む山口県が、安心して子育てができる町づくりを推進することを目的として創設した医療制度である。この素晴らしい医療制度に感動するとともに一つの疑問が浮かぶ。この医療制度の下で黙々と支え続けているものは何だろう、と。
「税金」である。多くの人々からのお金によってあの魔法の紙は出来ていた。私はあの体験から税は人を助けるものであると確信したのだった。
魔法の紙から医療制度について興味を持ち調べていると、「アメリカは医療格差社会である」という旨の記事を見つけた。アメリカでは障害者や高齢者、低所得者に向けた医療制度がほとんどであり、一般市民は富裕層でない限り医療をしっかりと受けられない、「医療格差社会」にあると記してあった。
「医療格差社会」という日本の医療とは無縁に近い言葉に驚きながらも、私は再び日本の医療制度に感動した。日本の医療制度は国民全員を公的医療保険で保障しているため保険証があれば、いつでも自由にどの医療機関でも公的保険を使った医療を受けることができる。アメリカだけではない、他のどの国よりも日本の医療制度は人が人を支える「税金」によって最高峰にあると感じた。
「日本に税金は必要ないのではないか。」そんな声をテレビや新聞記事で最近目にする。私はそうでないと思う。日本国民にとって税が無ければ他の国のように「医療格差社会」と有縁になり、「税」という一種の苦しみから解放されたはずなのに自分で自分の首を絞めているような錯覚を起こしてしまう。
また、「税」というものにおいて国民は平等であるからだ。平等であるから富裕層から多く、貧困層からは少なく、ある時は全員から一定にとる。そしてバランスを保ち、医療制度を始めとした様々なサービスに姿形を変え、私たちを救済するのである。
こども医療費助成制度の紙を魔法の紙だと感じたのはひょっとしたら私だけなのかもしれない。でもあの紙は「税」の素晴らしさについて教えてくれ、今こうして私が「税」について作文を書く機会を与えてくれた。
私にとってあの紙は昔も今も変わらず魔法の紙である。
【題名】税への理解は社会を支える第一歩
【都道府県】香川県
【学校名・学年】香川県立観音寺第一高等学校 二年
【氏名】内林 愛
昨年の夏休み、私は「豊かな老後を送るために」というテーマで、深刻化する高齢化社会の現状や高齢者の抱える不安について調査を行い、統計をまとめていくと、様々な問題が見えてきた。
日本の高齢者が抱える不安の第一位は「お金」で全体の六割以上を占めていた。近年の物価や光熱費の高騰、平均寿命の延長などで「受給される年金額で老後やっていけるのか」という不安を多くの高齢者が抱えていることが顕著に現われていた。
現在の高齢者は、敗戦で全てを失ったところから再出発し、誰もが復興を目指して必死に働き、高度経済成長期の原動力となってきた世代である。今日の豊かな日本が形成されたのは、この世代の人たちの努力の下にある。それなのに、老後に待ち受けていたのが「困窮生活」だったとは、本当に胸の痛む現実だ。
年金、医療、介護など社会保障費の財源は、国の税金に頼っている部分が大きい。
しかし、社会保障費以外にも頻繁に起きる自然災害やコロナなど予期せぬ災害に対処する防災予算、それに加えて加速化する少子高齢化などで、国の借金はどんどん膨らみ、経済状況は悪化する一方である。
この問題に対策を打つには、税のしくみを社会状況に応じて改善し、消費税、所得税をはじめとする税金による財源を増やしていくことが必要不可欠だと私は思っている。
そのために私たちができることの第一歩が、「税への理解」なのではないだろうか。
自分自身もそうであるが、私たちは増税や負担金など義務に対しては敏感に不快感を抱くにもかかわらず、税金からの恩恵については、当然のように捉えて感謝を忘れがちだ。
私たちの生活は税金によって守られている。警察、消防、救急によって安全が。道路整備やゴミ処理によって快適な暮らしが。恵まれた教育や高度な医療が受けられるのも税金に支えられているからである。日常の生活を改めて見直してみると、どれほど税金の恩恵を受けているかが見えてくる。それは、当たり前のことではないのだ。
以前、祖母が話していた。女子が大学へ進学することが珍しく、世間から良く思われていなかった時代に祖母は無理を押して大学へ進学した。ずっとずっと後ろめたい気持ちを抱えていたが、猛勉強して教員となり、貰った給料から税金を納めた時に初めて、社会から認められた、許された気がした、と。
税金を納めるということは、誇りをもって社会で生きていくことにも繋がるのかもしれない。
将来、私も仕事に就き、社会の一員となった日には、精いっぱい働き、真面目に税金を納めることで、高齢者の暮らしを支える一助になれば嬉しい。
「人生百年時代」これまで私たちを支えてきてくれた高齢者の人たちには、思いきりシニアライフを楽しんでもらいたい。
【題名】能登半島地震 雑損控除が復興の力に
【都道府県】福岡県
【学校名・学年】西南学院高等学校 二年
【氏名】永野 朔太郎
私の父は弁護士の仕事以外に、ライフワークとして被災地の復興支援の活動を長年続けている。今年元旦に発生した能登半島地震でも、父は、現在父が単身で生活する静岡市から毎月能登を訪れ、避難所や仮設住宅で被災された皆さんや職員の方に、これからの生活再建のための支援制度の説明会、相談会を行っている。
私も地震発生から半年を経過した今年七月、父に同行する形で、石川県七尾市で開催された被災者説明会の手伝いをした。手伝いと言っても私がしたことは、参加された被災者の皆さんに配布資料や御菓子(私がいま母と住んでいる福岡で購入したもの)を配ったり、会場の片づけをした程度のものだ。しかし、当日は35度を超える猛暑日にもかかわらず会場には続々と被災者の方が詰めかけた。当初予定していた机では足りず次々に机が追加され、結局決して狭くない会場は満員になった。
被災者の方が再建につながる支援制度などの情報をいかに切実に求めているかをひしひしと感じた。父は一時間にわたり、大きな文字でイラストも多用したスライドを使いながら、国や自治体による支援制度の説明をしていた。これまで父が行う日頃の防災講演会などを見学したことはあったが、被災地での説明会には平時と異なる緊張感があった。
そんな父が、中でも特に力を入れて参加された皆さんに説明していたのが雑損控除という制度だった。
「医療費控除のことは誰もが知っているのに雑損控除のことは本当に知られていない。ぜひこの機会に知っていただき確定申告をして負担の軽減につなげて下さい。」
父の口調は熱を帯び、たくさんの人が真剣にメモをとりながら聞いていた。
雑損控除では、今回のような地震で壊れたお墓の損害にも使えること。家財には国税庁の評価推定規定があるので大変使い勝手がいいこと。今はとても確定申告など考えられない心境と生活状況でも、あとからでも制度を利用できることなどが説明されると、被災者の皆さんの表情が明るくなった。
父によると、大半の被災者支援制度は半壊以上の罹災証明書がないと利用できないが、この雑損控除はそれより罹災証明書の判定の低い人でも利用できるので、被災者にやさしい制度なのだそうだ。
私は正直雑損控除どころか、医療費控除の制度も知らなかったが(後日母に聞くと私の歯科矯正治療の際に利用したそうだ)、税金の制度が被災者の生活再建や被災地の復興に大きく関係していることに驚いた。
父が言うとおりあまり知られていない制度なのだとしたら、もっとテレビや新聞広告などでも宣伝し、多くの被災者の希望につながってほしいと強く感じた一日だった。
【題名】税について気付いたこと
【都道府県】大分県
【学校名・学年】大分県立大分豊府高等学校 二年
【氏名】川嶋 千瑚
「えっ、国が定めた消費税がないの?」昨年、アメリカに留学した私はスーパーでこう驚いたのを覚えている。それと同時に羨ましさを感じてしまった自分もいた。のちに調べてみるとアメリカには消費税の代わりに州ごとに売上税という制度があるようだが、日本の10%よりは税率が低い事が分かった。「日本でも消費税が無ければ、もしくはもっと低ければ自由に使えるお金が増えるのに。」そう考えていた私は1年間のアメリカでの生活を通して少しずつ税に対する意識が変わっていったのである。
ある日、ホストマザーが書類に目を通しながら忙しそうにしていた。どうやら保険の契約手続きをしていたようだった。「契約する保険によって受けられる医療サービスも変わってくるからとても大切な作業なんだよ。」と教えてくれた。私はアメリカの医療システムについて興味を持ち、さらに詳しく話を聞いてみた。アメリカでは医療費は基本的に自己負担で、保険をかけていても治療には高額な費用がかかるので病院に頻繁に行く人はあまりいないそうだ。また、救急車を呼ぶのにも莫大なお金がかかると知った私はとても驚いた。
では日本の医療システムはどうなっているのだろうか?日本には、国民皆保険制度というものがあり、私達は原則かかった医療費の3割を負担するだけで良い。加えて、高齢者や幼児はさらに自己負担額が低く、自治体によっては高校生までは医療費を無料としているところもある。このような制度を可能にしているのが税である。緊急時には救急車がかけつけてくれ、いつでも気軽に医療機関を受診できる。私は日本で生まれ育ち、この恵まれたサービスが当たり前だと思ってしまっていた。しかし、海外に出て日本を俯瞰的に見つめることでこの環境の素晴らしさに改めて気付かされた。そしてそれを支える税の必要性を強く認識させられた。
日本では医療や年金、福祉など私達国民が受けることのできる公的サービスにかかるお金である社会保障費が国の歳出の約34%を占めている。税金が私達が豊かで安心した生活を送れるよう使われていると感じた。一方で増え続ける社会保障費をどう確保していくかがこれからの日本を支える私達に与えられた課題だと考える。
今年、私は成人を迎えた。大学生や社会人になったら消費税以外にも所得税を納めることになる。国民の生活を支える税をしっかりと納める責任のある大人になりたい。その為には、高校生である今から税の使われ方や種類、納め方などアンテナを張って情報を集める必要があると思う。18歳になった事を機に税について「知り」、「考える」責任をより自覚していく。
【題名】「思いやり」を繋ぐ税
【都道府県】沖縄県
【学校名・学年】沖縄県立八重山高等学校 一年
【氏名】仲辻 杜宇子
「夏休みの宿題は、『税に関する作文』です。」
先生からの指示があった時、私は漠然とした。普段の税との関わりといえば、商品を買うと課せられる消費税くらいしか思い当たらない。また、大人になったら納める所得税、住んでいる地域に払う住民税、タバコ税、酒税…。どれも「納めさせられる」というマイナスなイメージだ。あまりに税との関わりが薄いと感じていた私に母が言った。
「病気の時、お世話になったやろ。」
それは、私が小学一年生の頃抱えていた病気についてだった。激しい運動をすると異常な速さで心臓が動く発作が度々起きていた。そのため、休み時間に友達と鬼ごっこをすることも体育の授業も禁止され、その頃の私は辛く悲しい思いをしていた。早く治ることを望んでいたが、私の住んでいる石垣島では行うことができない高度な治療が必要だった。そんな時、沖縄本島の大きな病院で治療できることが決まった。何度か治療のために本島まで通い、無事手術を行うことができた。今思うと、とても高度で大規模な治療だったことに加え、石垣島と本島との往復も何度もしたため、とても手に負えるような金額ではなかったはずだ。しかし、母は
「0円だった。」
と笑顔で言った。どうやら、治療費は県の制度で、渡航費は市の制度で補助されたそうだ。つまり、すべて税ということだった。私を救ってくれたのは、税だった。誰かが納めた税のおかげで私の命は救われたのだ。
今だって、税のおかげで元気に生きていられていると考えると、私の中で税へのイメージが大きく変わった。今まで、「納める」行為にしか注目していなかったが、納められた先の税に注目すると、社会の中で大切な役割を担っていることが分かる。例えば、水道工事や学校など、公共のものはすべて税で成り立っている。どれも、私たちの中で当たり前になっているが、これらのおかげで私たちは豊かな生活が送れている。そう考えると、税を納める行為は、「義務」というだけではなく、「誰かへの思いやり」だということに気づかされる。
次は、私がどこかで苦しんでいる人を救う番である。今は消費税を、大人になったら所得税と住民税も、「誰かへの思いやり」を納めたい。