税の学習コーナー

税の学習コーナー税の作文(中学生・高校生)令和5年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表

令和5年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表

国税庁長官賞

【題名】奇跡を支えた税金

【都道府県】北海道

【学校名・学年】学校法人希望学園札幌第一高等学校 一年

【氏名】神田 悠愛

 私の兄は、心肺停止の状態で産まれた。産声をあげることもなく、母親の温もりに触れることもなくすぐにN I C U(新生児集中治療室)に連れてかれ人工呼吸器をつけられた。たった一人で、約二ヵ月もの間そこで過ごした。

 私の母は、妊娠中に胎盤剥離を起こした。胎盤剥離とは危険な合併症で引き起こすと、十〜十五人に一人の割合で母体死亡、半数以上で胎児または新生児死亡が報告されている。私の父も、「もしもの場合奥さんと子供、どっちを助けるか選択してください」となんとも信じ難い選択をせめられたという。なんとか、私の母は一命を取り留めたものの兄は重症仮死の状態で産まれてきた。私の母に当時のことを聞くと、我が子を産んだばかりなのに医師から聞かされる言葉は「一生寝たきりは回避できました。」「一生車椅子の可能性もないでしょう。」などといった重い言葉ばかりで絶望のどん底に日々落とされる様な感じだったという。私はこの話を聞いてもしも自分が両親と同じ立場だったら精神的に耐えられなかっただろうと思った。そんな状況もつかのま、高額医療費の請求はやってくる。数十万円と書かれた一枚の紙切れ。この一枚の紙切れは想像するまでもなく、絶望へと人間を追いやってしまう。しかし、両親はその心配をする必要がなかった。なぜなら、税金が支えてくれたからだ。乳幼児医療費助成制度によってこの高額医療費は支払われた。調べてみるとこの制度から助成されている金額の2割が国民から集めた税金で補われているということがわかった。さらに調べてみると乳幼児医療費助成制度は公的医療保険制度の一つだということがわかった。先進国であるアメリカでは、このような制度はなく入院費や治療費で莫大な金額が課せられる他、救急車を呼ぶだけで約四万円/一回かかることがわかった。改めて日本の制度は素晴らしいなと思うと同時に税金はみんなが平等に医療を受けられる機会を設けてくれる今の世の中に欠かせないものだなと思った。

 今、この時も全国で私の家族と同じ境遇に置かれている家族がきっといるだろう。その様な家族をもし、私たちが何気なく日々納めている税金で支えることができるのならば、それ以上の素晴らしさはないと思う。

 五十パーセントの確率で亡くなると言われた兄が今も健康に当たり前の生活を送れている奇跡。母が一命を取り留めた奇跡。そして私が産まれてこれた奇跡。これらの奇跡は、医師だけではなく陰で一緒に支えてくれた税金があってこそ結ばれた一つの奇跡だと私は思う。

 再来年で私は十八歳になる。十八歳は社会的に成人という位に位置づけられる。成人になるとこれまで以上に「税金」という言葉を聞く機会が増えるだろう。生涯に渡って納めていくということを考えると決して安い額にはならないはずだ。しかし、私はこの出来事をきっかけにしっかりと税金を納めていける大人へと成長していきたいと思う。

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【題名】税は、『会費』だ。と

【都道府県】福島県

【学校名・学年】福島県立安積黎明高等学校 二年

【氏名】矢部 理央

 税=消費税、という等式が私の頭の中ではすっかり出来上がってしまっている。たった一本のペンを買う時でさえ消費税がプラスされ、その分を払わなくてはならない。多くの店で消費税が十%に引き上げられ、増税とともに「税」というものに対する私の嫌悪感も増すばかりだ。そんな私の考えを百八十度変えてくれたのが父の言葉だった。
「税は、『カイヒ』だよ。」
食事中、父が放ったその言葉に、正直驚いた。税についての話が始まると、専門用語ばかりを使って説明する父がちらっと言ったから。「カ・イ・ヒ」とは、俗に言う会に参加するために要する費用のことだろうか。首を傾げた私に父は言った。救急車やゴミ収集、通学道路など、生活する上で必要な公共サービスを受けるための会費だ、と。

 ピンと来ないが、父に尋ねてみた。五年くらい前の私の抜歯手術のための入院について。小学生だった私はそこまで気にすることはなかったのだが。あの時は確か、二泊三日の入院だった気がする。手術費入院費、その上全身麻酔だったから、合計金額は相当なはずだったのに母は0円!と笑顔で言った。父によると、これも税があるからだと。父が仕事をして得た給料で納めた所得税、母が食材を買うために納めた消費税、祖父母が納めた住民税。これらの税によって、小学生の私は支えられていた。日本の医療の背景には「税」があった。そして、今もある。怪我をして病気をして病院に行けば、十六の私には無料で薬が提供される。それだけではない。小中学生の教材費の無償。もっともっと「税」からの恵みを受けているはずだ。

 かつての私のように、税に対して嫌悪感を抱いている人がいるかもしれない。だけど「税」とは、決して誰かを苦しめるものではなく、国民を支えるものなのだ。父の言葉を理解できた今、税に対する嫌悪感は静かに消えていき、「税」というものに興味が湧いた。私が納める消費税で誰かの生活が成り立ち、誰かの命が救われていると思えば。

 日本という社会はパーティー会場だ。パーティー参加の上で会費を納める。五十種類近くの会費で成り立つらしい。自分だけではなくその会場に集まる人たちの毎日の幸せを願いながら、両親以外にも、見ず知らずの大人たちが、消費税くらいしか納められない私の分までたくさんの会費を納めてくれているのだろう。「税」によって国民は手を繋ぎ、助け合っている。次は私の番。私は少しずつ少しずつ子供の殻を脱ぎ捨て、支えられる立場を越え、何種類もの税という名の「会費」を納める人間になって生きていく。

 いつかドレスを着ながら、パーティーに集まる未来の高校生や子供たちに、「税」のあり方について、大切さについて、父のように教えることができるだろうか。

 「税はね、日本を素敵なパーティー会場にするための『会費』だよ」と。

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【題名】Lightでrightな未来のために

【都道府県】栃木県

【学校名・学年】学校法人宇都宮学園宇都宮文星女子高等学校 一年

【氏名】小室 結衣

 私の住む町に、次世代型路面電車LRT(ライトレールトランジット)が走ることになった。開業を目前に、試運転で走っている姿をよく見かける。黄色と黒の鮮やかなデザインのLRTを見るたび、「かっこいい!」と思わずにはいられない。

 このLRTにも、もちろん相当な税金が使われている。そのため「必要ない」といった反対意見も多くあったと思う。特にLRTに乗る機会がない人にとっては、そういう思いにもなるだろう。実は私も、LRTのおかげで生活が便利になるかというと、不便になるという気持ちの方が大きい。なぜなら、LRT開業に伴って、いつも通学に使っていたバス停が廃止されてしまうからだ。こんなふうに、自分にとって直接は関係ないような事や、かえって困るといった事に税金が使われると、なんだか損をしたような気持ちになる。しかし反対に、普段公共サービスを受ける時、それが税金によって支えられていることを、私は今まであまり意識してこなかった。自分には関係がないことには不満をもつのに、自分が助けられていることはそれほど気にしていない。それは私自身、反省すべきだと思った。

 税金は、医療や教育、私たちの暮らしにおいて、様々な形で使われている。みんなそれぞれに求めるものや必要なものが違うから、自分には必要ないと思うものでも、どこかで誰かの助けになっていることがある。だから、税金の使いみちには、安易に不満をもつのではなく、もっと広い視野でみることも大切だと思った。また、無関心でいるのではなく、何のために使われるのか、ちゃんと知っておく必要がある。選挙権をもった時、税金の使いみちを決める議員を選ぶ責任があるからだ。

 みんなの大切な税金を大切に使う。それは例えば、健康に気をつける、ゴミを減らす、しっかり勉強する、などといった行動でも、税金を無駄遣いせず、与えられた機会を最大限に活かすことにつながっている。LRTも、今よりも多くの人が自動車ではなく、LRTを利用するようになれば、渋滞が減ったり、それによって環境問題が改善されたりすることが期待できる。さらにあのかっこいいLRTが走ることで街が賑わい、元気になるのではないだろうか。公共のサービスを利用する立場である私たちが、それをどう使うかでも、効果は大きく変わってくる。自分の利益ばかりを考えたり、人まかせにしたりするのではなく、私たちの暮らしをより良いものにするために、もっと税の使いみちに関心をもち、無駄にしないように心がけたいと思った。

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【題名】ありがとう

【都道府県】東京都

【学校名・学年】学校法人明星学苑明星高等学校 二年

【氏名】難波 幸來

 「母子家庭」と検索にかけたときに検索候補の一番上に出てきたのは、「母子家庭・ずるい」だった。私はとても複雑な気持ちになった。私の家は母子家庭だ。検索を進めると私が予想していた通り、離婚して養育費をもらっているのにも関わらず手当や給付が多いという声が一番だった。確かにひとり親家庭への手当には条件があるけれど、税金から賄われる手当にとても感謝している。

 私は母に父から養育費が支払われているのか即断で訊ねてみると、父からは養育費は支払われていないと言われた。しかし、私の兄は大学に、私は高校に通って良い環境のもと温かい先生方の授業を受けることができて、夢を持つことができている。これには、毎日夜遅くまで働いてくれている母が支えてくれているのが理由として一番に挙げられるが、二番目に挙げられるのは、税金によって賄われる手当であると私は思う。一年間で学校で配られる給付型奨学金の手紙や、家で見る児童扶養手当のハガキなど、色々な場面で国からの税金や皆さんに支えられて今の環境があるのだと感じます。

 ところが、「母子手当」と検索にかけてみると、子供がいても働かずに手当だけをあてに生活をしている家庭や手当を子供に使わず自分のために使う家庭、お金にそれほど困っているわけではないが余分に手当を受ける家庭などがあること、それに反して、手当が必要なのに受けることができない家庭があることを知った。本当にこの現状のままで良いのだろうか?税金は何を目的として国民から集めているのだろうか?もう一度よく考えて欲しい。そして、税金から賄われた手当を受けている皆さんは本当に正しい使い方ができているのだろうか?今、私が夢を持つことができた背景には、家のために夜遅くまで働いてくれている母、そして皆さんから集められた税金にあると私は感じている。

 今、日本のほとんどの子供が正しく教育を受けられること、夢を持って生きることができているのは、皆さんのおかげである。だからこそ、税金の意義を理解して正しく納税をし、その税金を公平に分かち合い、税金から賄われている手当を受けている人は正しい使い方をすることで、みんなが支え合い、よりよい社会を築くことができるのではないかと私は考える。そして、皆さんが日本に生きて納めている税金によって誰かの人生が助けられていることをこの機会を通して知って欲しい。ありがとう。

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【題名】税への関心

【都道府県】石川県

【学校名・学年】石川県立金沢泉丘高等学校 一年

【氏名】山田 優里

 楽しい旅行になるはずだったある日。バタッという音がして振り向くと姉が倒れてうずくまっていた。数十分前からお腹が痛いと言っていたが、まさかこれほどの事態になるとは思っていなかった。姉の見たことのないほどの苦しそうな表情に、私は思わず身震いした。緊迫した雰囲気に包まれる。初めて来た場所で病院がどこにあるのかもわからない。「救急車!」と叫ぶお父さんの声。救急車を呼ぶ現場に居合わせたことがなかった私は不安で落ち着かなかった。しかし、わずか数分後には救急車のサイレンの音が聞こえ始め、すぐに駆けつけてくれた。こんなに早く来てくれるとは思わず、とても驚いた。優しく対応してくださる救急隊の方の声にどれほど安心したことか。その後幸いにも私の姉は回復し、大事には至らなかった。

 それからしばらくして、救急車の運用は税金でまかなわれているということをお母さんから聞いた。それを知ったことにより、私は税金というものを身近に感じ、興味を持つようになった。

 調べてみると、日本には「経済協力費」というものがあるとわかった。これは世界にある開発途上国の経済発展のために使われる費用で、税金から出されている。私たちが何気なく納めている税金が世界にまで繋がっているとは思いもよらなかった。今まで税金にはあまり良い印象を持っていなかったが、税に関して本当に無知だったのだと感じた。大げさなのかもしれないが、税金によって日本だけでなく世界の人々を救うことに貢献できているのかもしれない。そう思うと、税金への見方ががらりと変わった。

 中学生のときには直接税と間接税、国税と地方税などを学習し種類や分類を覚えたものの、いざ一つ一つの税について説明しようとしても言葉が詰まってしまうと思う。それは私自身税金に無関心でただ言葉だけを覚えようとしていたからだ。しかし、税について関心を持って調べたことにより税の有用性をたくさん知ることができ、さらに他の税金についてももっと詳しく知りたくなった。私はまだ高校一年生であり、身近な生活の中では消費税を払うときくらいしか税との関わりを意識することがない。だがあと数年後、社会人になると税との関わりが一気に多くなるだろう。そうなったときも税金に対する関心を持ち続けて、税金がどのように使われているのかを知ったうえで正しく納めていきたいと思う。

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【題名】祖父からの問いかけ

【都道府県】静岡県

【学校名・学年】学校法人静岡英和学院静岡英和女学院高等学校 二年

【氏名】松永 奈桜

「なおはじいじのこと嫌いだもんな」
「なんで?好きだよ」

 毎年夏休みになると祖父とのそんなやりとりを思い出す。好き?と聞くのが照れ臭いので変化球を投げてくるのだ。私の返事を聞いて満面の笑みを浮かべる祖父。祖父は1日おきに透析治療に通っていた。治療から帰ってくるといつも疲れた様子だったが、自分のことは二の次にし、家族のことを気にかけてくれる心優しい人だった。そんな祖父が亡くなって今年でちょうど10年目になる。

 当時幼かった私は人工透析の費用のことなど考えもしなかったが、最近になり母から聞いて驚いた。1ヶ月の透析治療(外来血液透析)の医療費は約40万円もかかるそうだ。だが経済的な負担が軽減されるよう医療費の公的助成制度が確立している。高額療養費の特例として保険給付され、透析治療の自己負担は1ヶ月で1万円が上限となっているのだ。そのおかげで経済的に圧迫されず生活することができる、もし約40万円もの医療費を一般家庭が捻出することになったらとても大変なことである。金額を気にして治療を断念する人も出てくるだろう。つまりみんなが納めている税金なしでは成り立たないのだ。祖父も医療費のことを気にせず治療に専念できたことを感謝していただろう。

 税金に対しての私のイメージは決して明るいものではなかった。歴史の授業で学んだ年貢から始まり、しぼり取られる感が否めなかったし、周りの大人達からも納税する喜ばしい話など聞くわけもなく、消費税くらいにしか関わってない私だが、税金はなるべくなら納めたくないと日頃から思っていたのだ。しかし母から医療費の公的助成制度のことを聞き、考え方が一変した。透析治療を続けていた祖父との和やかな会話も、あの満面の笑みも助成制度がなければ成立しなかったのかもしれない。そう考えると感謝の念が湧き上がってきたのだ。安心して医療を受けることのできる助成制度は、病気と闘う人達にとってとても心強いものである。

 納めた税金が今日も知らないところで誰かの為に役立っている。そう考えると税金はしぼり取られるものではなく、みんなが支え合い、安定した生活を実現するための大切な財源なのだ。

 天国から祖父が
「なおは納税の大切さ分からないもんな」
と変化球を投げてくるかもしれない。
「なんで?分かってるよ」
今なら自信を持ってそう答えるだろう。

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【題名】国民一人ひとりから

【都道府県】兵庫県

【学校名・学年】兵庫県立大学附属高等学校 二年

【氏名】宮地 娃衣

 「僕が総理大臣になったら日本国民一人ひとりから一円ずつだけもらって君と一億円の結婚式しよう」これは、二〇一〇年に発表された、野田洋次郎さん作曲の、RADWIMPSの『マニュフェスト』という曲の歌詞です。私はいつも、国民全員が見ず知らずの人の「好き」のためにお金を払うなんて、そんな国は素晴らしいな、と思いながら、フィクションとして聴いていました。しかし、税についての知識を深めていく中で、今の私は、見ず知らずのたくさんの人から、たくさんの「好き」をプレゼントしてもらっていることに気がつきました。

 私が高校に入学して一番衝撃を受けたことは、教科書の値段の高さでした。初めて自分で教科書を購入し、その重さを知りました。教科書は知識の集積で、しかも分かりやすくまとめられています。値段の高さより得られるものが大きいとは理解しながらも、こんなにも高いのかと驚きました。小さいころから教科書は「配られるもの」でした。しかし、本当は「もらうもの」でした。そんな教科書は、私の学校生活の思い出でもあります。私の家の棚に置かれている、幼稚園、小学校、中学校でもらった、たくさんの本の背表紙を見ただけで「あぁこれはこんな話だったな」と思い出し、もう何年も勉強していない教科の教科書を見て「こんな覚え方を先生が教えてくれたな」と思い出します。思い出は忘れないもので、高校生になった今でも小学生のときに学んだ物語について話します。また、私が本を好きなのは、幼稚園児だったときに毎月もらっていた絵本のおかげです。毎日のように図書館に通い、新しい絵本や昔ながらの絵本を読んでいました。小・中学生のときにもらった国語の教科書は、もらった日に全て読み終えていました。勉強の合間に、社会の教科書を読むのが好きでした。

 調べてみると、日本の一般会計予算のうち、教育に関わる「文教及び科学振興費」は二〇一四年度には約五兆四四二一億円が歳出されています。日本の人口は二〇一四年時点で約一億二七〇八万人です。つまり、全員が同じ金額の税金を納めていると仮定すると一人当たり約四万三〇〇〇円を納めていることになります。一人が納めている金額は一円どころではありません。一人ひとりが納めた税金は子供たちに与えられ、今も図書館の本や教科書に子供たちの思い出が、たくさん詰められています。私も、その内の一人でした。そして今も楽しい生活を送っています。日本国民一人ひとりのおかげで。

 ついさっき道ですれ違った方も、同じ電車に乗っている方も、私たちにプレゼントをくれています。こうして、私たちの「好き」が、「未来」が育まれているのです。私たちは成長したら次の世代の子供たちに「好き」と「未来」をプレゼントします。税とはただ払うものではありません。もらうもの、もらったもの。そして、あげるものです。

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【題名】目に見えないものを守る

【都道府県】岡山県

【学校名・学年】岡山県立岡山大安寺中等教育学校 四年

【氏名】青木 和沙

 今の私の夢は裁判官になることだ。一度、裁判をこの目で見てみたいと言った私を、この夏に母は裁判の傍聴へと連れて行ってくれた。そして裁判所に実際に足を運び傍聴をする中で、中立な立場で判決を下す裁判官という職業に対してさらに憧れを抱いた。それとともに裁判所という機関に対しても興味を持った。私は裁判所から帰る途中、ふと疑問に感じたことがあった。それは裁判所の運営費は何によって賄われているかということだ。その日の夜に父に尋ねてみると、「もちろん裁判所の運営には税金が使われてるよ」と教えてくれた。

 税金が私たちの生活にとって必要なものであるということは理解していた。税金がなければ道路や橋、信号機といった公共インフラもなくなってしまうし、消防車や救急車の要請に多額の費用が個人にかかってしまう。つまり、今のような安心した生活をすることは不可能であるということだ。しかしその税金について詳しく知ろうと思ったことはあまりなかった。そこで、裁判所という観点から税金について深く知り、考えようと思った。

 裁判所の仕事は個人間などの法律的な紛争を解決したり、犯罪を犯した疑いがある人が有罪か無罪かを判断することだ。言い換えれば裁判所の仕事は国民の権利を守るとともに、国民の生活の平穏と安全を守ることである。

 そこで忘れてはならないのは、裁判所の根底には税金の存在があることだ。税金が縁の下の力持ちとなり国民の権利を守っている。

 そう考えたときに、気づいたことがある。税金が守っているのは目に見えるものだけではなく、目に見えないものも守っているということだ。日々の生活を送る中で、印象に残りやすいのは道路や橋、信号機や公的な建物など目に見えるものであるように思う。しかし、裁判所をはじめとし、生活保護の費用など目には見えない「権利」を守るのも税金であるのだと強く感じた。
今の世の中では目に見える結果が重要視されがちであると思う。だから税金の目に見える使い道ばかりに焦点が当たってしまう。しかし、それでは税金の本質にはたどりつけないし、税金のありがたさに気づけない。
「権利」を守るということは目には見えないし、だからこそ結果も感じにくい。だが、本当に大切なものは目に見えないものだと私は思う。
当たり前に生活を送ることができている。それは税金によって見えない「権利」を守られているからだ。今までの私は目に見えるところばかりで、税金はこういうものだ、と決めつけていた。しかし、税金はもっと自分の近くで、もっと大切な何かを守ってくれていたのだと気づいた。
税金に限らず、目に見えるものだけで全てを決めつけていることは多い。目に見えない部分にも想いを馳せられるようになったら、税金や他のことにも、感謝できるはずだ。

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【題名】税金の意味

【都道府県】愛媛県

【学校名・学年】愛媛県立松山東高等学校 二年

【氏名】仲岡 美音

 私は「私たちの生活は税金を払ってばかりだな。」とつくづく思う。しかし、税の作文を書くにあたって色々と税金について調べると税金は私たちの人生の中で色々なことに役立っていて、無くてはならないことを改めて感じた。

 私は小さい頃体が弱くてよく小児科に行っていた。風邪が一つ治ったと思えば次の風邪にかかってという調子だった。そのおかげで看護師さんに「あら、またみーちゃん来たの。次はどうしたん。」と言われるくらいだったそうだ。しかし、こんなに何度も風邪にかかって病院に行くと当然医療費がかさむ。しかし幸いなことに私が住んでいた松山市ではゼロ才から中学三年生までの医療費が完全に無料化されていた。この制度のおかげで私の母も私をためらうことなく病院につれていってくれた。この医療費というのは私たちが消費税や所得税など日々納めている税金から支払われている。私は色々な人が払ってくれていた税金のおかげで今健康体でいることができるんだなとしみじみ思う。日本各地でこのような制度は行われている。しかし、世界の税制度に目を向けてみるとどうだろうか。

 世界には税金がない国が存在する。それは南太平洋に浮かぶ小さな島国ナウル共和国だ。人口一万人程度の小さな国だ。この国はかつてリン鉱石の採掘によって栄えたため、税金が存在しない。二十世紀末頃までは医療、教育は無料で結婚した際には新居がプレゼントされ、全年齢対象に年金配布など楽園のような国だった。しかし二十一世紀に入った頃からリン鉱石の枯渇がすすみ、経済が崩壊した。そして現在では国民の失業率九十パーセントそもそも働いたことがないという人がほとんどの国になってしまっている。かつて夢のような楽園であったナウル共和国がこのような惨状になってしまったのはなぜだろうか。私はこの要因は税金なしにも関わらず手厚すぎる社会福祉を行ったことにあったと思う。社会福祉が手厚い政府は国民から高評価を得られるがそれに財源が伴っていない場合破滅に向かってしまう。

 私は税金がなければ良いのになと思ったこともあるが、税金がないと社会福祉が受けられず、生活が苦しくなることがよくわかった。また、現在の生活だけをみた税金の使い方をしていると未来の日本が苦しくなることもナウル共和国の例からわかった。これからは現在の生活と税金のバランスを保った財源の使い方をし、未来の日本人の生活のことも考えた税金の使い方をしていくべきだと思う。

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【題名】税いただきます、税ごちそうさま。

【都道府県】佐賀県

【学校名・学年】佐賀県立神埼高等学校 二年

【氏名】實松 小夏

 ご飯を食べる時、「いただきます」と「ごちそうさま」は必ず言いなさい。幼い頃からそう言われて育った。たくさんの人のおかげでできた美味しいもので、幸せになれるという贈り物に感謝しなくちゃいけないって。これって税にも言える話じゃないか。

 以前の私は、税って難しいし、私には関係ないと思っていた。消費税なんて服買う時に、税込みの価格かと思ったら税抜きでいつも萎える。所得税や住民税は難しそうだから、将来、納める時が来たら理解すればいい。増税だったり、税の使い道だったりで、政治家が口論を繰り返しているニュースは正直悪いイメージしかなかった。この時の私は、税がどんなに私たちの暮らしを支えているか、どんなに私が贅沢なことを言っていたのか知らなかった。

 ある日税について知っていることを質問され何も答えられなかった。だから税について無知すぎる私は税金が何に使われているのか調べた。綺麗な校舎で整った学習環境の中、勉強できるのは税金のおかげ。整備された道路で安全に通学できるのも税金のおかげ。救急車のサイレンが鳴って、多くの命が救われているのも税金のおかげ。税ってすごい。税って大事。税のおかげで私は今、健康に何不自由なく暮らせていられるのだと痛感した。そして私の中で数々の思い出が蘇った。「皆のものだから大切に使おう。」公園の遊具で、はしゃぐ私にかけた母の声。小学校時代、教科書を配られる時に先生が必ず言っていた、「勉強できることに感謝してね。」という言葉。祖母が急に倒れた時、救急車が駆けつけてくれて祖母の命を救ってくれたこと。小さかったあの頃は気づかなかったけど、今なら分かる。この記憶はすべて沢山の人が汗を流して働いたお金で私に届けてくれた贈りものだったということに。

 税もご飯と一緒じゃないか。沢山の人の税金のおかげで支えられている幸せな生活。私は以前、何も考えずに暮らしていたけど今は現在の生活にとてもありがたみを感じている。また増税や、税の使い道を軽く考えてはならない。これからこの社会で生きていく一員として、将来税を納める一員になる身として、私たちにもできることを見つけて実行していくべきだ。未来の世の中が明るくなるように、子供たちが笑って暮らせるように。大人になったら今の環境が変わり、生活が苦しくなるかもしれない。納税が嫌になる時がくるかもしれない。しかしそんな時、「義務だから」ではなくて、今までもらった沢山の贈り物を届ける側になるために納税をしたい。

 税のおかげで過ごせる幸せな日常に、税のおかげで繋がる明るい未来に感謝しよう。ご飯を食べる時のように言葉にして感謝しよう。

 税いただきます、税ごちそうさま

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【題名】世界と日本を比べて

【都道府県】熊本県

【学校名・学年】熊本県立鹿本商工高等学校 三年

【氏名】平川 詩織

 とあるテレビ番組で、セネガルの首都にある広大なゴミ置き場の映像を見た。およそ五十年以上前から毎日、トラック何百台分ものゴミが捨てられ続けられるその場所。小高い山が見えるが、近づいてみるとゴミが積もり積もって出来上がった、文字通りゴミの山なのだ。人口三百万人ほどの都市ダカール唯一のゴミ埋め立て地は、日々流れ込む大量のゴミによって、犯罪や健康被害の元凶となっていた。

 さらにセネガルでは、下水処理のための整備もされていない。各家庭の汚水タンクから二か月に一度、地面に穴を掘って水を放出するのだという。その水は土に吸収されて、その土で幼い子供たちが土遊びをしている。そんな光景が日常となっているなんて、私にとってはにわかに信じ難い事実だった。

 日本に住んでいて、道端や住宅のそばがゴミで溢れかえっていたり、ましてやゴミで山ができていたりするような光景を見たことはないし、きっとこれから先もないと思う。では、なぜそう言い切れるのか。それは、日本のゴミ処理が徹底しているからだ。とある調査の結果によると、世界のゴミ焼却場の数を比較すると、日本はアメリカの十倍以上ものゴミ焼却場があるということだった。先進国の中でも飛び抜けて数が多く、調べてみて私も驚いた。でも驚くと同時に、どうしてここまで沢山のゴミ焼却場をつくることができるのか、疑問にも思った。ではこのゴミ処理のために必要な資金は何によって賄われているのか。これが税金である。日本ではゴミ処理に年間に二兆円以上の税金が使われている。その税金のおかげで、家庭や会社から出るゴミの回収や処理が行われているのだ。つまり、税金が無かったら私たちの住む町もゴミで溢れ返り、健康被害の絶えないところになっていたかもしれない。そう考えると私たちが日常的に納めている税金は、無くてはならない存在なのだ。他にも、水道の蛇口をひねるだけできれいで安全な水が出てくるのも、税金でつくられる浄水場などの水道設備が整えられているおかげだ。また、近年増えている洪水や豪雨の際に下水管に雨水が流れ込む場合も、費用は税金で負担されている。もし、公費でなければ自分たちの住む町が浸水していた可能性も十分にある。

 少し視野を広げて世界各国の日常を見るだけで、自分の生活がいかに恵まれていて、そして税金というものに支えられているのか良く分かる。これから社会人になっていく私たちは今より税金を納める機会が増えていくだろう。私はその度にきっと、思い返すはずだ。
「もしも税金が無かったら」

 と。

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【題名】豊かさを支える税金

【都道府県】沖縄県

【学校名・学年】沖縄県立宮古高等学校 二年

【氏名】下地 希星

 超高齢社会を迎える二〇二五年、日本人口の五人に一人が七五歳以上の後期高齢者になると言われている。それに伴い、医療や年金などに用いられる社会保障関係費も大きく増加していくことになるだろう。その上、高齢者を支える現役世代は減少し、今後さらに税金を納める私たちの負担が重くなっていくことが予想できる。そんな中、財源を確保し、豊かな日本を築いていくためにはどうしたら良いのだろうか。

 現在の日本は、国際水準で見ると「中負担・中福祉」だというのが大方の見方である。しかし、負担に関しては、税収を上回る多額の国債発行に見られるように「低負担・中福祉」だというのがより正しい理解であろう。

 ここで、「借金大国」とも言われる程危機的状況にある日本の状況を好転させるためには、増税し、財源を確保していく必要があると考える。だが、そこで問題なのは、むやみに高くすると国民の生活を圧迫することになり、人々の同意を得ることが難しくなるという点だ。事実、増税に反対する人が全体の半数を上回っている。確かに、日本政府は税金の使い道が曖昧だと感じることがある。何に使われているか不確かな状況で増税されるのは納得できない気持ちも分かる。ここで知ってほしいのが税率二〇%以上でありながら、国民の幸福度ランキング上位に常在しているデンマークという国である。なぜこんなに高い税金を払っていながら高い幸福度を維持できているのか。それは、デンマークが福祉国家と言われるほど医療や福祉に力を入れているからである。例えば、学費や医療費の無償化、出産・育児休暇などの各種手当が充実している点だ。デンマークの人々にとって税金は「取られるもの」ではない。豊かな国を創るための「資源」なのである。だからこそ、税金の使い道を明らかにし、国民に寄り添う政治を第一に考えている。デンマークに倣い日本でも同様に、国民の安心と増税に対する支持を得ることが財政赤字脱出への鍵となるだろう。また、国民も政府に頼るだけでなく自分たちの暮らしを政府と共に創っていくという意思を持って政治に関心を示すことが大切である。

 税金を納めることは国民の「義務」である。増税の度に憂鬱な気持ちになる人も少なくないと思うが、義務の裏には「豊かさ」があることを忘れないでほしい。今、私はデンマーク程の高負担とまではいかなくても、徐々に増税していく必要があると考える。その結果、福祉が今以上に充実し少子化の改善へ一歩踏み出すことが出来れば、財源の確保が安定し、日本財政の回復につながるのではないか。これからの政府の在り方を決めるのは、これからを担う私たちだ。増税には賛否両論あるが、現状を維持していても将来は良くならない。この先、私が納税者となったとき、日本の未来と豊かさの実現に向けて、国民の一人として貢献していきたいと強く思う。

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