税の学習コーナー

税の学習コーナー 税の作文(中学生・高校生) 平成30年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表

平成30年度「税に関する高校生の作文」国税庁長官賞受賞者発表

国税庁長官賞

【題名】税について

【都道府県】北海道

【学校名・学年】北海道札幌国際情報高等学校 三年

【氏名】片原 世捺

 私が税について考えたことは、税があってこそ私たちの暮らしが成り立っているということである。このような考えにいたった理由は、財政の学習を通して、国の歳入と歳出について学んだからだ。
 私は国の一般会計の内訳を見て、一人の生活に置き換えるとどうなるのか疑問に思い、実際に考えてみることにした。一ヶ月の収入を十万円。内訳を自分で稼いだお金が六万円、借金が四万円。支出を生活費が七万円、借金を返済する分が三万円とする。結果、四万円の借金をして返済は三万円しかしていないため、月に一万円ずつ借金が増えていくことになるとわかった。これでは生活は良くならないばかりか、悪くなる一方だ。ここでいう自分で稼ぐお金が、国で考えると税である。私たちが働いて給料を得なければ生活ができないのと同じように、税がなければ社会保障や公共サービスを受けることが不可能になる。しかし、国の財政は赤字が続いている。借金に頼っていては財政が良くならないのは当たり前のことである。
 では、この状況を解決するためには何をしたら良いのかを考えた。一個人の生活ならば、給料を増やして借金をしないようにする。生活費を減らして借金の返済額を増やす。という二つの方法を考えることができる。一つ目の方法は、どのようにしてお金を稼ぐかを考えなければならない。税収を増やすために一番簡単なことは、税率を高くすることだと私は思う。しかし、むやみに高くすると国民の生活を圧迫することになり、人々の同意を得ることは難しい。一人ひとりの負担は増やさずに税収を多くするならば、税を納める人数を増やす必要がある。日本は少子化が進み、働く世代が減ってきているため、国が積極的な対策を取るべきだ。子供を育てやすい環境や働きやすい環境を整備するために、税金を使うことが大切だと私は思う。現状を維持していても将来は良くならない。二つ目の方法は、生活の見直しが必要となる。これは税金の使い方である。税金の多くは社会保障に使われており、急激な高齢化の進展を背景として、その額は増加している。社会保障の額を抑えることによって赤字をなくせると私は思う。医療や介護に関しては、未然に防ぐ対策が重要になってくるだろう。健康寿命をのばす取り組みが必要である。
 税は国民の暮らしになくてはならないものである。しかし、現在の財政は赤字が続いているため、対策を取る必要がある。将来のために税を利用していくべきだと私は考える。これからの世代が暮らしやすい世の中にするために、自らが問題意識を持ち、社会に関わっていく必要があると改めて感じた。

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【題名】災害と税金

【都道府県】福島県

【学校名・学年】福島県立只見高等学校 一年

【氏名】目黒 楓華

 あの日のことは今でも鮮明に覚えている。二〇十一年七月二十九日、豪雨は、私達の町を襲った。父は消防団の活動、母は仕事で、当時小学三年生だった私は、家で姉と二人きりだった。私の家は後ろが川だったため水の多さはすぐに分かった。とりあえず荷物を二階にあげようと思い、次から次へと二階へ運んだ。みるみる後ろの川の水位は上がってきて、とうとう家まで一メートル程になってしまった。その恐怖は今でも忘れられない。その数十分後に避難勧告が出され、私達は避難することができたが、家は一部損壊、農作物は雨に覆われ、橋は決壊するなど大きな災害に見舞われてしまった。あの時は幼く、復旧については、いつの間にか修復していたという印象しかなかった。
 しかし、中学に上がり総合的な学習の時間で豪雨災害について調べる機会があり、私達の町を襲った豪雨災害に向き合うことになった。
 「橋はどのように修復されたのか?」私は疑問に思った。そこで豪雨の復旧について詳しく調べてみることにした。
 調べていくうちに、激甚災害というキーワードが目に入ってきた。それは大きな災害に適応されるもので、助成金や支援金を受け取れるシステムである。新潟・福島豪雨災害はそのシステムに認定された。私が、いつの間にか修復していたと思っていた農作物の状況や橋の決壊は国の助成金や支援金により回復することが出来たということを初めて知った。もちろんそこには、地方の財政も欠かせない。私の家の一部損壊は地方、町の補助金が出て修理することができた。このように、国や地方の補助金により、私達は便利な生活を送れるようになった。国や地方の財政は、税金を主に動いている。
 この災害を受け、税金を納めてくださる皆様に感謝しなければならないと強く思った。また、救助や復興のために積極的に行動してくれた、消防団や自衛隊の方々の車なども税金で賄われていることを知った。この人達の活動がなければ、これほど迅速に復興が進むことも出来なかったので、改めて税金は尊いものだと思った。
 今まで私は自分の身近な税金ばかりを見てしまい、否定的な考え方しか持つことが出来なかった。しかし、自分の経験などから、税金の在り方や必要性を学び、税金のありがたさを実感することが出来た。将来は自立し、税金を納め社会に貢献したいと思った。

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【題名】幸せの音

【都道府県】新潟県

【学校名・学年】新潟県立新潟高等学校 一年

【氏名】高橋 奈那

 「西日本豪雨災害の義援金を寄託します。」
 母がこう書かれた募金箱に小銭を数枚入れた。小銭と小銭がぶつかり合う音。誰かの思いやりと思いやりが積み重なっていく音。幸せの音だ。私はそう思った。
 その時、私はとあるニュースを思い出した。それは西日本豪雨の復興支援のために政府が予備費から1,058億円を支出することが決定したというニュースだった。そして、もしかしたら私が払った消費税がその中に含まれているのではないかという考えが浮かんで、なんだかうれしくなった。私でも誰かを救うことができるんだ、そう思えた瞬間だった。
 しかし、それと同時に、どのくらいの人が納税に対して幸せを感じているのだろうという疑問が湧いてきた。よく耳にする増税反対の声。税の使い道に対して向けられる厳しい世間の目。ニュースなどを通して伝わってくる情報では納税に幸せを感じている人は少ないような印象を受ける。そのせいもあってか私にも税の使い道に対していいイメージより悪いイメージばかりが焼き付いていた。私たちが納めた税金が国民の「健康で文化的な生活」を実現させるために、公共事業関係費や社会関係費などとして使われていることを学んだはずなのに。募金と震災被害者を救うという目的は同じなのに、それでも税金を喜んで払えないのはなぜなのだろう。そこに潜む納税と募金との最も大きな差は何なのか。私は考えを巡らせた。そして、今の私にとっての納税は使い道がよくわからない募金箱に募金をするようなものであることに気がついた。そんな募金箱にお金を喜んで入れる人なんていない。私は何の募金なのかを知ろうともせず、お金を払い続けなければいけないことを嘆いていた。税の外側を見ただけで全て知った気になっていたのだ。そのせいで、簡単に情報の波に飲み込まれ、踊らされていた。
 今日私が払った消費税はいくらだろう。両親が今月納めた所得税はどのくらいだろう。私たちは自分たちが払った税金ばかりに目が行ってしまいがちだ。その上、十分な支援が受けられていないと感じる。でも私はそれは違うと思う。税金の恩恵に気づいていないだけ。当たり前になっているだけ。でも、新しい視点で私たちの周りを見渡せば、そこには税金の産物で埋め尽くされていることに気づくはずだ。きれいに整備された道路、ケガや病気になったときに駆け込むことのできる病院、緊急時にすぐに駆けつけてくれる救急車や消防車。これらは全て国民が納めた税金がくれた大切な宝物だ。
 納税は募金と同じだと言ったら語弊があるかもしれない。しかし、募金と同じように思いやりを持って私は納税をするべきだと思う。私たちが納めた税金は私たちのすぐ近くで別の形となって困った誰かを確実に支えている。だから、税金は取られるものという意識を改め、気持ちよく納税できるようになりたい。日本中に幸せの音が鳴り響きますように。

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【題名】納税の意味

【都道府県】東京都

【学校名・学年】東京都立国際高等学校 一年

【氏名】井上 万結

 思わずため息をついた。イギリスのヒースロー空港の免税店で、ついさっきお金を奮発して買ったばかりのお土産と同じものを見つけたのだ。税金を払わなくても買えたと思うと悔しい。しかし、たった八%の違いだ、と思って値札をめくり、私はまたまたショックを受けた。数時間前まで私が滞在していたイギリスでは、税金が二十%なのだ。理不尽にも、損をした私は高い税率に不満を持ち、ふと気になった税に対する国民の本音をイギリス人の友人に聞いてみた。
 すると、思いがけない高評価の声と、イギリスの税金の制度に二度驚かされた。
 まず、全ての商品に高い税金が課されているわけではない。食品、子供服、医薬品などは免税の対象だ。しかしその反面、タバコなどの嗜好品や高級ブランドの商品は税率が二十%となっている。
 すべての人に不可欠な生活必需品は手に入れやすく、それでいて、きちんと恩恵を受けられる工夫がある。国民が気持ち良く納税できるのは、なぜそこにそれだけの税金を納めるのか、という納税の意味を意識し、その恩恵を生活の中で感じられるからだ。
 これは、吹奏楽部で大会の予選に向けた練習をしていた時のことだ。納得のいく演奏ができずに困っていると、先生がこうおっしゃった。「自分の楽器がその場面で音を出す意味を考えなさい。」それまでの私たちは、楽譜に書いてある音をただただ鳴らして満足していた。しかし、その音を出す意味を考えることで自然と一つ一つの音に丁寧に向き合い、音を届けるという本来の目的を思い出すことができたのだ。
 税を納めるという行為にも、二つのやり方があると私は思う。義務だから、という理由で条件反射のように税を納めることは簡単だ。けれども、使われ方を理解し、目的を意識した意味のある納税をして、初めて人の心に税という名の音が届く。また、一人一人が納める税金が微量であるように、一つの楽器から出る音も決して大きくはない。しかし、全員が自分の音に責任を持ち、心を込めて吹けばそれは大きな力となって客席に届くだろう。政府という名の観客は、心に響いた感動を、拍手に変えて演奏者へ送る。舗装された道路。ゴミのない街。すべて、税金の恩恵だ。それらは拍手となってこちらに届き、意味を考えることから始まった納税という名の演奏が、人々の生活を豊かにする。これが、税を納めるという行為のあるべき姿なのだと私は思う。
 それでは、今の社会でどれだけの人が納税の意味を考えているだろうか。意味を考えることで、イギリスの国民は気持ち良く税を納め、私たち吹奏楽部は大会への切符を手に入れた。そして日本も、消費税増税や滞納者の問題がある今だからこそ、税を納める意味を一人一人が考えるべきだ。平成最後の夏、奏でた音が拍手となって人々を支え続けられるよう、税の学びを深めていきたい。

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【題名】ありのままの自分で生きる権利

【都道府県】石川県

【学校名・学年】金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校 一年

【氏名】林 ゆりあ

 去年、私の父は自宅で倒れた。母と弟は外出しており、側にいたのは私だけ。私は救急車を呼んだ。病院に搬送された父は一命を取り留めたものの、「少しでも遅れていたら父の命は無かった。」という医師の言葉に私は背筋が凍った。
 日本では救急車を呼ぶのに料金はかからない。しかし、他国例えばアメリカでは救急車を手配すると日本円で三万〜五万円、高いときで十万円自己負担となる。アメリカなど人口の多い国では財政難に陥る危険性があり、国家が医療費を負担するのは難しいからだろう。その分国民は怪我や病気の治療に関して自己責任の姿勢だ。対して日本は国から地方自治体へ送られた税金で治療費の一部が賄れる場合もあり、医療サービスや社会福祉制度が充実しているので補助金を受け取るのは当たり前だと思っているところがある。しかし、私達も他国の人達と同様に自分自身のリスクに対して責任を持つべきだ。ただ一度に多大な責任を負うのは難しいので、我々日本人は納税で自分達の未来に投資をし、大事に備えているのだろう。また、救急車をタクシー代わりに使う人や、軽傷なのに呼ぼうとする人達がいるため救急車の出動時間が2秒ほど長くなってしまったのも事実だ。搬送が数秒遅れれば死という事態に直面したからこそ、私は重症患者の命は時間との勝負だと考えている。数名の軽率な行動で、多くの人の命が失われるのは悔しい。ひとりひとりが税金にかかる命の重みを理解することが大切だ。
 生きる上での責任を税に仮託して、必要なときにサービスや社会制度として享受する、これが納税の意味だと思う。また、「納税の義務」は国民の三大義務とされているが「ありのままの自分で生きる権利」だと思う。私達の税が国や県、市の公共事業などに形を変えてまた自分達に返ってくる。それが暮らしやすさに繁るのだと思う。しかし、最近では自分達の年金が貰えないのならば、税金は払わないという若者が増えている。その結果社会制度の質が下がると懸念される。私が今まで受けてきた義務教育や、病院での手当はもちろん、舗装と整備がなされた道路を安心して利用できるのは、私の両親の代、祖父母の代……と、たくさんの人が納めた税金が大切に使用されてきたからだ。納税のリレーを途切れさせないよう、自分の世代だけでなく、次の世代も自分達以上の豊かな生活ができるよう税金について考えていきたい。
 消費税が8%になった当初、私は単純に物の値段が上がってしまうのは困ると思っていたが、今回税金に向き合ったことで、高校生の私も納税に参加できる喜びを感じている。高校に入学し、無料で配布されなくなった教科書を通じ、将来、一人の納税者として「自分達、そして日本の明るい未来」を作れるよう、一層勉強に励みたいと強く思う。

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【題名】プリン売りの納税者

【都道府県】静岡県

【学校名・学年】静岡県立静岡東高等学校 一年

【氏名】立石 桃子

 納税者になるということ。それはどういうことなのか。
 この夏、久しぶりに静岡医療福祉センターを訪問した。そこは、幼いころ弟の脳症のリハビリに何度も付き添った場所である。ここではいろんな障がいを持つ人々が訓練をしたり、入院生活を送っている。彼らの多くは健常者と同じように働くことができない為、様々な税金の控除を受け、生活できるよう保障されている。弟が入院していた当時私はここで、あるプリン売りに出会った。電動車いすに乗り、自分で作ったプリンを売りにくる障がい者の方である。雨の日でもカッパを着て数百円のプリンを売りにくる姿は、子供心に痛々しく思ったことを記憶している。母は彼らを見つける度、いつもありったけのプリンを買った。「生かしてもらった社会に、少しでも貢献したい。」という彼らの言葉を聞き、感銘したのだと母は言う。税金という社会の手を差し伸べられて生きてきた彼らは、税金のありがたみを深く感じていたのだろう。彼らにとって、自分の手で稼ぎ税を納めることができたということは、自分は社会に参加したという自覚、社会の一員であるという大きな自信につながっていたのだと思う。そしてそれは、彼らが社会の扉をたたく、自立への確かな一歩となったに違いない。
 私たちの納税に対する姿勢はどうであろうか。消費税が上がる話をきいて、「たくさん取られる」と思った自分が今は恥ずかしい。「取られる」という思いは、税金が社会でいかに使われ役立っているかを意識していないからだ。今回作文を書くにあたり、税金がどこでどのように使われているのかを調べた。自分のあまりの無知を情けなく思うと同時に、自分の身近な生活にこれほど多くの税金の恩恵を受けていることを知り、税金に対する見方が変わったように思う。国民全員に平等に、そして必要とされる場所や人に、有益に使われるのが税金。私たちはもっと、税金でこの社会をどのように変えていきたいか、自分の考えを持つべきだと思う。あのプリン売りの障がい者の方が、販売を終えて去る時、わずかに動く指でさす看板があった。「ノーマライゼーションの社会へ。」納税者としての自負がある彼らには、目指すべき社会の展望がしっかりあったのだろう。納税というのはお金を納めれば終わりではない。そこには、私たち一人一人が社会を支えて参加していくという自覚をもつこと、自分たちが生きていく社会は、自分たちで創造しなければならないという責任が、存在するのだと思う。
 選挙権が十八歳に引き下げられ、成人年齢の引き下げも決まった。私たちが社会に参加する日は遠くない。私が納税者になった時、そのお金に希望をもって、納税することに誇りをもちたい。そして、この社会の未来を創造していきたい。

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【題名】お金で買えない価値を守りたい

【都道府県】兵庫県

【学校名・学年】兵庫県立大学附属高校 一年

【氏名】西村 公介

 バスで通学する。無謀な運転をする車も無い。数分の誤差でバスは着く。学校では、銃が乱射される心配もなければ、ミサイルにおびえることも無い。コンビニでおにぎりを買う時に賞味期限を心配することも無いし、お釣りも正確。小学生だけで電車で出かけるのも見慣れた光景だ。高校生になって、外国人と話したり、メッセージを交換したりすることが増えた。ここで紹介したことは全て彼らが驚いていたことだ。彼らは「日本には、お金では買えないような社会がある」という。
  ある国では、学校で銃乱射に備えた訓練があり、誘拐を恐れて子供だけで外出しないと言う。別の国では、交通マナーのひどさから交通事故が多く、バスが時間通りに着くことは無いという。ネットでは、学校や結婚式場にミサイルが撃ち込まれた映像を見た。当たり前すぎて気付かなかったが、私達は、素晴らしい社会を持っているのだ。その社会があるから、安全な日常を送れるし、企業は安心して事業を行うことが出来る。ミサイルが飛んでくる国では、高価な機械を使う事業など考えもしないだろう。だが、日本の社会は莫大な予算を使って警察官を増やしたわけでも、軍隊を雇ったわけでもない。家族、地域の大人、友人達、読んできた本などの日本が育んできた文化が、この社会を実現したのだ。
  今日、私達の社会は変化しつつある。外国人が増えてきたからではない。「ずる賢い」ことがもてはやされる場面が増えたからだ。国に支払う金額を少なく済ませて、より多くのお金を貰える、という情報が毎日のように目に飛び込んでくる。中でもパナマ文書についてのニュースは衝撃だった。税金を支払いたくないから海外に利益を移すなんて。「富裕層は賢い方法をとっている」と言っている人がいたが、日本の社会に無料乗りしているだけではないか。その社会を利用して金を稼いだ人が、税金という利用料を逃れるために取った方法は賞賛されるものではない。「賢い」ことと「ずる賢い」ことは違うのだ。
  確かに、マナーを守っても金銭的に得をすることは無いし、ルールの抜け道を敢えて取らない生き方は、間抜けな生き方かもしれない。だが、現在の恵まれた日本の社会は、そんな無骨な生き方をする日本人が作り上げて来たのだと思う。今まで、国は目立たないところで手助けをしてきた。道路や学校、福祉施設などは多くの資金が必要だったはずだ。日本の社会は国と国民が共同で作り上げた奇跡なのだ。その中で育った私達は、楽をして人より得をする方法を考える「ずる賢さ」ではなく、いかにこの社会の良さを守り、発展させていくかという「賢さ」を持つべきだ。「お金で買えない」この社会は、たやすく壊れるものだと思う。だから、守っていくために使える資金が税金なのだ。税金を逃れた人達は、私達の社会を裏切って手に入れたお金で代わりに何を買おうというのだろう。

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【題名】税が私達に及ぼす影響と在るべき形

【都道府県】岡山県

【学校名・学年】岡山県立玉島高等学校 二年

【氏名】多賀 大将

 税金の種類と言えば、所得税、法人税、消費税など約五十種類のさまざまなものがあるが、それらの税がどこでどのように使われているか知っているだろうか。近年、消費税が八パーセントに引き上げられ、十パーセントになろうとしている。このことについて不満を持っている人も多いのではないだろうか。
 先日、私の通う高校で租税教室というものが開かれた。そこで私達は、高福祉高負担の社会にするか、また、低福祉低負担の社会にするかという問いを与えられた。少子高齢化が進んでいる現在の日本においてこの決断は避けられないものである。そして今、高校生という立場にある私達は、自身で決断していかなければならない。
 私のこの問いに対しての答えは、高福祉高負担の社会を創り上げていくことである。ハンガリー、デンマーク、スウェ-デンなどのヨーロッパの国々で消費税が高いことは有名だが一部を除いてそのほとんどの国では国民の幸福度は高い。なぜなら、学費や医療費等が全て免除され、国民は恩恵を感じているからである。日本で近年上げられた消費税は福祉関係に使われていると聞く。しかし、今の税率のままでは今のようなサービスを展開し続けることは不可能だ。低福祉低負担の社会は、今の私達にとっては都合のよいものかもしれない。しかし、私達が高齢になった時どうだろうか。私は、経済的にとても厳しい生活が待っていると思う。また、あと何年か経つと年金をもらう立場になるという人達の立場に立って考えてみるとどうだろうか。その人達は今まで高い消費税や所得税を払ってきたが、自分達はあまりその恩恵を受けないということにならないだろうか。そのようなことになれば、人々の不満はより多いものになるだろう。私もその立場に置かれたら、仕方がないことだと分かっていても憤りを感じると思う。つまり、低福祉低負担の社会は実現することが困難だと思う。
 消費税を引き上げることに多くの不満が生まれる理由として、税についての意識が低いことや徴収された税がどのように使われているのかあまり知られていないことが挙げられると私は思う。税金は、病院、学校、道路、救急車など本当にさまざまなところに利用されている。誰もが使っていた小中学校の教科書にも使われている。低負担だからといって、これらのサービスを少しでも欠かすことはできるだろうか。実際にその生活を想像してみると答えは言うまでもない。いきなりヨーロッパ諸国のような福祉制度にすることは不可能だが、最低限現状は維持しなければならないと私は考える。
 数年後日本を担っていく立場に置かれている者として、この課題はとても重要だ。よく考え、最善の選択をしたい。

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【題名】よりよい社会で生きる為に

【都道府県】高知県

【学校名・学年】高知県立高知農業高等学校 三年

【氏名】門脇 ゆめ

 税金制度とは何か。この国には、私たちが生活していく上で必ず払わなければいけないお金がある。この国の憲法では、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」とある。ただ、私たち子どもは税金について知らなさすぎるのではないか。私も、税金についてよく知らなかったし、知ろうともしなかった。そのうえ、「なんで税金なんて払わなければいけないんだろう」と思っていた。なぜなら、私たちが営んでいる日々の生活を、当たり前のものとして享受してきたからだ。
 ある日、他の国の子どもたちが、学校へ行くために毎日危険な道を何時間も歩いていることをテレビで知った。子どもたちは、それでも勉強したいから通っていると笑顔で話していた。私は強い衝撃を受けた。私たちが当たり前のように通っている、綺麗な舗装された道。それがどんなに恵まれていることなのか。私はこの道がどうやって作られているのか疑問に思い、調べてみた。そして、それは私たちが払っている税金によって作られていたものだと分かった。それが、税金制度について興味を持ったきっかけだった。
 税金の使い道は多岐に渡る。身近なものとして、ゴミ処理費用や教育費、医療費の一部負担などがある。もし、税金制度がなかったら?ゴミを収集できなくなり、町がゴミだらけになる。勉強したくても、教科書や勉強机などを自己負担しなければいけない。病気になっても、医療費を全額支払わなければならない。そんな社会で、私たちは安全で快適に過ごしていけるだろうか?そう考えたとき、税金制度というものがどれだけの恩恵を私たちに与えてくれているかを強く実感した。
 4年前、消費税が5%から8%に引き上げられた。そして、政府への批判が集中する中で今度は10%への引き上げが決まった。この背景には、やはり少子高齢化が関係していると思う。高齢化が進むと、税金が使われている医療や介護に必要な費用が増えていく。しかし、今のままの税金制度では、私たちの生活を支えることが難しくなってきているのだ。この問題は、私たち高校生には関係ないと思っては絶対にいけない。3年前、選挙権の年齢が「満20歳以上」から「満18歳以上」に引き下げられた。私たちが政治に興味を持ち、税金の使い道をしっかり示してくれる人に政治を任せるため、税金制度について理解しておくことは必要不可欠なのである。
 税金とは、私たちの生活と健康を守ってくれるすばらしい制度だ。それを当たり前とは思わず、国民一人一人が幸せで快適な生活を送っていくためにも、それぞれが自分の責任をきちんと理解し、様々な形で政治に参加していくことが、この国をよりよくする一番の近道なのだと私は思う。

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【題名】一本の線

【都道府県】佐賀県

【学校名・学年】佐賀県立佐賀西高等学校 一年

【氏名】樋口 愛弥

 地図上に増えた一本の細い線、それに気付く人はほんの一握りの人たちである。その他の人たちはほとんど気づかないし、気に留めることもない。この線とは、その付近に住んで生活している人だけが分かる、一本の道路である。この道路はどうやって出来たのだろうか。国や地方公共団体が税金を資金源として建設会社に依頼して施工し、完成したものである。
 私の住んでいる場所の近くにも、五年程前に新しい道が完成した。このおかげで隣接する市町村に行く際に大変便利になった。ある日、友人と久しぶりに再会した時に、何気なくその道が出来て便利になったことを話したことがあった。すると、その友人はただ便利になっただけでなく、生活が一変し、お父さんとの関係が改善したと話し出した。詳しく話を聞くと、友人はお父さんと二人暮らしで、友人のお父さんは毎日、片道約二時間かけて職場に通勤しており、帰宅も遅いので殆ど会話もなく疎遠な関係になっていたとのことである。しかし、一本の道路が出来たことで通勤時間も大幅に短縮され、朝夕で一緒に食事をする機会も増え、笑顔が増えたと喜んでいた。
 ただ税金を納めて、その税金で道路や公共施設などが出来て便利になったと使途だけを考えるのではなく、私の友人の例のように、一本の道の完成が一人の人生を豊かなものにしたことに心を巡らせると、税金の価値のある意義を見出せたように感じる。税金は取られるものでもなく、社会における必要悪という捉え方でもない。税金を納めることで、人々の優しさや感謝の心が社会を循環し、温かい社会の礎になるものだと考える。
 七年前の東日本大震災、昨年の九州北部豪雨、そして最近の西日本豪雨など被災した人たちの復興にも税金による復興援助は不可欠である。遠方に住んでボランティアに行くことができない人たちでも間接的に援助ができる点も税金の素晴らしさだと考えられる。
 私は高校に入学したばかりで、税金についてこれまであまり深く考えたことも学ぼうと思ったこともない。将来は、医療関係の職種に就きたいと考えているが、医療費控除などの話は聞いたことはあっても、その仕組みや内容について詳しくは分からない。どのような職種に就こうが、税金について学ぶことは税金をもっと有意義なものにするためには必要である。つまり、税金を身近なものとして意識し、その役割や意義について学ぶことは社会人として必要なことである。
 最後に、私にとっての税金。それは社会に対する人々の優しさの貯金である。税金を通して社会に優しさが溢れることを願って税金を納めていくことにする。

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【題名】税から生まれる助け合い

【都道府県】鹿児島県

【学校名・学年】学校法人希望が丘学園鳳凰高等学校 三年

【氏名】田畑 里緒

 私の弟は重度の知的障害を抱えている。彼は言葉の読み書きや、話しをするということができない。また集団の中での生活や、周囲の状況に注意を払うことも苦手としている。そうしたことから一見、彼には出来ないことだらけ、と捉えられてしまうかもしれない。しかし、彼は彼なりにゆっくりと成長していて、私は日常の生活からそれを感じる。
 特に彼の成長を助けてくれているのが税金だ。弟は国から受ける、特別児童扶養手当というものを使い、普段障がい者用の福祉サービス施設に通っている。そこでは将来働くための練習や、集団の中での生活の仕方など、さまざまなことを教えてくれる。国の社会保障というものがあるからこそ、彼は学ぶ機会を得ることができ、日々努力をすることを可能にしている。最近は、「はい。」「いいえ。」などといった意思表示やお辞儀もできるようになった。そうしたことにより、私の家族は普段から税金の恩恵というものを感じながら暮らしている。
 しかし世の中には税金滞納者などといった、税金を納めることに消極的な人も多い。また最近の消費税率引き上げについても皆、マイナスな印象ばかりを持っているだろう。たしかに、これから少子高齢化が進む中で、若い世代の私達が働き、負担する税金は重くなっていく。しかし税金を払うからこそ、私達が得られる利益というものも大きい。例えば、道路、信号の整備、いざという時に助けてくれる警察や消防というものは全て税金により賄われている。他にも税金により私達が受ける恩恵というものは山ほどある。よって私は税金というしくみはある意味、国民同士の助け合いの形であり、また将来の自分への貯蓄でもあると考える。税金と私達の暮らしは切っても切れない糸で結ばれているのだ。
 そしてより多くの人に納税の意義について理解してもらうためにはやはり、こうした仕組みや考え方を世の中に広めていく必要がある。私自身、弟が居なければ、このように税の役割りについて知り考えることは無かっただろう。また、自分が将来さまざまな場面で納税者となった時、今まで自分や弟が受けてきた恩恵を忘れず、さらに今度は自分が誰かを納税により助けているという意識を持って生活していこうと考える。そういった人々が増えていくことにより、日本はより豊かで温かい社会を築くことができるのではないだろうか。

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【題名】命の連鎖〜まだ見ぬ君へと繋ぐ〜

【都道府県】沖縄県

【学校名・学年】学校法人興南学園興南高等学校 一年

【氏名】山口 奏空

「ピィー。」
 微かに響くオペ室の中。今にも消え入りそうな弱々しい産声。張り詰めた空気が一瞬ゆらぎ、そして私はこの世界に誕生した。
 母が時折、私に言って聞かせる。
 「鳥の雛かと見紛うほど小さく儚なかった。私は、あなたの命を繋げて欲しいと、優秀な医療チームや高度な医療に願いを託したの。」私は、一〇二〇グラムの極低出生体重児として三ヶ月間入院し、驚くほど高額な治療を受けていたそうだ。例えば、一週間ごとに投与される薬剤だけでも一回分が数十万円もしたという。だが、高額な治療費は「未熟児養育医療制度」に申請することで国が負担してくれていたと最近になって知った。その公的制度の源は、日本国民の皆さんが納めた税金だったということも。医療技術のみならず、大勢の方々の納税によって私の命は救われたのだと知った瞬間、言葉もないほど感謝した。
 六年前、私と母は沖縄県の西表島に移り住み、それまで香川県で培ってきた私の価値観は一変した。「圧倒的な生命力に溢れる島」それが西表島だった。はっと息を呑むほど美しい海。たくましさすら覚えるマングローブ林。神々しい姿のイリオモテヤマネコ。私は、この島で成長し、環境省や町役場、また研究者の方々から多くを学んだ。類い稀な自然を守るべく、通常のインフラ整備に加えて路面下にアンダーパスを施し、野生生物が輪禍に遭わないように創意工夫を凝らしていることなどだ。しかし、この希少な自然の保護活動の為に投入される費用は、どこから生まれてくるのか。それは、国や地方自治体に納められる税金を元に組まれた、予算の中から歳出されているのだ。すなわち、類いなき西表島の自然環境は、この島に一度として訪れたことがないであろう国民の皆さんが支えていることになる。そう、一度も会ったことのない私の命を繋いでくれたのと同じように。
 先ほど税金の納付書を前に、母が通帳の残高を確認した。明日、税金を納めるつもりだ。こうした一人一人の納税によって潤いを与えている場面に遭遇することが多々ある。公共施設。公共サービス。自ら納めた税金は、巡り巡って自身に注がれていることに気づく。そして時に被災した方、障害や重病を患った方などに、手厚く救済の手が差し延べられる。だからこそ、日本国民として生き、納税する。それは人として、誇り高く尊い行為なのだ。
 私の手にある一冊の母子手帳。ページをめくると、「NICPAP装着」、「クベース収容」、「五日目、八八五グラム」と記載されている。たくさんの税金が私の命に注がれた証。もし、日本に納税制度が無かったならば、私の命の灯は繋げられることなく消えていたかもしれないと真に思う。
 私には、担うべき役目がある。授かった恩恵をお返しする為に人一倍努力し、働き納税する。それこそが、巡り巡ってきっと必ず、唯一無二の命を繋ぐ一歩となるのだから。

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