[令和7年4月1日現在法令等]

対象税目

所得税(譲渡所得)

概要

個人が、事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、その取得の日から1年以内にその買換資産を事業の用に供したときは、一定の要件のもと、譲渡益の一部に対する課税を将来に繰り延べることができます(譲渡益が非課税となるわけではありません。)。

これを、事業用資産の買換えの特例といいます。

この特例の適用を受けた場合、売却した金額(譲渡価額)より買い換えた金額(取得価額)が多いときは、売却した金額に原則として20パーセントの割合(以下、この乗ずる割合を「課税割合」といいます。)を掛けた金額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。

売却した金額より買い換えた金額が少ないときは、売却した金額と買い換えた金額との差額と買い換えた金額に課税割合を掛けた額との合計額を収入金額として譲渡所得の計算を行います。

なお、この特例の適用を受けた場合には、その買い換えた事業用資産(買換資産)の取得費は、買換資産を実際に購入したときの金額ではなく、売却した事業用資産(譲渡資産)の取得価額を引き継ぐことになります。

したがって、将来、買換資産を売却した際の譲渡所得の計算における取得費や、その買換資産を事業に使用した際の事業所得の計算における減価償却費は、譲渡資産から引き継いだ取得費を基に計算することになります。

特例の適用を受けるための要件

この特例の適用を受けるためには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。

(1)譲渡資産と買換資産は、共に事業用のものであること。

なお、事業の範囲については、コード3402「事業用の資産の範囲」で説明しています。

(2)譲渡資産と買換資産とが、次のイからニのいずれかの組合せに当てはまること。

イ 航空機騒音障害区域内にある一定の土地等、建物または構築物が買い取り等をされ、航空機騒音障害区域外にある国内の土地等、建物、構築物または機械および装置(農業または林業に使用するものにあっては市街化区域以外にあるものに限ります。)を取得する組合せ

※ 航空機騒音障害区域とは、次の区域をいいます。
① 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法に規定する航空機騒音障害防止特別地区または公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律に規定する第二種区域(いずれも令和2年4月1日前にその区域となった区域を除きます。)
② 防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に規定する第二種区域

ロ 既成市街地等内にある土地等、建物または構築物を譲渡して、既成市街地等内にある土地等、建物、構築物または機械および装置で、市街地再開発事業(施行区域が5,000平方メートル以上であるものに限ります。)に関する都市計画の実施に伴い、その計画に従って一定の中高層耐火建築物などを取得する組合せ

※ 既成市街地等の範囲は、コード3429「既成市街地等の範囲」で説明しています。

ハ 譲渡の日の属する年の1月1日において所有期間が10年を超える国内にある土地等や建物または構築物を譲渡(注)して、国内にある一定の土地等、建物または構築物を取得する組合せ

また、買換資産である土地等については、次のいずれかに掲げるもので、その面積が300平方メートル以上のものに限られます。

(イ)事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設(福利厚生施設に該当するものを除きます。)(以下「特定施設」といいます。)の敷地の用に供されるもの(その特定施設に係る事業の遂行上必要な駐車場の用に供されるものを含みます。)

(ロ)駐車場の用に供されるもので、建物または構築物の敷地の用に供されていないことについて、都市計画法第29条第1項または第2項の規定による開発行為の許可の手続や、建築基準法第6条第1項に規定する建築確認の手続などが進行中であるというやむを得ない事情があり、その事情があることが申請書の写しなどの一定の書類により明らかにされたもの

(注)この組合せの買換えは、令和8年3月31日までの譲渡について適用されます。

ニ 一定の日本船舶(漁業に使用するものを除きます。)を譲渡し、環境への負荷の低減に資する船舶として国土交通大臣が指定した一定の日本船舶(譲渡した船舶と同一の事業に使用されるものに限ります。)を取得する組合せ

上記イからニの詳細は租税特別措置法第37条第1項の表をご確認ください。

税法(e-Govの「法令データ提供システム」)へのリンク

(3)買換資産が土地等であるときは、その面積が、譲渡した土地等の面積の5倍以内であること。

5倍を超えると、 超える部分は特例の対象となりません。

(4)譲渡資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に買換資産を取得するとともに、次に掲げる場合に応じて、それぞれに掲げる手続きがされていること。

イ 譲渡した年の同年中に取得した資産を買換資産とする場合

 譲渡資産の譲渡の日または買換資産の取得の日のいずれか早い日を含む三月期間の末日の翌日から2か月以内(下記の提出期限まで)に、「特定の事業用資産の買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出すること。

譲渡資産の譲渡の日
(買換資産を先に取得した場合は取得の日)
提出期限



1月1日から3月31日まで 5月末日
4月1日から6月30日まで 8月末日
7月1日から9月30日まで 11月末日
10月1日から12月31日まで 翌年2月末日

ロ 譲渡した年の前年中に取得した資産を買換資産とする場合

 取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署長に提出すること。

ハ 譲渡した翌年中に買換資産を取得する予定の場合

 確定申告書に、取得する予定の買換資産についての取得予定年月日、取得価額の見積額および買換資産が買換えの組合せのいずれに該当するかの別、その他の明細を記載した「買換(代替)資産の明細書」を添付して提出すること。

(5)買換資産を取得した日から1年以内に事業の用に供すること。なお、取得してから1年以内に事業の用に供しなくなった場合は、原則として特例の適用は受けられません。

(6)この特例の適用を受けようとする資産については、重ねて他の特例(優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例や減価償却資産の特別償却または所得税額の特別控除の特例等)の適用を受けないこと。

(7)土地等の譲渡については、原則として、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えていること。
なお、令和8年3月31日までにした土地等の譲渡については、この要件が停止されています。
ただし、上記(2)ハの組合せの場合には、所有期間について、譲渡した年の1月1日において10年を超えていることが、個別の要件とされています。

(8)譲渡資産の譲渡は、収用等、贈与、交換、出資によるものおよび代物弁済としての譲渡ではないこと。
また、買換資産の取得は、贈与、交換または一定の現物分配によるもの、所有権移転外リース取引によるものおよび代物弁済によるものではないこと。

対象者または対象物

事業の用に供している特定の地域内にある土地建物等(譲渡資産)を譲渡して、一定期間内に特定の地域内にある土地建物等の特定の資産(買換資産)を取得し、その取得の日から1年以内にその買換資産を事業の用に供した方

計算方法・計算式

譲渡所得金額の計算

この特例の適用を受けた場合の譲渡所得の金額は、原則として次の算式によって計算します(課税割合が20パーセントの場合)。

(1)譲渡資産の譲渡価額 ≦ 買換資産の取得価額の場合

イ 譲渡資産の譲渡価額×0.2=収入金額

ロ (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×0.2=必要経費

ハ 収入金額-必要経費=課税される譲渡所得の金額

(2)譲渡資産の譲渡価額 > 買換資産の取得価額の場合

イ (譲渡資産の譲渡価額-買換資産の取得価額)+買換資産の取得価額×0.2=収入金額

ロ (譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産の譲渡価額)=必要経費

ハ 収入金額-必要経費=課税される譲渡所得の金額

課税割合

(1) 下記(2)および(3)以外の場合

20パーセント

(2) 上記「特例の適用を受けるための要件」(2)イに該当する場合(譲渡資産が防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律に規定する第二種区域内にある資産であるものに限ります。)

30パーセント

(3) 上記「特例の適用を受けるための要件」(2)ハに該当する場合

次に掲げる表のとおりです。

例えば、東京都特別区から集中地域以外の地域への主たる事務所の所在地の移転を伴う買換え(譲渡資産が東京特別区内の主たる事務所資産であり、買換資産が集中地域以外の地域内の主たる事務所資産である買換え)の場合、課税割合は10パーセントとなります。

買換資産
譲渡資産
集中地域以外の地域 集中地域
東京都特別区以外 東京都特別区
主たる事務所資産以外 主たる事務所資産 主たる事務所資産以外 主たる事務所資産
集中地域以外の
地域
主たる事務所資産以外     25% 30%
主たる事務所資産   40%
集中地域 東京都特別区以外 20%
東京都特別区 主たる事務所資産以外
主たる事務所資産 10%

※ 主たる事務所資産とは、事業の本拠として個人の行う事業が企画され経理が総括されている場所として使用されている建物及び構築物並びにこれらの敷地の用に供される土地等をいいます。

※ 集中地域とは、地域再生法に規定する集中地域のことをいい、具体的には、平成30年4月1日における次に掲げる区域をいいます。

イ 東京都の特別区の存する区域および武蔵野市の区域ならびに三鷹市、横浜市、川崎市および川口市の区域のうち首都圏整備法施行令別表に掲げる区域を除く区域(既成市街地)

ロ 首都圏整備法第24条第1項の規定により指定された区域(近郊整備地帯)

ハ 大阪市の区域および近畿圏整備法施行令別表に掲げる区域(京都市、守口市、東大阪市、堺市、神戸市、尼崎市、西宮市および芦屋市の特定の区域)(既成都市区域)

ニ 首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律施行令別表に掲げる区域(名古屋市の特定の区域)

手続き

申告等の方法

この特例の適用を受けるためには、一定の書類を添えて確定申告をすることが必要です。

また、この特例の適用を受けた後に、買換資産の取得価額が見積額と異なることとなった場合や特例の要件に該当しなくなった場合などの更正の請求や修正申告については、次のとおりです。

(1)更正の請求

買換資産を取得する見込みでこの特例を適用して申告した場合において、取得した買換資産の「実際の取得価額」が申告した「取得価額の見積額」より多かったことや、実際に取得した買換資産と申告した買換資産の地域又は地域の区分が異なることとなったこと、主たる事務所資産に該当するかどうかの判定が異なることとなったことにより譲渡所得に係る税額が減少する場合には、買換資産を取得した日から4か月以内に「更正の請求書」を提出して所得税の還付を受けることができます。

(2)修正申告

買換資産を取得する見込みでこの特例を適用して申告した場合において、取得した買換資産の「実際の取得価額」が申告した「取得価額の見積額」より少なかったことや、実際に取得した買換資産と申告した買換資産の地域又は地域の区分が異なることとなったこと、主たる事務所資産に該当するかどうかの判定が異なることとなったことにより譲渡所得に係る税額が増加する場合には、買換資産を取得した日から4か月以内に修正申告をし、差額の所得税を納付しなければなりません。

また、買換資産を取得期間内に取得しなかった場合、買換資産の取得の日から1年以内に事業の用に供しない場合や事業の用に供しなくなった場合には、これらの事情に該当することとなった日から4か月以内に修正申告をし、差額の所得税を納付しなければなりません。

申告先等

所轄税務署

提出書類等

確定申告書に次の書類を添えて提出してください。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】

(2)買換資産の登記事項証明書などその資産の取得を証する書類

(3)譲渡資産および買換資産が特例の適用要件とされる特定の地域内にあることを証する市区町村長等の証明書など

(注) 買換資産を取得する見込みで、この特例の適用を受けた場合には、上記の(2)の登記事項証明書などは、買換資産を取得した日から4か月以内に提出しなければなりません。

<登記事項証明書の添付省略について>

土地・建物の登記事項証明書については、「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載することなどにより、その添付を省略することができます。

<登記事項証明書を取得される方へ(法務局からのお知らせ)>

土地・建物の登記事項証明書の請求については、登記所の窓口での請求、郵送による請求のほか、自宅・会社等のパソコンからインターネットを利用してオンラインによる請求を行うことができます。オンラインによる請求は、手数料が安く、平日は21時まで可能です。

オンラインによる登記事項証明書の請求手続の詳細については、法務局のホームページをご覧ください。

根拠法令等

措法31の2、37、37の2、37の3、措令25、措規18の5、措通37-11の15、37の3-1の2

関連リンク

◆パンフレット・手引き

特定の事業用資産の買換えの特例の適用を受けるためには事前に届出が必要です(令和6年6月)(PDF/333KB)

◆関連する質疑応答事例《譲渡所得》

特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例等

◆法務局ホームページ

登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です

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