税の学習コーナー

税の学習コーナー税の作文(中学生・高校生) 平成30年度 中学生の「税についての作文」各大臣賞・国税庁長官賞受賞者発表

平成30年度 中学生の「税についての作文」各大臣賞・国税庁長官賞受賞者発表

内閣総理大臣賞

【題名】思いやりのキャッチボール

【学校名・学年】北海道音更町立下音更中学校3年

【氏名】宇野 天那

 以前我が家に数十年前の中学校の英語の教科書があった。その中に日本が行っている国際協力について書かれている個所があったのだが、特に「help」と「support」の違いについての話が深く印象に残っている。
 発展途上国の人達に直接お金をあげたり何かを作ってあげたりする(=help)ことは難しいことではないが、それだけでは真の意味で彼らの役には立つことにはならない。勉強を教えたり仕事のやり方を教えたりして彼らが自分達の力で生活していくための力をつける(=support)ことこそが大切なのだ。そういう内容だった。
 「なるほどなあ!」と、日本の国際協力の考え方・取り組み方に感動した。
 平成三〇年の日本の海外への経済協力費は五〇八九億円。これは一般会計歳出総額の約〇.五%に当たるそうだ。
 この大きな金額に対し、「自分達の税金をなぜ外国にあげなきゃならないんだ?」「外国にお金を援助する余裕があるならまず国民に還元するべきだ」という意見も多くある。
 一瞬納得しそうになる。でもそれは、この世界の中で、これまでもこれからも、日本がどの国からも助けられたことがなく、これからも絶対に他国からの援助を受けない、という状況下でのみ受け入れられる意見ではないだろうか。
 二〇一一年の東日本大震災。あの時、日本には世界各国から膨大な数の救援物資や寄付金が届いた。被災地の方々はどんなにかありがたく心強かったろう。私自身は被災していないが、海外の方の温かい気持ちに日本人として心から嬉しかった。
 高額の寄付をしてくれた国のリストに大国と言われる国名が並ぶ中アフガニスタンやセルビア、バングラデシュなど経済的に豊かではない国々の名前がある。日本円で一日の収入が二〇〇円くらいの国もある。それなのにその収入の半分にあたる金額を寄付してくれる人達が数多くいたそうだ。そんなことまでしてくれる理由は、どの国も同じだ。
 自分達の国が紛争や災害で困難の中にあった時、日本が助けてくれたからだ、と。
 日本は壊れた病院や学校や道路を再建するだけでなく、その国で今後も現地の人が困らないように、機械などのメンテナンスや清掃の仕方、維持していくためのノウハウを教え、現地に根付きちゃんと機能していけるようになるまでしっかり指導する。寄付はそんな日本の支援に対する恩返しなのだそうだ。
 人は一人では生きていけない、ということは言い尽くされてきた言葉だが、国もまた一国では生きていけない。
 「税金」という名のみんなの「思いやり」のキャッチボールは温かく尊い。このキャッチボールがこれからも続くように、私もわずかながらでも貢献していきたいと思う。

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総務大臣賞

【題名】学べる幸せ

【学校名・学年】つくば市立みどりの学園義務教育学校8年

【氏名】ガリアンド クリスティーナ

 日本の小・中学生は、学校に通えることがどんなに幸せなことか知っているのだろうか。
 私はフィリピンで生まれた。十歳の時、日本で仕事に就いた父を頼って、来日した。そして、日本の学校に通うことになった。教室に入ると真新しい教科書が机の上に置かれていた。写真やイラストの付いたきれいな教科書に、心がうきうきしたのを今でも覚えている。更に驚いたのは、その教科書は私の物になるということだった。
 フィリピンでは、公立の学校に通う生徒は教科書を借りて勉強する。つまり、次の年には、その教科書を別の人が使うということだ。私立の学校は、教科書を買って勉強する。だから、日本で教科書を無償で配ってくれるということに驚き、同時にとてもありがたいと思った。
 しかし、十歳の私は日本語が話せなかった。読むことも書くこともできなかった。教科書に書いてあることが何も理解できなかった。でも、私は、私だけの教科書の内容を知りたいと思った。だから、一生懸命に勉強した。ひらがなを覚え、テレビや友だちとの会話で日本語の言葉をたくさん身に付けていった。教科書に出てくる漢字には、ひらがなでルビをふった。そうして、私の教科書はどんどん私だけの教科書になっていった。
 今、私は中学二年生になった。(私の学校では、八年生と呼ぶ。)今でも、私の教科書の漢字には、所々、ひらがなのルビがふられている。そして、知らない言葉が出てくると、どんどん友達や先生に聞いて、新しい言葉の使い方を覚えている。そんな私に、友達が、「なんでそんなに勉強熱心なの。」と聞いてきた。友達は、「勉強って、あまり好きじゃない。めんどう。」と言った。
 彼らは、この当たり前だと思っている日常が、本当はとても恵まれていることを知らないのだ。日本の法律と税金が小、中学生の学ぶ権利を保証してくれているのだ。
 フィリピンでは、学校に通えない子供も多い。家族のために、田んぼや畑の手伝い、清掃作業等のアルバイトをするのだ。水道や電気がなく、川の水をくみ、ろうそくで生活している地区も多い。学校のトイレを使う時は家から持ってきたトイレットペーパーを使うことも普通だ。
 誰もが平等に学ぶチャンスをもらえる日本。それを支えている税金。日本の小、中学生に勉強できる幸せをもっともっと感じてほしい。そして、家族や多くの人の税金のおかげで、今の恵まれた生活があるのだと知ってほしい。
 私も大人になったら、多くの子供達のため、そして、世界中の子供達が学校に通えるように、自分だけの教科書を持てるようになってほしい。その手伝いができるような大人になれるよう、今日も頑張って勉強しよう。

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財務大臣賞

【題名】「母が税金を納める日」

【学校名・学年】高松市立龍雲中学校3年

【氏名】香西 咲月

 夏休みの間、私は母と一緒に出勤している。母が勤める会社は子連OKの会社なのだ。幼稚園児や小学生に混じって経理担当の母の傍らで勉強をしている。
 そんな毎日にもすっかり馴染んだ八月十日、母が
「今日は源泉所得税の納付を忘れんようにせんと。」
と言った。聞くと社長さんや従業員さんのお給料から所得税をあらかじめ差し引いて、そのお金を毎月一回経理担当の母が税務署に納めているらしい。
「今から税務署に行くん?私は会社で待っとったらええん?」
そういう私に母はこう言った。
「税務署とか銀行に行かんでもインターネットで納めることができるよ。」
母はパソコンで、国税電子申告・納税システム(e-Tax)を立ち上げ、納税額を手慣れた様子で入力し始めた。
「これが済んだら、インターネットバンキングで支払うんよ。」
「ふうん、便利やね。」
前は納付書を手書きで作り、銀行の窓口まで行って支払っていたらしい。
「便利になったわ。」
うれしそうに母は言った。
「五十日(ごとおび)ゆうて、五と〇が付く日は忙しいんよ。銀行も混むし。このシステム使うようになってから気持ちに余裕ができたわ。」
私が物心ついた頃にはインターネットは当たり前のようにあったが、母からしてみればそれは目を見張るものであり、それは納税の世界でも同じで日々進化をしているらしい。
「自動車税はクレジットカードで支払えるし、いろいろ便利になったよ。」
と微笑む母。
中学生の私が、よりよい生活や教育を受けるためにたくさんの税金が使われていることは学校で学んだり、身を持って感じてきたが、こんな風に税金が納められていたなんて、母の仕事場について来なければ知るのはまだ先のことであっただろう。まだまだ知らないことはたくさんあるが、小さい点と点が細い一本の線につながった瞬間であった。
 複雑で面倒であった納税の手続きが日々楽になっているということは、それだけ我々に身近になってきているということだろう。そしてそれは、税金の使い方について一人一人が今までより考えるきっかけにもなるだろう。私が大人になった時は今よりもっとよくなっているだろうか…。いや、よくしなくては!!少しばかり真面目に将来について考えてみる。夏休みの出勤も悪くないなと思った。

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文部科学大臣賞

【題名】祖父と盲導犬ロボットと税金

【学校名・学年】学校法人文理佐藤学園西武学園文理中学校1年

【氏名】上田 壮一郎

 僕の祖父は、四十九歳の時に病気で両目とも見えなくなりました。杖や人の肩などの支えるものがないと、外では安全に歩くことができません。僕は、祖父と年に二回ほど旅行に行きますが、祖父の手を僕の肩に置いて誘導をしています。近くをトラックが通り過ぎるたびに、祖父の手にぐっと力が入るのが肌で感じとれます。毎回、僕が学校や家族の話をして、祖父は最近のニュースなどについて話してくれ、とても楽しい時間を過ごします。しかし、祖父は僕の顔を一度も見たことはありません。
 僕は、小学一年生の頃からロボット教室に通っていて、祖父や、他の目の不自由な方がより安全に楽しく生活できるようになるのに役立つ盲導犬ロボットを作りたいという夢を持つようになりました。別れるのが辛くなるから盲導犬は飼わないという祖父に、「おじいちゃん、僕が将来おじいちゃんの一生の友達になれる盲導犬ロボットを作ってプレゼントしてあげるね。」と言ってみた時にとても喜んでくれたことは、今でも忘れられません。
 僕は今回の租税教室で、税金が一番多く使われているのは社会保障だということを学びました。祖父も、障害者年金をいただいたり、杖などの補装具費や住民税の控除を受けたり、薬や医療費を無料にしていただいたりしており、その一部は税金でまかなわれていることを知りました。
 「働きざかりの時に働けなくなって収入がなくなってしまい、これからどうしようかと悩んだけれど、障害者年金や、いろいろな控除を受けられると知って本当に助かったよ。」と祖父が話してくれました。
 祖父が税金に助けられているのも、税金をきちんと払う人がいてこそだと思います。僕の父は、小さな会社を経営していて、所得税や住民税だけでなく、法人税や関税など様々な種類の税金を払っていることを、いつも僕や妹に自慢しています。僕の夢を応援してくれており、「小さくてもいいから自分自身に誇れる事業を興して、税金をたくさん払い、社会に貢献できる大人になりなさい。」と言ってくれます。僕はそんな父を誇りに思います。
 日本眼科医会の発表によると、目の不自由な方は年齢とともに増えていき、日本の視覚障害者の半数は七十歳以上、六十歳以上で合計七十二パーセントを占めているそうです。これからますます進む少子高齢化社会は、目が不自由なお年寄りが増え、税金を払う人は減るという社会だと思います。僕は、盲導犬ロボットで目の不自由な方の役に立ち、税金もしっかりと払って、二つの意味で少子高齢化社会に貢献できる人間になりたいと強く思いました。

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