[令和5年4月1日現在法令等]

対象税目

所得税(譲渡所得)

概要

国外転出(相続)時課税

(1)国外転出(相続)時課税のあらまし

国外転出(相続)時課税とは、相続開始の時点で、1億円以上の有価証券等、未決済信用取引等または未決済デリバティブ取引(以下「対象資産」といいます。)を所有等(所有または契約の締結をいいます。以下同じです。)している一定の居住者が亡くなり、非居住者である相続人等が相続または遺贈(以下「相続等」といいます。)により対象資産の全部または一部(以下「相続対象資産」といいます。)を取得した場合に、その相続開始の時に、相続対象資産の譲渡または決済(以下「譲渡等」といいます。)があったものとみなして、その相続対象資産の含み益に対して所得税が課税される制度です。

この制度は、平成27年7月1日以後の相続等について適用されます。

なお、平成28年分の所得税から、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算および繰越控除の適用対象となる上場株式等の譲渡の範囲に、国外転出(相続)時課税制度の適用により行われたとみなされた上場株式等の譲渡が追加されています。

(2)申告手続等

この制度の対象となる方(被相続人)の相続人は、相続開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、その年の1月1日から死亡の日までに確定した被相続人の各種所得に、この制度の適用による所得を含めて準確定申告および納税をする必要があります。

(注) 平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付することになります。

納税の猶予

(1)納税猶予の特例のあらまし

国外転出(相続)時課税の申告をする方(相続人)が、一定の手続を行った場合は、国外転出(相続)時課税の適用により納付することとなった所得税について、相続開始の日から5年間納税を猶予することができ(延長の届出により最長10年間)、納税猶予期間の満了日の翌日以後4か月を経過する日が納期限となります。

(2)納税猶予の特例の適用を受けるための要件

この納税猶予の特例の適用を受けるためには、次のことが必要となります。

イ 準確定申告書の提出期限までに、相続対象資産を取得した非居住者である相続人等の全員が、原則として連署による一の書面で、所轄税務署へ納税管理人の届出をすること。

ロ 準確定申告書に納税猶予の特例の適用を受けようとする旨を記載すること。

ハ 準確定申告書に「国外転出等の時に譲渡又は決済があったものとみなされる対象資産の明細書(兼納税猶予の特例の適用を受ける場合の対象資産の明細書)《確定申告書付表》」「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予分の所得税及び復興特別所得税の額の計算書」など一定の書類を添付すること。

ニ 準確定申告書の提出期限までに、納税を猶予される所得税額および利子税額に相当する担保を提供すること。

なお、納税猶予期間中は、各年の12月31日において所有等している適用相続資産(国外転出(相続)時課税に係る納税猶予の特例の適用を受けている相続対象資産をいいます。)について、引き続き納税猶予の特例の適用を受けたい旨を記載した届出書(「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の継続適用届出書」)を翌年3月15日までに、原則として連署による一の書面で、所轄税務署へ提出する必要があります。

(3)納税猶予に係る期限の確定

この納税猶予の特例の適用を受けている方は、納税猶予に係る期限までに、次のイまたはロに該当した場合、それぞれに応じた日をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

なお、納税猶予に係る期限の到来により、猶予されていた所得税を納付する場合には、納税猶予がされた期間に応じた利子税も納付しなければなりません。

イ 一部確定

適用相続資産について、次に掲げる事由による移転があった場合、これらの事由が生じた適用相続資産に係る納税猶予分の所得税額のうち、対応する部分について、これらの事由が生じた日から4か月を経過する日をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

また、これらの事由に該当する場合、この納税猶予の特例の適用を受けている方は、これらの事由が生じた適用相続資産の種類、名称など、所定の事項を記載した書類を、これらの事由が生じた日から4か月以内に納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

(イ) 譲渡または決済

(ロ) 贈与

この場合における納税猶予に係る期限が確定する税額の計算は、これらの事由が生じた日ごとに、次の算式により行います。なお、これにより算出された金額に100円未満の端数があるときまたはその全額が100円未満であるときは、その端数金額またはその全額を切り捨て、その切り捨てた金額は、納税猶予分の所得税額として残ることとなります。

(算式)

( 納税猶予分の所得税額 既に一部確定した所得税の額がある場合には、その所得税の額 ) ( 納税猶予する前の納付すべき所得税の額 適用相続資産(既に確定事由が生じたものを除きます。)につき所得税法第60条の3第1項から第3項までの規定の適用がないものとした場合における納付すべき所得税の額 )

ロ 全部確定

(イ) 継続適用届出書を提出期限までに提出しなかった場合

その提出期限から4か月を経過する日をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

(ロ) 次の①から④までに掲げる場合で、税務署長により納税猶予に係る期限が繰り上げられたときは、その繰り上げられた期限をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

① 担保価値が減少したことにより、国税通則法第51条≪担保の変更等≫第1項の規定による増担保等を命じられた場合において、その命令に応じない場合

② 継続適用届出書に記載された事項と相違する事実が判明した場合

③ 納税管理人を解任してから4か月以内に新たな納税管理人の届出をしなかった場合

④ 納税管理人について死亡、解散、破産手続開始の決定または後見開始の審判を受けた事実が生じたことを知った日から6か月以内に新たな納税管理人の届出をしなかった場合

(ハ) 非居住者である猶予承継相続人(納税猶予適用者の死亡により、国外転出(相続)時課税に係る納税猶予分の所得税額に係る納付の義務を承継した相続人をいいます。)が、その相続の開始のあった日の翌日から4か月以内に納税管理人の届出をしなかった場合

その期限から4か月を経過する日をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

(ニ) 居住者である猶予承継相続人が納税管理人の届出をしないで国外転出した場合

その国外転出の時から4か月を経過する日をもって、納税猶予に係る期限が確定します。

帰国した場合等の取扱い

対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等が、相続開始の日から5年以内(納税猶予の特例の適用を受け、納税猶予の期限延長の届出書(「国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等に係る納税猶予の期限延長届出書」)を提出している場合には、10年以内)に帰国をした場合(これらの相続人等が国外に複数いる場合には、これらの相続人等の全員が帰国した場合)で、その帰国の時まで引き続き所有等している相続対象資産については、国外転出(相続)時課税の適用がなかったものとして、課税の取消しをすることができます。

なお、この課税の取消しをするためには、帰国の日から4か月以内に更正の請求または修正申告をする必要があります。

ただし、相続対象資産の所得の計算につき、その計算の基礎となるべき事実の全部または一部について、隠蔽または仮装があった場合には、その隠蔽または仮装があった事実に基づく所得については、課税の取消しをすることはできません。

また、次の場合に該当するときにも、国外転出(相続)時課税の適用がなかったものとして、課税の取消しをすることができます。

(1) 対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等が、相続開始の日から5年以内にその相続等により取得した相続対象資産を居住者に贈与した場合

(2) 対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等が相続開始の日から5年以内に亡くなったことにより、その相続等により取得した相続対象資産の相続(限定承認に係るものを除きます。)または遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除きます。)による移転があった場合において、次に掲げる場合に該当することとなったとき。

イ 相続開始の日から5年以内に、その相続または遺贈により相続対象資産を取得した相続人および受遺者の全員が居住者となった場合

ロ 対象資産を相続等により取得した非居住者である相続人等について生じた遺産分割等の事由(※)により、その相続または遺贈により相続対象資産を取得した相続人および受遺者に非居住者(相続開始の日から5年以内に帰国した者を除きます。)が含まれないこととなった場合

(※) 「遺産分割等の事由」とは、次に掲げる事由をいいます。(以下同じです。)

① 未分割の遺産について遺産分割が行われたこと。

② 強制認知の判決の確定等により相続人に異動を生じたこと。

③ 遺贈に係る遺言書が発見され、または遺贈の放棄があったこと。

④ 相続等により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと。

⑤ 条件付の遺贈について、条件が成就したこと。

(注1) 令和元年7月1日前に開始した相続または遺贈により、旧所得税法(所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)による改正前の所得税法)第60条の3第1項から第3項までの規定の適用を受けた場合については、上記に掲げる事由のほか、民法および家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)による改正前の民法の規定による遺留分減殺請求に基づき返還すべき、または弁償すべき額が確定した場合が含まれます。

(注2) 「相続開始の日」はいずれも国外転出(相続)時課税に係る相続開始の日であり、非居住者である相続人等の死亡に係る相続開始の日ではありません。

国外転出(相続)時課税の対象となる方(被相続人)について遺産分割等の事由が生じた場合

国外転出(相続)時課税の対象となる方(被相続人)について遺産分割等の事由が生じたことにより、非居住者に移転した相続対象資産が増加し、または減少したことに基因して、次に掲げる場合に該当することとなった場合には、それぞれ次に掲げるとおり修正申告等の提出等が必要となります。

(1) 遺産分割等の事由が生じたことにより当初申告よりも所得税の額が増加する場合

国外転出(相続)時課税の対象となる方(被相続人)の所得税の額が当初申告よりも増加する場合には、その方(被相続人)の相続人は、その遺産分割等の事由が生じた日から4か月以内に修正申告書を提出し、かつ、その期限内にその修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければなりません。

(2) 遺産分割等の事由が生じたことにより当初申告よりも所得税の額が減少する場合

国外転出(相続)時課税の対象となる方(被相続人)の所得税の額が当初申告よりも減少する場合には、その方(被相続人)の相続人は、その遺産分割等の事由が生じた日から4か月以内に更正の請求をすることができます。

(3) 遺産分割等の事由が生じたことにより新たに準確定申告書を提出すべきこととなった場合

国外転出(相続)時課税の対象となる方(被相続人)の準確定申告書を新たに提出すべきこととなった場合には、その方(被相続人)の相続人は、その遺産分割等の事由が生じた日から4か月以内に期限後申告書を提出し、かつ、その期限内にその期限後申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければなりません。

対象者または対象物

対象者

国外転出(相続)時課税の対象者は、次のイおよびロのいずれにも該当する方(被相続人)です。

イ 相続開始の時に被相続人が所有等している対象資産の相続開始の時の価額等(未決済信用取引等または未決済デリバティブ取引については、決済をしたものとみなして算出した利益の額または損失の額に相当する金額)の合計額が1億円以上であること。

ロ 原則として、相続開始の日前10年以内において、被相続人が国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年を超えていること。

対象資産

国外転出(相続)時課税の対象資産には、有価証券(株式や投資信託など)(※)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引および未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)が該当します。

(※) 株式を無償または有利な価額により取得することができる権利を表示する一定の有価証券で国内源泉所得を生ずべきものを除きます。

手続き

申告先等

所轄税務署

根拠法令等

所法60の3、125、129、137の3、151の3、151の5、151の6、153の3、153の5、所令170の2、266の3、令元改正前所法151の6、153の5、措法93、所基通137の2-3、137の2-10、137の3-2、平27改正法附則8、令元改正法附則8、復興財確法13

関連リンク

◆パンフレット・手引き

国外転出時課税制度

◆各種様式

国外転出時課税制度関係の各種様式

関連コード

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