中小企業向け賃上げ促進税制(措法42の12の5A)の適用を受けるに当たって、別表の記載に誤りがあり、税額控除額が適正に算出されていない事例が見受けられます。
 例えば、別表六(三十一)(令和4年4月1日以後終了事業年度分)の「5」欄(比較雇用者給与等支給額)には、本税制を適用しようとする事業年度(以下「適用年度」といいます。)と適用年度の前事業年度(以下「前事業年度」といいます。)の月数が異なる場合や組織再編成を行っている場合などに該当しない限り、前事業年度における雇用者給与等支給額を記載することになりますが、当該前事業年度に退職した従業員に対する給与等の支給額を差し引いて記載する等の誤りにより、本来であれば本税制の適用を受けることができないにもかかわらず本税制の適用を受けている事例や、誤って算出された金額に基づいて本税制の適用を受けている事例が見受けられます。
 本税制は累次の改正が行われ、制度の適用要件につき順次見直しがなされておりますので、適用年度の適用要件を十分にご確認の上、別表を記載するようにしてください。
 なお、中小企業向け賃上げ促進税制の具体的な制度内容については、下記をご参照ください。

【参考1】近年における賃上げ促進税制等に係る制度の適用要件(給与関係のみ)の変遷の概要

【参考1】近年における賃上げ促進税制等に係る制度の適用要件(給与関係のみ)の変遷の概要

(注)(  )は控除率の上乗せ措置の適用を受ける場合の要件

【参考2】別表の記載誤りが想定される事例

【参考2】別表の記載誤りが想定される事例

(注1)「適用年度の比較雇用者給与等支給額」又は「前事業年度の雇用者給与等支給額」のいずれか又は両方を誤って申告した場合であっても、控除対象雇用者給与等支給増加額は、確定申告書等に添付された書類に記載された控除対象雇用者給与等支給増加額が限度とされていますので、修正申告書又は更正請求書により、控除対象雇用者給与等支給増加額を増加させることはできませんのでご注意ください(措法42の12の5D)。

(注2)【参考2】の事例は、適用年度が令和4年4月1日以後に開始する事業年度である場合において使用されることとなる別表の記載誤りが想定される事例ですが、適用年度が令和4年4月1日前に開始した事業年度である場合において使用されることとなる別表においても、上記と同様の事例が当てはまります。例えば、次の適用年度の区分に応じて、それぞれ次の別表の各欄の金額は、組織再編成を行っているなどの場合に該当しない限り、一般的には一致することが考えられます(いずれも適用年度及び前事業年度の月数が12か月である場合を前提としています。)。

@ 適用年度が平成30年4月1日から令和3年3月31日までの間に開始する事業年度である場合

イ 適用年度が平成31年4月1日から令和2年3月31日までの間に終了する事業年度である場合

適用年度(平成31年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十六)の「2」欄(比較雇用者給与等支給額)と前事業年度(平成30年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十四)の「1」欄(雇用者給与等支給額)

ロ 適用年度が令和2年4月1日から令和3年3月31日までの間に終了する事業年度である場合

適用年度(令和2年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十五)の「2」欄(比較雇用者給与等支給額)と前事業年度(平成31年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十六)の「1」欄(雇用者給与等支給額)

ハ 適用年度が令和3年4月1日以後に終了する事業年度である場合

適用年度(令和3年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十五)の「2」欄(比較雇用者給与等支給額)と前事業年度(令和2年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十五)の「1」欄(雇用者給与等支給額)

A 適用年度が令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に開始する事業年度である場合

イ 適用年度が令和3年4月1日から令和4年3月31日までの間に終了する事業年度である場合

適用年度(令和3年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十八)の「2」欄(比較雇用者給与等支給額)と前事業年度(令和2年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十五)の「1」欄(雇用者給与等支給額)

ロ 適用年度が令和4年4月1日以後に終了する事業年度である場合

適用年度(令和4年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十九)の「2」欄(比較雇用者給与等支給額)と前事業年度(令和3年4月1日以後終了事業年度分)の別表六(二十五)の「1」欄(雇用者給与等支給額)

(注3)令和3年度税制改正において、雇用者給与等支給額及び比較雇用者給与等支給額の計算方法に改正があったため、上記(注2)のAの場合において、前事業年度に雇用安定助成金額があるときは、「適用年度の比較雇用者給与等支給額」と「前事業年度の雇用者給与等支給額」の金額が一致しない場合であっても、別表の記載に誤りがないことが考えられます。