御挨拶

 税務大学校租税史料館は、租税に関する文書や図書など、歴史的な史料を収集・保存し、租税史料の研究や展示などを通じて広く一般に公開している歴史史料館です。
 租税史料館では、平成12年から毎年特別展示を企画しており、平成12、13年度の特別展示では江戸時代を取り上げ、平成14年度では江戸時代から明治時代にかけて、年貢から税金へと租税制度が切り替わる様子を紹介してまいりました。今回の特別展示は、近代日本の財政制度の確立に大きな役割を果たした地租改正について、地券の発行過程に焦点を据えて紹介しています。
 地租改正により、地租は地価に課税されるようになり、納税の方法は米納から金納に変わりました。このとき課税と納税の証書として発行された、いわば土地の権利証が「改正地券」と呼ばれているものです。また、改正地券より古くから発行されていた地券は「壬申地券」と称されています。壬申地券には発行の目的により2種類の様式がありますが、いずれも改正地券が発行されるようになるための前提となりました。
 明治5年(1872)から発行が開始された和紙製の壬申地券は、地租改正の実施により大蔵省が印刷した洋紙製の改正地券に統一されていきますが、その後、明治22年(1889)に土地台帳規則が公布されたことに伴い、地券制度は廃止されました。
 租税史料館には、全国の壬申地券や改正地券が多数所蔵されています。今回の展示では、これらの地券を一堂に展示することで、多様な「地券の世界」を紹介しています。
 今後も租税史料館では、特別展示を通じて、所蔵史料を多数、紹介してまいりたいと思いますので、より一層のご支援とご協力をお願いいたします。

平成16年3月 税務大学校 租税史料館長
作田 隆史