所得税は1798年にイギリスで創設されたのが始まりです。日本では明治20年(1887)に導入されていますが、これは世界でも早い方でした。
 所得税導入の検討は、明治時代に入ると間もなく始められており、明治17年には大蔵省によって所得税法の草案が作成されました。これはイギリスの税制をもとにしたもので、分類所得税や源泉課税方式などが盛り込まれていました。この後、すでに所得税を施行している各国の税の沿革などを参考として所得税法が誕生しました。この所得税法は、総合累進所得税制度や調査委員制度を採用しており、プロシヤの影響が強い税法であったと言われています。
 この所得税の導入が検討された時期は、明治政府によって近代的な税制を確立するため外国の様々な税制が検討されていた時代でもありました。

主な諸外国における所得税の採用時期

出典 汐見 三郎『各国所得税制論』(1934年)など

イギリスの所得税200年展のポスター・パンフレット

 これらは、平成10年(1998)に日本の国税庁にあたるイギリスの内国歳入庁で作られた所得税200年展のポスターとパンフレットです。

イギリスの所得税200年展のポスター


イギリスの所得税200年展のパンフレット


イギリスの所得税200年展のパンフレット袋

英国賦税要覧 明治4年(1871)の写真

英国賦税要覧
明治4年(1871)

 経済学士アル・ドュドリー・バキストル著の「デ・タキセーシュン・オフ・デ・ユナイテット・キングドム」(1869年刊行)を訳したもの。イギリスの所得税を「インコム・エンド・プロペルチィ」=「収入及資産ノ税」として紹介しています。

官版 巴華釐亜国税法 明治8年(1875)の写真

官版 巴華釐亜国税法
明治8年(1875)

 巴華釐亜(ババリア)は、ドイツ連邦を構成する南ゲルマンの一独立国で首都は「ミンセン」です。「ミンセン」は現在の「ミュンヘン」にあたります。所得税法は、収入税法として1856年(安政2年)に定められた、と紹介しています。

直税篇 上巻 英国ノ部・米国ノ部・仏国ノ部(大蔵省主税局) 明治20年(1887)の写真

直税篇 上巻 英国ノ部・米国ノ部・仏国ノ部(大蔵省主税局)
明治20年(1887)

 英国の歳入税の沿革の概略が書かれています。ここには、1798年に軍用金調達のため所得に課税された後、1799年の税制改正で歳入税が賦課されたと書かれています。これにより、英国の歳入税の始まりについては1798年とする説と1799年とする説の二つの説があります。

直税篇 中巻 仏国ノ部・普国ノ部・澳国ノ部・各国ノ部(大蔵省主税局) 明治20年(1887)の写真

直税篇 中巻 仏国ノ部・普国ノ部・澳国ノ部・各国ノ部(大蔵省主税局)
明治20年(1887)

 澳国(オーストリア)の所得税は、営業・財産から生じた所得に課されていましたが、ここでは特別の免許、免除について紹介しています。

章程篇 上巻 英国ノ部・米国ノ部(大蔵省主税局) 明治20年(1887)の写真

章程篇 上巻 英国ノ部・米国ノ部(大蔵省主税局)
明治20年(1887)

 章程とは、事務手続きを具体的に定めたものです。
 左側のページは英国の歳入税などの賦税者の心得書です。また、右側のページは同国の歳入税などを賦課する賦税官吏の任命書の雛形です。