Q4−1 移転価格課税等に係る納税の猶予について教えてください。

○ 我が国において移転価格課税等の更正又は決定を受けた者が相互協議の申立てを行った場合には、その申立者の申請に基づき、当該更正又は決定により納付すべき所得税の額若しくは法人税の額及び地方法人税の額並びにその加算税の額として計算した一定の金額を限度として、一定期間に限り、その納税の猶予を受けることができます。
(注)なお、当該更正又は決定により納付すべき復興特別所得税の額又は復興特別法人税の額及びその加算税の額についても納税の猶予を受けることができます。
○ 納税の猶予を受けることができる一定期間とは、我が国における移転価格課税等の更正又は決定に係る納期限(納税の猶予の申請が当該納期限後である場合には、当該申請の日)から、相互協議の合意に基づく更正があった日(合意に至らずに相互協議が終了した場合等一定の場合には、国税庁長官がその旨を通知した日)の翌日から1か月を経過する日までの期間をいいます。
○ 納税の猶予に係る具体的な手続については、相互協議の手続について(事務運営指針)の42《納税の猶予》をご覧ください。
○ 納税の猶予期間中は延滞税が免除されますが、更正又は決定があってから納税の猶予の申請を行うまでに生じた延滞税は免除されませんのでご留意ください。

Q4−2 誰が納税の猶予を申請することができるのでしょうか。

○ 納税の猶予の根拠となる租税特別措置法の規定により、以下の全ての要件を満たす個人又は法人が納税の猶予を申請することができます。
  1. 1 我が国において移転価格課税等の更正又は決定を受けたこと
  2. 2 当該更正又は決定について、租税条約の規定に従って相互協議の申立てを行っていること
  3. 31により納付すべき更正又は決定に係る所得税の額若しくは法人税の額及び地方法人税の額のうち納税の猶予を受けようとする金額(納税の猶予に係る所得税等)が2による相互協議の申立てに係る相手国等との間の相互協議の対象になるものであること
  4. 4 納税の猶予に係る所得税等以外の国税の滞納がないこと
  5. 5 原則として、納税の猶予に係る金額に相当する担保の提供があること
○ 納税の猶予を申請することを検討している場合には、その旨を事前相談において国税庁相互協議室の担当者に伝えてください。
○ 相互協議申立書を提出する際には「租税特別措置法第66条の4の2第1項《国外関連者との取引に係る課税の特例に係る納税の猶予》等に規定する納税の猶予の希望の有無」欄の「有」に「レ」印を記載してください(Q2−6参照)。

Q4−3 納税の猶予を申請するための手続を教えてください。

○ 納税の猶予の申請は、所轄税務署長に対して、「納税の猶予申請書」及び添付資料(Q4−4参照)それぞれ2部を提出し、担保を提供(Q4−5参照)していただく必要があります。
○ 納税の猶予申請書の様式については、「納税の猶予申請書(別紙様式5-1)(PDF/205KB)」をご覧ください。

Q4−4 納税の猶予申請書に添付が必要な書類を教えてください。

○ 「納税の猶予申請書」に次の資料をそれぞれ2部添付してください。
  1. 1 我が国において移転価格課税等の更正又は決定を受けたことを理由として、我が国又は相手国等の税務当局に対して相互協議の申立てを行ったことを証する書面(相手国等の税務当局に対して相互協議を申し立てている場合には、当該申立ての翻訳資料を添付してください。)
  2. 2 納税の猶予に係る所得税等が、我が国における移転価格課税等の更正又は決定に係るものであること及び相互協議の申立てに係る相手国等との間の相互協議の対象となるものであることを明らかにする書類

Q4−5 納税の猶予の担保にはどのようなものがあるのでしょうか。

○ 納税の猶予の担保の種類は、国税通則法第50条各号《担保の種類》に規定する次に掲げるものです。
  1. 1 国債及び地方債
  2. 2 社債(特別の法律により設立された法人が発行する債券を含みます。)その他の有価証券で所轄税務署長が確実と認めるもの
  3. 3 土地
  4. 4 建物、立木及び登記される船舶並びに登録を受けた飛行機、回転翼航空機及び自動車並びに登記を受けた建設機械で、保険に付したもの
  5. 5 鉄道財団、工場財団、鉱業財団、軌道財団、運河財団、漁業財団、港湾運送事業財団、道路交通事業財団及び観光施設財団
  6. 6 所轄税務署長が確実と認める保証人の保証
  7. 7 金銭
○ 詳細については、納税の猶予等の取扱要領第4章第2節をご覧ください。
○ なお、担保の提供に当たっては、「担保提供書(別紙様式5−2)(PDF/151KB)」のほか、納税の猶予等の取扱要領第4章第2節に掲げる書類を併せて提出していただく必要がありますのでご留意ください。

Q4−6 納税の猶予を申請しました。申請の結果についてはどのような連絡があるのでしょうか。

○ 提出された納税の猶予申請書・添付書類及び担保に関する書類等により、納税の猶予に係る申請要件(Q4−2参照)の全てを満たしているかどうかが審査されます。その結果、納税の猶予が許可される場合には、納税地の管轄国税局の担当部署から申請者に対して「納税の猶予許可通知書」を送付することにより、納税の猶予をした旨、猶予に係る金額その他必要な事項を通知することとなります。
○ 納税の猶予が許可されない場合には、納税地の管轄国税局の担当部署から申請者に対して「納税の猶予不許可通知書」を送付することにより、その旨を通知することとなります。
○ 許可又は不許可に係る通知は、保証人又は物上保証人がいる場合には、これらの者にも送付されます。

Q4−7 納税の猶予期間中に留意すべきことがあれば教えてください。

○ 納税の猶予期間中は、納税証明書その3(未納税額が無い証明)を発行することはできないことにご留意ください。
○ 納税の猶予期間中に還付金が発生した場合には、納税の猶予に係る所得税等に充当することはできません。

Q4−8 複数の相互協議に係る納税の猶予を受けています。今般、国税庁相互協議室から、一部の相互協議において合意に至った旨の連絡を受領したのですが、納税の猶予の取扱いはどうなるのでしょうか。

○ 納税の猶予に係る所得税等が複数の相互協議に係るものである場合において、その一部の相互協議において合意に至ったときは、当該一部の相互協議に係る納税の猶予等に係る所得税等の猶予期間は、当該合意に基づく更正があった日の翌日から1か月を経過する日に終了することとなります。この場合、納税地の管轄国税局の担当部署から納税の猶予を受けている者に対して「納税の猶予額変更通知書」を送付することにより、他の継続する相互協議に係る納税の猶予に係る所得税等を通知することとなります。
○ 変更に係る通知は、保証人又は物上保証人がいる場合には、これらの者にも送付されます。

Q4−9 納税の猶予が取り消されることはあるのでしょうか。

○ 納税の猶予を受けている者が次のいずれかに該当する場合には、納税地の管轄国税局の担当部署は、当該納税の猶予を取り消すことができます。
  1. 1 相互協議の申立てを取り下げたとき
  2. 2 相互協議に必要な書類の提出につき協力しないとき
  3. 3 国税通則法第38条第1項各号《繰上請求》のいずれかに該当する事実がある場合において、その者が納税の猶予に係る所得税等を猶予期間内に完納することができないと認められるとき
  4. 4 納税の猶予に係る所得税等につき提供された担保について、納税地の管轄国税局長が国税通則法第51条第1項《担保の変更等》の規定によってした命令に応じないとき
  5. 5 新たに納税の猶予に係る所得税等以外の国税を滞納したとき(納税地の管轄国税局長がやむを得ない理由があると認めるときを除きます。)
  6. 6 納税の猶予を受けている者の財産の状況その他の事情の変化により、その納税の猶予を継続することが適当でないと認められるとき
○ 納税の猶予が取り消された場合には、納税地の管轄国税局の担当部署から納税の猶予を受けている者に対して「納税の猶予取消通知書」を送付することにより、その旨を通知することとなります。
○ 取消に係る通知は、保証人又は物上保証人がいる場合には、これらの者にも送付されます。

Q4−10 地方税について、納税の猶予に相当する制度はあるのでしょうか。

○ 地方税についても、納税の猶予に相当する制度があります。具体的には、我が国において移転価格課税等の更正又は決定を受けた者が、相互協議の申立てをした上で納税地を管轄する地方税当局に申請をした場合には、当該更正又は決定に係る地方税(道府県民税、市町村民税及び事業税)の額で相互協議の対象とされているもの及びその加算金の額の徴収を猶予するというものです(地方税の徴収猶予)。
○ 地方税の徴収猶予を申請する場合には、相互協議申立書を提出する際に「地方税法第55条の2第1項《租税条約に基づく申立てが行われた場合における法人の道府県民税の徴収猶予》等に規定する徴収猶予の希望の有無」欄の「有」に「レ」印を記載してください(Q2−6参照)。
○ 地方税の徴収猶予の申請、許可・不許可や担保の管理等の具体的な事務は地方税当局が所掌しているため、詳細については納税地を管轄する地方税当局にお問合せください。