【合理的な価格の設定をしていないと考えられたもの】

(製造業者)

1 A社は、コスト削減を図るためには工場の稼働率を低下させないことが不可欠であると考え、製造数量の維持、増加及び販売数量の確保のため製造コストや利益を度外視して販売価格、値引額を設定していた。その結果、清酒及びしょうちゅう甲類について常態的に総販売原価割れ販売となり、さらに一部の商品においては製造原価を下回る価格での販売となっていた。

(小売業者)

2 地域においてトップシェアを占める量販店A社は、近隣競合他社の販売価格に対抗するため、会社全体として最終的に利益が確保されればよいと考え、個々の商品については仕入コストや利益を度外視して販売価格を設定していた。その結果、発泡酒が常態的に総販売原価割れ販売となり、さらに特売時においては仕入等価格割れ販売となっており、合理的な価格の設定をしていないと認められた。

3 地域においてトップシェアを占める量販店A社は、近隣競合他社の販売価格に対抗するため、個々の商品については仕入コストや利益を度外視して販売価格を設定していた。その結果、ビール及び発泡酒の主要製品全ての取引が総販売原価割れ販売となり、さらには一部の取引においては仕入価格等割れ販売となっており、合理的な価格の設定をしていないと認められた。

4 同一の商圏内に存在し競合する量販店5者は、互いに競合他社の販売価格に対抗するため、仕入コストや利益を度外視して販売価格を設定していた。その結果、5者全てにおいてビール及び発泡酒が常態的に総販売原価割れ販売となり、さらにはA社及びB社においては、一部の取引について仕入価格と同額での販売又は仕入価格等割れ販売となっており、合理的な価格の設定をしていないと認められた。

【取引先等の公正な取扱いが行われていないと考えられたもの】

(製造業者)

1 A社甲支社は、大口の取引先であるドラッグストアB社がみりん小売業免許を取得した際に自社製品を取扱ってもらうために同社に対してのみ、みりん小売業免許の取得店舗に係る登録免許税相当額の金銭負担をしており、取引先等の公正な取扱いが行われていないと認められた。

2 A社甲地区本部は、自社基準上は全取引業者を対象として取引数量に応じたリベートの支出を行うこととしているにも関わらず、実際には特定の大口取引先5者のみにリベートを支出しており、取引先等の公正な取扱いが行われていないと認められた。

3 A社甲本部は、大口の取引先である業務用酒販店B社に対してのみ、今後の取引の維持と販売数量の維持、拡大を図るため、小売業者である同社が特約卸売業者と同等の取引条件となるよう同社の仕入価格(卸売価格)と生産者価格との差額について特殊販売奨励金を支出しており、取引先等の公正な取扱いが行われていないと認められた。

(卸売業者)

4 A社甲支店は、最大手の取引先であるドラッグストアB社から帳合取引の終了を示唆されたため、今後の帳合取引の確保と販売数量の維持、拡大を図るために同社に対してのみ、新規店舗開店時におけるオープン協賛金の支出や取引金額に対する割戻しを行っており、取引先等の公正な取扱いが行われていないと認められた。

【公正な取引条件の設定がなされていない】

(製造業者)

1 A社甲支社は、大口の取引先である料飲業者B社が新規に出店するに当たり、同店舗において使用するショーケースの代金を負担するよう強く要求され、これを断った場合には今後の取引の維持、販売数量の確保に支障が生じると考え、要求どおりショーケースの代金を支出しており、公正な取引条件の設定がなされていないと認められた。

2 A社は、大口の取引先であるスーパーマーケットB社に対し、今後の取引の維持、販売数量の確保を図るため合理的な理由なく月間特売用のPOP代相当額を支出しているが、B社からPOP代相当額の増額を強く要求され、これを断った場合は今後の取引の維持、販売数量の確保に支障が生じると考え、要求どおりPOP代相当額を増額して支出しており、公正な取引条件の設定がなされていないと認められた。

3 A社は、地域における有力スーパーマーケットB社の新規開店店舗と取引を開始するに当たり、B社から「新規開店店舗への納入開始に当たっては、通常納価の半額で納入することが商慣行である。」との理由で通常納価の半額での納入を強く要求され、これを断った場合には取引開始に支障が生じると考え、要求どおり通常納価の半額で納入し、その結果、製造原価割れ販売となっており、公正な取引条件の設定がなされていないと認められた。

4 A社甲支店は、大口の取引先である百貨店B社から歳暮用カタログ作成費用として多額の金銭の支出を強く要求され、これを断った場合には、当該カタログへの商品掲載がなされないどころか今後の取引にも支障が生じると考え、要求どおりカタログ作成費用を支出しており、公正な取引条件の設定がなされていないと認められた。

【透明かつ合理的なリベート類の支出がなされていない】

(製造業者)

1 A社甲支社は、特約卸売業者であるB社との取引において、年末の需要期対策としてビール及び発泡酒の取引数量が前年実績に達した場合に限り、達成謝礼を支出する旨の条件を提示していたが、B社の発泡酒の取引数量は前年実績に達しなかった。本来であれば発泡酒についてリベートは支出されないはずであるが、B社との今後の取引の維持、販売数量を確保するため、発泡酒についてもリベートを支出しており、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていないと認められた。

2 A社甲支店は、大口の取引先である量販店B社に対して新製品の販売を依頼したところ、「以前、押し込み販売の依頼を受けて仕入れた商品が店頭で不良在庫となっており、それが処分できないと新たに仕入れることはできない。」旨の回答を受けた。通常であれば不良在庫については返品を受けるものであるが、販売実績の減少を防ぐため返品処理を行わず、不良在庫の販売促進のための景品代としてリベートを支出しており、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていないと認められた。

3 A社甲支店は、大口の取引先である卸売業者B社に対し、今後の取引の維持、販売数量の確保を図るため自社基準を超えるリベートを支出しようと考え、取引実績数量が既に目標数量を超えている製品を対象として事後的に達成謝礼支出の企画を作成した上でリベートを支出しており、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていないと認められた。

4 A社甲本部は、大規模料飲業者B社が新規出店するに当たり、専売契約を獲得するため、合理的な理由なく高額な什器備品の提供や高額な販売協力金の支出(支出額を回収するためには計算上約12年もの期間を要するものであるが、専売契約の契約期間は5年。)を行っており、透明かつ合理的なリベート類の提供が行われていないと認められた。


「平成15事務年度における酒類の取引状況等実態調査の概要」の公表について