平成16年12月10日
国税庁

 平成15事務年度(平成15年7月〜平成16年6月)に実施した、酒類の取引状況等実態調査の概要は、別添のとおりです。
 当庁としては、この「平成15事務年度における酒類の取引状況等実態調査の概要」の公表を基に、個別の事業者の指導はもとより、今後の酒類業界全体における公正な取引環境の整備に向けた取組を促していくこととしています。
 なお、この資料についてご意見等がございましたら、郵便等又はインターネット(国税庁ホームページのご意見ご要望欄)によりお寄せください。


平成16年12月
国税庁

1 調査の目的

 国税庁では、酒類における公正な取引環境の整備を図るため、当庁が平成10年4月に発出した「公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針」(以下「指針」といいます。)及び、公正取引委員会が平成12年11月に発出した「『酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について』(酒類ガイドライン)」(以下「酒類ガイドライン」といいます。)の積極的な周知・啓発に努めるとともに、酒類販売場・酒類製造場(以下「酒類販売場等」といいます。)に臨場して酒類取引の実態を把握するため、平成4事務年度(平成4年7月〜平成5年6月)から酒類の取引状況等実態調査を実施し、「指針」に示された公正なルールに則しているとは言い難い取引等が認められた場合には合理的な取引が確保されるよう指導するなどして、公正な取引に向けた酒類業者の自主的な取組を促しています。

(注) 酒類の公正な取引環境の整備に向けたこれまでの取組については参考のとおりです。

2 調査の概要

(1) 調査の概要
 平成15事務年度(平成15年7月〜平成16年6月)においては、約20万4千場にのぼる酒類販売場等のうち、著しい廉価で継続的に販売しているなど取引に問題があると考えられた酒類販売場等1,443場(前年度1,609場、前年度比89.7%)を対象として、酒類の取引状況等実態調査を実施しました。
(内訳:一般調査1,319場、フォローアップ調査109場、自社基準策定状況等確認調査15場)

(注) 調査の実施状況の詳細については資料1のとおりです。

(2) 調査結果

イ 一般調査
 調査を実施した酒類販売場等のうち、取引の中のいずれかに(一取引でも)1総販売原価を下回る価格で販売するなど「合理的な価格の設定」がなされていないと考えられた取引があったものは1,281場(調査場数に対する割合97.1%)、2特定の取引先に対して不透明なリベート類を支払うなど「取引先等の公正な取扱い」が行われていないと考えられた取引があったものは 131場(同9.9%)、3「公正な取引条件の設定」がなされていないと考えられた取引があったものは27場(同2.0%)でした。

(注) 「指針」に示した公正なルールに則しているとは言い難い取引のうち主な事例は資料2のとおりです。

ロ フォローアップ調査等
 フォローアップ調査を109場実施するほか、一般調査に併せたフォローアップを116場実施し、計225場についてフォローアップ調査等を実施しました。
 これらのうち、1指摘事項の全てが改善されていたもの2場、2指摘事項の一部が改善されていたもの106場の計108場(調査場数に対する割合48.0%)については指摘事項の改善が認められました。

ハ 自社基準策定状況等確認調査等
 自社基準策定状況等確認調査を15場実施するほか、一般調査又はフォローアップ調査に併せて171場に対して自社基準策定状況等の実態確認を実施し、合計186場について自社基準策定状況等確認調査等を実施しました。
 これらのうち、1自社基準が策定されているものは73場(調査場数に対する割合39.2%)、2社内遵守体制の整備が図られているものは27場(同14.5%)、3自社基準の取引先への提示が行われているものは6場(同3.2%)でした。

ニ 公正取引委員会に対する措置請求
 「酒類小売業者の経営の改善等に関する緊急措置法」(以下「緊急措置法」といいます。)第8条において、「国税局長又は税務署長は、酒類販売業者の取引に関し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」といいます。)第2条第9項に規定する不公正な取引方法に該当する事実があると思料するときは、公正取引委員会に対し、その事実を報告し、適当な措置をとるべきことを求めることができる」旨規定されたことを受け、酒類の取引状況等実態調査において独占禁止法第2条第9項に規定する不公正な取引方法に該当する事実があると思料された酒類販売業者について公正取引委員会に対し措置請求を行いました。
 その結果、公正取引委員会においては、平成16年7月30日に措置請求に基づく2者及びその関連2者の計4者の酒類販売業者に対し、独占禁止法第19条(不公正な取引方法第6項《不当廉売》)の規定に違反するおそれがあるものとして、警告を行っています。

(3) 調査後の指導等
 調査において、「指針」に示された公正なルールに則しているとは言い難い取引等が認められた場合には、その改善のための指導を行っています。また、リベート等の支出等に係る自社基準が策定されていない場合には、その整備について指導しています。この指導により、酒類販売場等の経営者等は、自社の価格設定や取引条件の設定の不合理さを認識し、今後、販売コスト等を考慮した価格設定を行う、あるいは、リベート等の支出等に係る自社基準を策定する等、取引の改善に向けて取り組んでいく意向を示しています。

3 今後の取組

(1) 酒類業界では、現在、リベート等の支出等に係る自社基準の策定、取引先への提示及びその遵守体制の構築、公正取引遵守の宣言及びその自己点検評価に取り組むなど、酒類の公正な取引環境の整備に向けて、業界全体として積極的に取り組んでいるところです。

(2) 国税庁としては、今後も、公正取引委員会と連携を取りつつ、次のような施策の実施を通じて、引き続き、酒類販売の公正な取引環境の整備に向けた酒類業界の自主的な取組を促していくこととしています。

イ 「指針」及び「酒類ガイドライン」の周知・啓発に努めます。

ロ 酒類の取引状況等実態調査の実施を通じて、独占禁止法第2条第9項に規定する不公正な取引方法に該当する事実があると思料するときは、緊急措置法第8条の規定に基づき、公正取引委員会に対し、引き続き積極的に措置請求を行っていきます。

ハ 緊急措置法第9条において、「酒類製造業者及び酒類卸売業者は、酒類の販売数量に応じてする酒類販売業者への金銭の供与その他酒類販売業者との酒類の取引の条件について基準を定めるとともに、これを取引関係その他これに類する関係のある酒類販売業者に対し提示するよう努めなければならない」旨規定されたことを踏まえ、これまで以上にリベート等の支出等に係る自社基準の策定、取引先への提示及び遵守体制の構築について引き続き積極的に指導していくとともに、従来から実施している自社基準策定状況等確認調査等の充実を図っていきます。