本ページでは、酒類中に含まれる鉛の濃度を低く抑えるために、酒類中の鉛濃度に関する情報や酒類製造で留意すべき点等を紹介します。
鉛は地球上に広く分布しており、古代から使用されてきた金属です。精錬・加工が容易であり、合金などの快削性向上やガラスの透明度向上を目的として、はんだや水道管の原材料、塗料や美術工芸品等の様々な用途で使用されてきました。このように鉛はその利用の歴史が長く、現在も環境中に広範囲に存在する場合があることから、鉛の存在する環境で栽培・育成された農畜水産物や、鉛を利用した製造設備で製造した食品に鉛が含まれる可能性があります。
食品中に含まれる鉛を摂取することによる健康への影響については、国際的なリスク評価機関において小児の知能や成人の血圧へ影響をもたらす可能性が指摘されています。
鉛のように意図せず食品に含まれる化学物質については、「合理的に達成可能な範囲で食品に含まれる量をできる限り低くすべきである」という考え方が国際的に合意されています。
実際、鉛の排出源の対策が進んだ結果、食品からの鉛の摂取量は年々減少しています。日本国内においても、環境中への鉛の排出量の規制や農薬の残留基準値、容器包装や食品添加物の規格基準等により、鉛の低減に向けた取組が進められています。日本人の血中鉛濃度は、世界的にみても低い水準にあることから、日本国内における鉛へのばく露量は、世界的にみても低いグループに属すると考えられます。
(※)出典:鉛の評価書に関するQ&A(食品安全委員会)
鉛の摂取による人の健康への影響や食品中の鉛に関する詳しい情報については、以下のサイトをご覧ください。
酒類製造においても、環境中に存在する鉛が酒類中に混入し、その鉛濃度に影響を与える可能性があります。
酒類中の鉛濃度に影響を与える要因として、大気や土壌、水、原材料、製造設備、容器包装、醸造用資材等が想定されます。
現状、酒類中の鉛濃度に関する国内基準値は設定されておりませんが、国際的には、食品の成分等に関する国際規格を定めているコーデックス委員会において、ワイン中の鉛の最大基準値が設定されています。
改正前※ | 改正後※ | 備考 | |
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ワイン(酒精強化ワイン/リキュールワインを含む) | 0.2 mg/kg | 0.2 mg/kg | 最大基準値の採択(2019年7月)前に収穫されたブドウを原料とするものに適用。 |
ワイン(酒精強化ワイン/リキュールワインを除く) | 0.2 mg/kg | 0.1 mg/kg | 最大基準値の採択(2019年7月)後に収穫されたブドウを原料とするものに適用。 |
酒精強化ワイン/リキュールワイン | − | 0.15 mg/kg |
(参考)General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed (CXS 193-1995) (英文)
(※)第42回コーデックス総会(令和元年(2019年)7月開催)において、ワイン中の鉛の最大基準値が改正されました。
コーデックス委員会における国際的な議論を踏まえ、国税庁では、独立行政法人酒類総合研究所と連携して、酒類に含まれる鉛の実態調査を実施しました。実態調査では、コーデックスにおけるワインの鉛の基準値0.1 mg/kgよりも低い水準のものが大部分でした。
なお、平均値と比較して相対的に鉛濃度が高いとされた酒類については、当該酒類の製造者に対して、酒類中の鉛濃度を低減するためのフォローアップを実施しました。
品目※ | 調査点数 | 平均値(mg/L) | 実施年度 |
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清酒 | 191 | 0.0055 | 令和元年 |
単式蒸留焼酎 | 203 | 0.0203 | 令和2年 |
単式蒸留焼酎 | 202 | 0.0121 | 令和3年 |
(※)今後の国際的な議論に備えるため、我が国特有の酒類である清酒及び単式蒸留焼酎を対象として調査を行いました。
コーデックス委員会では、食品中の鉛汚染の防止や低減のための実施規範を策定しています。酒類製造に際しては、以下の点に留意することで、酒類中の鉛濃度に影響を与える要因を減らすことができます。
工程 | 留意点等 |
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原材料 |
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製造 |
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貯蔵・出荷 |
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(参考)Code of Practice for the Prevention and Reduction of Lead Contamination in Foods (CXC 56-2004)(英文)