3.地租法の実施
第一次世界大戦(1914〜18)下の好景気は、首都東京を中心に、全国的な都市化を進展させました。そのためそれまでの地価では、課税の公平を保てないことが明らかとなってきました。
大正15年(1926)に成立した土地賃貸価格調査法では、地価に替えて、調査が比較的容易で、かつ全国的に均衡が得られ、課税の公平が得られると期待される、賃貸価格を採用することに決めました。
土地賃貸価格調査は大正15年4月から始め、税務当局の主導のもと、模範調査、標準賃貸価格の調査、土地賃貸価格調査委員会の審議などを経て、昭和2年(1927)12月に、完了しました。
賃貸価格は、東京や大阪などの大都市を筆頭に、都市の宅地が高く評価された反面、農村の田畑などはあまり変わりがありませんでした。
昭和6年に地租法が成立し、賃貸価格の採用、10年ごとの土地賃貸価格見直し、予定税率4.5パーセントを3.8パーセントに減税(昭和恐慌の農村直撃を考慮)、などを実行に移しました。これら一連の土地改革は、昭和の地租改正といわれています。
忍税務署管内の土地賃貸価格調査記念碑
(現 行田税務署)
昭和3年(1928)
土地賃貸価格調査という国家的事業を永く後世に伝えるための記念碑で、埼玉県の忍税務署管内の土地賃貸価格調査委員47名が建立しました。
福島町の土地賃貸価格調査図
(現 長野県木曽郡木曽福島町)
昭和2年(1927)頃
福島町の土地賃貸価格調査図です。
土地賃貸価格調査図は、標準賃貸価格の区域と、区域の等級を明らかにするため作成しました。調査図はすべて2通作成し、1通は税務署、いま1通は賃貸価格調査委員会の調査で使いました。
木更津税務署の土地賃貸価格調査記念メダル 昭和2年(1927)
(現 千葉県木更津市)
木更津税務署が土地賃貸価格調査を記念し、作成した銅メダル。
仙台税務監督局管内の嘱託員名簿
昭和3年(1928)
賃貸料、小作料、土地状況など参考資料収集のため、町村長の協力を得て、町村の大字に1名程度、市域では数名の嘱託員を任命しました。
仙台税務監督局管内(岩手・宮城・福島・青森・秋田・山形の6県)の嘱託員は総勢7928名で、事業終了後、全員に感謝状が贈呈されています。
慰労金給与状
昭和6年(1931)
土地賃貸価格による課税は、当初、昭和3年度から適用の予定でした。しかし、地租委譲問題などで中断し、昭和6年に、昭和恐慌で打撃を受けた農村への減税を織り込んだ地租法が成立し、実施に移されました。
昭和6年12月22日、土地賃貸価格調査に尽力した税務職員に対し、一斉に慰労金が給与されました。
仙台税務監督局管内の土地賃貸価格図
昭和6年(1931)
仙台税務監督局管内の土地賃貸価格図です。
仙台市の宅地1坪当り平均価格は、次のようでした。
(昭和6年) 地租法の実施 |
賃貸価格 | 1円56銭6厘 |
---|---|---|
(明治43年) 宅地地価修正の実施 |
地価 | 21銭4厘 |
(明治14年) 地租改正の実施 |
地価 | 21銭4毛 |
千葉税務署管内の土地賃貸価格調査委員会
昭和12年(1937)
(現 千葉県千葉市)
千葉税務所管内の郡部土地賃貸価格調査委員会です。委員は選挙で選ばれ、管内の土地賃貸価格を評決しました。
10年ごとに賃貸価格を改訂する規定にもとづき、第1回の土地賃貸価格改訂事業は、昭和11年から同13年にかけて、全局で行われました。