御挨拶

 税務大学校租税史料館は、租税に関する文書や図書など、歴史的な史料を収集・保存し、租税史料の研究や展示などを通じて広く一般に公開している歴史史料館です。
 租税史料館では、平成12年から毎年特別展示を企画しており、これまでの展示では江戸時代の税や年貢から税金へと租税制度が切り替わる様子などを紹介してまいりました。今回の特別展示は、明治・大正・昭和(戦前)にかけて土地税制の全国的税目として国の財政を支えてきた「地租」の歴史を紹介しています。
 今回の企画は、東北地方の地租関係史料群を中心に、宅地が密集する「町」と農地が広がる「村」を比較しながら、全国的な都市化の進展に伴い、地租の課税方法が変化していく様子を表現しています。
 地租は、地租改正が実施された明治6年(1873)には国の歳入の9割以上を占めていましたが、その後、酒(造)税や所得税など新たな税が創設され、税体系が変化していく中で、その割合は減少していきます。大正時代になると、地租は国の歳入の1割に満たなくなり、昭和22年(1947)には国の所掌を離れ、地方に移譲されます。
 今回の展示では、残念ながら農地や宅地の詳しい評価方法まで紹介することができませんでしたが、地租の課税標準としていた「地価」や「賃貸価格」の定め方は、現代における土地評価方法の歴史の一端といえます。今回のテーマについては、「税大論叢46号」に掲載している『近代都市史研究試論』(鈴木芳行著)の中でも取り上げておりますので、参考にしていただけると幸いに存じます。
 今後も租税史料館では、特別展示を通じて、所蔵史料を多数、紹介してまいりたいと思いますので、より一層のご支援とご協力をお願いいたします。

平成16年11月 税務大学校 租税史料館長
作田 隆史