出題のポイント

【第一問】−50点−

問1(30点)

 通算法人の確定申告に係る申告納付期限の延長制度及び地方税関係手続用電子情報処理組織による申告について基本的な理解を問う問題であり、主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 確定申告に係る申告納付期限の延長制度
    •  道府県知事は、災害その他やむを得ない理由により、期限までに申告納付ができないと認めるときは、条例により、当該期限を延長することができること。
    •  納税義務者である法人は、次に掲げる事由がある場合には、道府県知事の承認を受け、事由に応じた期間の申告納付期限を延長することができること。
    • ○ 災害その他やむを得ない理由により当該法人又は当該法人との間に通算完全支配関係がある通算法人の決算が確定しないとき 等
    • ○ 当該法人若しくは当該法人との間に通算完全支配関係がある通算法人の定款等の定めにより、又は特別の事情があることにより、各事業年度終了の日から2月以内に定時総会が招集されない常況にあると認められるとき 等
  2. (2) 地方税関係手続用電子情報処理組織による申告
    •  当該法人は、事業年度開始日の資本金の額が1億円超の法人であるため、特定法人に該当し、事業税の申告については、地方税関係手続用電子情報処理組織(以下「組織」という。)を使用し、行わなければならないこと。
    •  電気通信回線の故障、災害その他の理由により組織を使用することが困難であると認められる場合において、道府県知事の承認を受けたときは、組織を使用しないで納税申告書等を提出することができること。

問2(20点)

 2以上の道府県及び国外において製造業を行う資本金1億円超の法人を例に、付加価値割に係る課税標準額の算定方法、2以上の道府県に納付する際の分割基準等について正しく理解しているかを問う問題であり、主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 課税標準の算定方法
  2. 付加価値割の課税標準である各事業年度の付加価値額は、各事業年度の報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料の合計額(以下「収益配分額」という。)と各事業年度の単年度損益との合計額によることとなるが、1労働者派遣の役務の提供を受けている場合、2雇用安定控除の適用を受ける場合、3国外においても事業を行う場合の取扱い等を踏まえて算定すること。

  3. (2) 分割基準に関する留意事項
  4. 分割法人は事業の区分に応じた分割基準により課税標準の総額を関係道府県ごとに分割し、その分割した額を課税標準として、関係道府県ごとに事業税額を算定することとされている。製造業の分割基準は、事業年度終了の日現在における事務所又は事業所の従業者の数によることとされているが、資本金1億円以上の法人の工場である事業所等及び事業年度の中途において新設した事業所等の従業者の数の取扱いを踏まえて算定すること。

【第二問】−50点−

問1(25点)

 小売電気事業を行う資本金1億円超の法人の事業税額の算定について正しく理解しているかを問う問題であり、主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 小売電気事業の課税方式
  2. 小売電気事業は地方税法第72条の2第1項第3号に掲げる事業に該当し、当該法人は資本金1億円超の法人であるため、収入割、付加価値割及び資本割の合算額により課税される。資料を基に1収入割について課税標準から控除すべきものを判定すること、2付加価値割について労働者派遣に係る報酬給与額を加算し、また雇用安定控除を適用すること、3資本割について法人税法で定める資本金等の額に無償増資の額を加算した上で、資本金の額及び資本準備金の額の合算額との比較を行い、課税標準を正しく計算すること等。

  3. (2) 分割基準及び分割課税標準額の算定方法
  4. 適切な分割基準を用い、資料を基に正しい分割基準の数値及び分割課税標準額を算出すること。

  5. (3) 税額の算定
  6. 各県の適切な税率を用い、各県の税額を算定すること。

問2(25点)

 個人の事業税額の算定について正しく理解しているかを問う問題であり、主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 課税客体の判定
  2. 個人事業税の課税客体となる事業は法令に定めがあり限定列挙されているが、資料を基に個人の行う各事業に係る課税客体の判定を正しく行うこと。例えば、駐車場業については、駐車台数等により事業性の判断が異なること、農業については、課税対象とならないこと。

  3. (2) 個人の事業税の課税標準の算定方法
  4. 個人の事業の所得は、原則として所得税の所得の計算の例によるが、その計算の例によらない事項を適切に処理すること。具体的には、事業主控除等である。
     本問の場合、事業者は、所得税法に規定する青色申告書を提出することにつき国の税務官署の承認を受けている事業者であること。

  5. (3) 2以上の道府県において行う事業に対する課税標準のあん分
  6. 個人事業税では、所得の総額を事務所又は事業所の従業者の数であん分して定めることとされており、資料を基に正しくあん分すること。

  7. (4) 税額の算定
  8. 各県の適切な税率を用い、各県の税額を正しく算定すること。