出題のポイント

【第一問】−25点−

 本問は、退職給付の簿記処理及び包括利益計算に関する一連の思考プロセスについて問うものであり、次の4つの論点を含んでいる。

  1. (1) 退職給付費用(勤務費用・利息費用・期待運用収益)の計算・処理(個別決算)
  2. (2) 過去勤務費用・数理計算上の差異の計算・処理(個別決算)
  3. (3) 税効果会計に関する計算・処理(個別決算)
  4. (4) 評価損益のその他の包括利益勘定への計上と組替調整(連結決算)
 (1)及び(3)について、将来の退職給付額をベースに割引計算及び増価計算を行い、当期分の退職給付費用を適切に計算し、また、それに伴う税効果会計を適用し、適切に記帳できるかどうかを問うものである。(2)について、退職給付制度の改訂及び退職給付制度を取り巻く環境が変化した場合に、退職給付に係る要素の計算及び簿記処理を適切にできるかどうかを問うものである。(4)について、制度上、その他の包括利益について求められているのは表示のみであるが、その他の包括利益勘定を損益勘定と同様に見立て、仕訳の形式で包括利益に係る連結決算を考えることができるかどうか、すなわち簿記処理の視点から考えることができるかどうか問うものである。

【第二問】−25点−

 税理士は、法人税法第22条第4項に関連して、法人税法の課税所得計算と企業会計の期間利益計算との関係を理解していることが求められる。そのためには、租税法規だけでなく、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従った計算に関する理解を深めておくことも重要である。ここで、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準の範囲は広範に及ぶと解されるが、企業会計基準委員会が公表した企業会計基準等はその一部を成すと考えられる。
 そこで、本問は、企業会計基準等で規定されている会計処理を前提として、その帳簿記入(仕訳帳及び総勘定元帳の記入)について適切な理解を有しているかを確認する観点から出題した。
 具体的には、問1においては、資産除去債務、セール・アンド・リースバック及び減価償却方法の変更についての企業会計基準等の会計処理とその帳簿記入を、問2においては、新株予約権及び自己新株予約権についての企業会計基準等の会計処理とその帳簿記入を問うこととした。

【第三問】−50点−

 本問は、決算整理前残高試算表から、問題文に示した決算整理事項等に基づき決算整理後残高試算表を作成する総合問題である。
 本問は、問題文に示された取引事実その他の情報を正確に理解し、必要となる決算整理仕訳を迅速に導き出す実務への応用力及び対応力を判定することを目的としている。
 具体的には、現金及び預金、一般商品売買、有形固定資産、貸倒引当金等といった実務上の頻出重要項目のほか、金融商品、税効果会計、外貨建取引、資本取引などの会計理論の基礎的な理解度及び仕訳を含む主要情報の整理総括並びに計算技術の達成度を問うている。