出題のポイント

【第一問】−50点−

問1(25点)

 本問の(1)は、個人住民税の課税の根幹となる「住所」の意義やその認定の方法についての理解度を問うものであり、その主なポイントは次のとおりである。

  •  市町村内に住所を有する個人は、均等割額及び所得割額の合算額により個人住民税が課税されることとなるが、ここでの「住所」とは、個人住民税の納税義務者自身の「生活の本拠」をいうこととされていること
  •  個人住民税の納税義務者は、原則として市町村の住民基本台帳に記録されている者をいうものとされているが、住民基本台帳に記録されていない者についても、その者が当該市町村内に住所を有すると認定された場合には、当該市町村は個人住民税を課することができること

 本問の(2)は、個人住民税の負担分任の性格を特に表している均等割及び所得割について、その趣旨、課税・徴収の方法及び税率等の概要についての基本的な理解を問うものであり、次のような点について、個人住民税と所得税の相違点を比較しつつ、個人住民税の性質を正確に説明することができるかがポイントとなる。

  •  個人住民税均等割及び所得割は、地方団体の住民が地域社会の会費をその能力に応じて広く負担することが趣旨であること
  •  個人住民税は原則翌年度課税であること(所得税は現年課税)
  •  個人住民税は賦課課税制度をとっていること(所得税は申告納税制度)
  •  個人住民税に係る徴収の方法は、普通徴収と特別徴収の2つの方法が存在すること(所得税は申告納税又は源泉徴収)
  •  税率については、個人住民税所得割は比例税率(市町村民税:6%、道府県民税: 4%(指定都市の場合は、市民税8%、道府県民税:2%))とされており、また、個人住民税均等割は一定額(市町村民税:3,000円、道府県民税:1,000円。令和5年度まで市町村民税:3,500円、道府県民税:1,500円)とされていること(所得税は累進課税方式)
  •  個人住民税独自の非課税制度が存在すること

問2(25点)

 本問は、個人住民税の申告手続について基礎的な論点及び所得税とは異なる個人住民税特有の論点を問うものであり、その主なポイントは次のとおりである。
 地方税法においては、個人住民税の申告手続について提出先・提出期限といった基本的な内容が定められており、原則として申告手続を行うことが求められているが、その例外として

  •  給与所得又は公的年金等に係る所得以外の所得を有しない者や所得割の納税義務を負わない者については、申告義務が免除されること
  •  所得税の確定申告書を提出した場合は個人住民税の申告書が提出されたものとみなし、確定申告書に記載された事項及び付記された事項は、個人住民税の申告書に記載されたものとみなすこと

といった規定が設けられている。
 また、個人住民税の申告書の提出が不要であり、年間5団体以内の総務大臣が指定する都道府県等に寄附金を支出した給与所得者等が、当該寄附金に係る寄附金税額控除額の控除を受けようとする場合には、当該寄附金を受領する都道府県知事等が住所の所在地の市町村長に対して寄附金税額控除に関する事項を記載した書面を送付することで、個人住民税の申告書の提出に代えることができる申告特例制度(いわゆる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」)が設けられている。

【第二問】−50点−

 地方税法における個人の住民税は、均等割、所得割、利子割、配当割及び株式等譲渡所得割が課されることとされている。このうち、所得割については、所得税法の所得計算等により算出した総所得金額等に、地方税法の所得控除、税額控除等を適用し、課税総所得金額及び所得割の税額を算出することとされている。
 本問は、個人の住民税について、所得税法の所得計算、地方税法の所得控除、税額控除等の計算、現年分として特別徴収されることとなる税額の計算等、個人の住民税の総合的な理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 給与所得、譲渡所得の計算
  2. (2) 退職所得の課税の特例の計算
  3. (3) 上場株式等の譲渡所得等と配当等の損益通算の計算
  4. (4) 住宅ローン控除、寄附金税額控除(一般、特例、申告特例)の計算
  5. (5) 基礎控除の適用判定 等