出題のポイント

【第一問】−65点−

問1(35点)

 本問は、国税徴収法及び国税通則法の基本的な理解を問う問題である。

  1. (1) 第二次納税義務の制度は、形式的には第三者に財産が帰属している場合であっても、実質的には、納税者にその財産が帰属していると認めても公平を失しないようなときにおいて、形式的な権利の帰属を否認して、私法秩序を乱すことを避けつつ、その形式的に権利が帰属している者に対して補充的に納税義務を負担させることにより、徴税手続の合理化を図るために認められている制度である。本問は、このうち、国税徴収法第37条の共同的な事業者の第二次納税義務に関する基本的な理解を問う問題である。
  2. (2) 国税通則法第105条は、不服申立てと国税の徴収との関係について規定している。国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立てを行った納税者が、国税の徴収との関係で、どのような保護を受け得るのか、また、どのような権利を行使することができるのかについての理解を問う問題である。
  3. (3) 昨今、新型コロナウイルス感染症による影響のほか、様々な事情によって納税者が納税に関する猶予制度の適用を受けることも少なくないと思われる。
     本問は、国税通則法に規定される納税の猶予を受けた納税者が、その猶予を取り消されることになる場合(同法第49条に規定される納税の猶予の取消事由)及びこの場合の弁明聴取手続についての理解を問う問題である。

問2(15点)

 国税徴収法第171条第1項においては、1督促、2不動産等についての差押え、3不動産等についての公売公告から売却決定までの処分、4換価代金等の配当の各処分について、それぞれ、不服申立期限の特例が設けられている。
 滞納処分間では、先行処分の瑕疵が後行処分に承継されるため、先行処分の瑕疵を理由として不服申立てがされる場合、滞納処分手続の安定が阻害されることになりかねない。
 本問は、このような、滞納処分に関する違法性の承継について理解しているかを問うとともに、先行処分の瑕疵を理由としてする不服申立てを制限することにより、滞納処分手続の安定を図り、かつ、換価手続により権利を取得し、又は利益を受けた者の保護を図る趣旨で、不服申立期限の特例が設けられていることを理解しているかがポイントとなる。

問3(15点)

 国税の徴収権の消滅時効の完成は、納税者の権利・利益に重大な影響を及ぼす事項であり、国税通則法第73条第1項各号にその完成猶予及び更新事由が、同条第4項に猶予期間中の不進行が、それぞれ規定されている。
 また、同法第72条第3項においては、「国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する」旨が規定されている。
 本問は、国税の徴収権の消滅時効に関する国税通則法上の規定に関する基本的な理解を問うほか、1換価の猶予の申請が民法第152条第1項の「承認」に該当することを理解しているか、2時効の完成猶予、更新及び不進行の意味を正確に理解しているかを問う問題である。

【第二問】−35点−

問1(20点)

 本問は、国税徴収法第24条に規定される譲渡担保権者の物的納税責任について、正しく理解しているかを問う問題である。
 譲渡担保財産から担保権設定者の国税を徴収するための一般的な要件は、

  1. (1) 納税者が譲渡した財産で、その譲渡により担保の目的となっているものがあること
  2. (2) 納税者の財産につき、滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認め られること
  3. (3) その譲渡担保権の設定が、国税の法定納期限等後にされたものであること である。

 設例においては、X税務署長が譲渡担保財産に対して滞納処分を執行する時点では、譲渡担保財産は既に譲渡担保権者に確定的に譲渡されていることから、上記(1)の要件を満たすかが問題となるが、国税徴収法第24条第7項は、譲渡担保権者に告知をした後に、譲渡担保の被担保債権が債務不履行その他弁済以外の理由により消滅した場合においても、なお譲渡担保財産として存続するものとみなす旨が規定されているため、同項の規定を正しく理解しているかが本問のポイントとなる。

問2(15点)

 本問は、譲渡担保設定者の国税と譲渡担保権者の国税が競合する場合の優先関係について理解しているかを問う問題である。
 差押先着手及び交付要求先着手主義の理解に加え、譲渡担保財産から徴収する国税及び地方税の調整の特例の規定(国税徴収法施行令第9条)により、譲渡担保設定者の国税が優先することを理解しているかが本問のポイントとなる。