問1(30点)
上場株式の配当の課税方法については、総合課税、
申告分離課税、
申告不要を選択することができ、また、選択した課税方法により適用される制度が異なる。
金融資産を保有する個人にとって、どのような課税方法を選択、適用すべきかは重要な事項であり、税理士に助言を求める場面も多い。
個々人の金融資産の保有状況等を踏まえた的確な判断をするためには、選択できる課税方法とそれぞれの特徴を正しく理解することが、税理士の実務においても重要となる。
本問は、金融資産の代表例とも言える上場株式の配当に焦点を当て、配当を受領した場合の基本的な課税関係を問う問題であり、主なポイントは次のとおりである。
問2(20点)
災害により所有する資産に被害があった場合、被災者の税負担の軽減を図るため、所得金額等から一定の損失金額が減額される。
その損失金額については、被災した資産の種類や用途によって所得税法上の取扱いが異なるため、その適用関係について正確に理解し、適切な課税標準、税額等を計算することは、税理士にとって必要不可欠である。
本問は、災害関連税制の適用場面が増加傾向にある中、居住者が所有する不動産に被害があった場合の取扱いについて、実務においても基本的かつ重要な点を理解しているか確認するため、
について説明を求めるとともに、それぞれの損失金額の計算方法についての基礎的な理解を問う問題である。
IT業界をはじめとして様々な業種において、自己の専門性を活かして独立開業や仲間と共に会社を興してチャレンジする人が増加してきている。
そこで、本問は、 企業の創業に関わった個人が、当該企業を退職し、自ら個人事業主としての独立開業を経て、法人成りした場合の所得計算の理解を問う問題とした。
また、最近では、インターネット等を活用して、積極的に海外市場へ進出するケースも増加しており、海外転勤、帰国等があった場合の所得計算及び所得控除の範囲等の基本的な理解も、今後の税理士業務として重要となってきていることから、これらの理解を問う問題も含めている。
具体的には、以下の事項についての理解を問うこととしている。
個人の場合、法人と異なり、就職、結婚、住宅の取得、海外転勤、退職、独立開業、相続などの様々なライフイベントがあり、所得税法においては、そのライフイベントごとに所得区分や所得計算等が異なることが多く、おのずと税理士が納税者から助言を求められる場面も多い。予期せぬ災害等の場面でも同様である。
税理士が納税者に対して的確な助言を行うためには、各種所得の金額の計算、所得控除額の計算、税額計算等の基礎的な項目の学習をしっかり行った上で、ライフイベントごとの論点を整理しておくことが重要であり、本問もその理解を問う問題としている。