出題のポイント

【第一問】

問1

 本問は、個人の住民税(市町村民税・道府県民税)における住宅借入金等特別税額控除についての理解を問う問題であり、主なポイントは以下のとおりである。

  1. (1) 平成19年にいわゆる三位一体の改革により所得税から個人の住民税に3兆円規模の税源移譲が行われた際、中低所得者層の所得税額が減少し住宅ローン控除可能額を所得税から控除しきれなくなる問題に対応するため、個人の住民税においても税源移譲による所得税の減少額の範囲内において、その減収は地方特例交付金又は復興特別交付税により全額国費で補塡することを前提に、国策により控除を行うこととなったこと。
  2. (2) 前年分の所得税について住宅借入金等特別税額控除の適用があった場合において、所得税の額から引き切れなかった税額を、個人の住民税の所得割の額から控除(控除限度額及び消費税の引上げを踏まえた拡充措置あり)すること。
  3. (3) 所得税における住宅借入金等特別税額控除の適用期限が4年間延長されたのと同様に、個人の住民税における住宅借入金等特別税額控除についても、令和4年度税制改正において延長されたこと。

問2

 本問は、個人の住民税における金融所得に係る課税方式等についての理解を問う問題であり、主なポイントは以下のとおりである。

  1. (1) 特定配当等に係る課税方式については、申告不要(配当割)、申告分離課税及び申告総合課税が選択可能であり、特定株式等譲渡所得等に係る課税方式については、申告不要(株式等譲渡所得割)及び申告分離課税が選択可能であること。
  2. (2) 上場株式等に係る譲渡損失の金額については、申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算をすることが可能であり、また、前年前3年内の各年に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額については、上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配当所得等の金額から控除することが可能であること。
  3. (3) (1)については、現行制度では、所得税と個人の住民税において異なる課税方式を選択することが可能となっているが、令和4年度税制改正により、令和6年度分以降の個人の住民税については、個人の住民税の課税方式は所得税の課税方式と一致することとされており、また、(2)については、現行制度においては住民税申告書の提出により適用可能とされているが、令和4年度税制改正により、令和6年度以降は、確定申告書の提出によってのみ適用可能とされたこと。

【第二問】

 地方税法における個人の住民税は、均等割、所得割、利子割、配当割及び株式等譲渡所得割が課されることとされている。このうち、所得割については、所得税法の所得計算等により算出した総所得金額等に、地方税法の所得控除、税額控除等を適用し、課税総所得金額及び所得割の税額を算出することとされている。
 本問は、個人の住民税について、所得税法の所得計算、地方税法の所得控除、税額控除等の計算、現年分として特別徴収されることとなる税額の計算等、個人の住民税の総合的な理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 退職所得の課税の特例の計算
  2. (2) 譲渡所得の計算
  3. (3) 公的年金等にかかる雑所得の計算
  4. (4) 青色事業専従者給与の必要経費の適用判定
  5. (5) 居住用財産の譲渡にかかる特別控除の計算
  6. (6) 寄附金税額控除(一般、特例)の計算
  7. (7) 基礎控除の適用判定