出題のポイント

【第一問】

問1

 国税の滞納整理においては、滞納者が督促を受けた場合において、その督促を受けた国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、滞納者に係る国税につき差押えをすることができるとしている(国税徴収法第47条)。
 その一方で、例外的に、督促を要しない国税の差押えを行うことができる場合についても定めている。
 具体的には、次の場合である。

  1. (1) 繰上請求事由がある国税に係る繰上保全差押え(国税通則法第38条第3項)
  2. (2) 国税通則法第11章(犯則事件の調査及び処分)又は刑事訴訟法の適用を受けた国税に係る保全差押え(国税徴収法第159条第1項)
  3. (3) 繰上請求をした国税に係る差押え(国税徴収法第47条第1項第2号、国税通則法第38条第1項)

 本問は、督促を要しない国税の差押えを行うことができる場合についての正確な理解がポイントとなる。

問2

 滞納処分の停止は、滞納者について、一定の要件に該当する場合には、滞納処分の執行を停止する制度である。
 具体的には、1無財産の場合、2生活を著しく窮迫させる場合、3所在及び財産がともに不明の場合に該当する事実があると認めるときは、職権により滞納処分の執行を停止することができる(国税徴収法第153条第1項)。
 また、滞納処分の執行を停止した場合の効果については、滞納処分の執行を停止した場合には差押えが禁止されるほか、差し押さえた財産がある場合にはその差押えを解除しなければならないこと、滞納処分の執行を停止することにより国税の徴収権の消滅時効が完成する前に納税義務が消滅すること又は消滅させることができること、滞納処分の執行が停止されている期間に対応する部分の延滞税が免除されるといったものがある。
 本問は、滞納処分の執行を停止することができる要件及び停止した場合の効果についての正確な理解がポイントとなる。

【第二問】

 本問は、滞納整理における具体的な設例において、国税徴収法上の第二次納税義務による徴収方途及び徴収できる範囲について問う問題である。

  1. (1) 税理士法人等が国税を滞納した場合において、その滞納国税について会社財産をもって不足すると認められるときは、無限責任社員はその滞納国税を納付する義務を負う(無限責任社員が2人以上あるときは、その社員相互間で連帯してその責任を負う)こととされている(国税徴収法第33条)。
  2. (2) 法人が解散し、清算人がその法人の国税を納付しないで残余財産の分配等をしたことにより徴収不足となっているなど一定の要件に該当するときは、その清算人については分配等をした財産の価額を限度として、また、残余財産の分配等を受けた者はその受けた財産の価額を限度として、滞納に係る国税を納付する義務を負うこととされている(同法第34条)。
  3. (3) 滞納者がその財産を無償又は著しく低い価額の対価で譲渡することにより徴収不足となっているなど一定の要件に該当する場合は、その財産を譲り受けた者は、その無償譲渡により受けた利益を限度(譲り受けた者が特殊関係者でないときは現に存する利益の限度)で、その滞納に係る国税を納付する義務を負うこととされている(同法第39条)。

問1

 本問は、上記(1)の合名会社等の社員の第二次納税義務の制度の適用に関する問題であるところ、特に、新たに入社した社員及び退社した社員の責任についての正確な理解がポイントとなる。

問2

 本問は、上記(2)の清算人等の第二次納税義務及び上記(3)の無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の制度の適用に関する問題であるところ、特に、清算人等の第二次納税義務が適用できない場合でも、無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の制度の適用ができることについての正確な理解がポイントとなる。

問3

 本問は、上記(3)の無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の制度の適用に関する問題であるところ、特に、求償債権の放棄に関して同制度の適用ができることについての正確な理解がポイントとなる。