出題のポイント

【第一問】

問1

 酒税は、その納税義務の発生を、原則として酒類がその製造場から移出されたとき又は保税地域から引き取られるときとしており、移出又は引取課税の建前をとっている。なぜなら、酒類が製造場から移出されたとき又は保税地域から引き取られるときは、酒類が既に消費の段階に入り、酒税の転嫁が可能な状態に到達したと推測されるからである。
 しかし、たとえ製造場から移出された又は保税地域から引き取られた酒類であっても、1当該酒類が他の酒類の原料として使用される場合、2外国へ輸出される目的で一定期間蔵置場に蔵置されるような場合がある。また、3自己の他の製造場又は蔵置場に蔵置のために移出する等、当該酒類が直ちに流通過程に入らない場合もある。これらの場合に、原則に従って直ちに課税原因を発生させることは、1の場合は二重課税の問題が生じ、2の場合は、究極的に免除すべき趣旨に反し、3の場合は、酒税の転嫁が行われる前に課税することとなり、消費課税の本旨にそぐわないこととなる。
 したがって、このように、まだ消費のための流通過程に入らない中間の段階において酒税を課すことは望ましくないので、移出又は引取課税の原則に対する例外として、酒類を法定の手続に従ってその製造場から移出したとき又は保税地域から引き取るときは、その移出又は引取に係る酒類に対する酒税を免除する規定を設けている。
 本問は、このような酒税を免除する特例のうち、未納税移出制度の趣旨を正しく理解しているかについて問う問題である。

問2

 未納税移出の手続については、1事後申告制度と2事前承認制度とに分けられている。酒税法は、納税手続について自主的な申告納税制度を採用しているので、未納税移出についても原則として自主的な事後申告制度を採ることとし、酒税の取締り及び保全上の見地から特に必要があると認められる場合には、未納税移出について許可的性格をもつ承認制度が採用されている。
 このうち、未納税移出の事実について、酒税法の規定による納税申告書に併せて申告することを条件として、自由に移出することができる未納税移出の制度を事後申告制度といい、移入先の酒類の製造場は他の酒類製造者の酒類の製造場又は蔵置場に移入するためのもののうち、当該他の酒類製造者が当該移入をした後その商標を表示して更に移出することが明らかなものについては、事後申告制度による未納税移出が認められている。
 この際、当該未納税移出をした酒類製造者が、当該移出をした日の属する月分の納税申告書(期限内に提出するものに限る。)に、その酒類が未納税移出を認められる酒類に該当すること及びその酒類が酒税法に定める場所に移入されたことについての明細を記載した書類(未納税移出酒類移入明細書)を添付しなければならない。
 また、移入者においては、移入の翌月末日までに当該酒類の移入の目的、税率の適用区分及び当該区分ごとの数量等を記載した書類(未納税移入申告書)を、当該移入した場所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。
 本問は、これらの手続について正しく理解しているかを問う問題である。

問3

 未納税移出の確定手続は、問2の手続によるのが原則であるが、継続的に酒類を移入する場合で、移出する酒類製造場の所在地の所轄税務署長の承認を受けた場合等特定の場合には、移出をした酒類製造者において、移出をした日の属する月分の納税申告書に所定の事項を記載し、かつ、その酒類が未納税移出を認められる酒類に該当すること及びその酒類が酒税法に定める場所に移入されたことについての明細を帳簿で明らかにしているときは、特例として、問2の手続を要せずに未納税移出の規定が適用され、当該申告書の提出によって免除が確定する。
 本問は、この特例を受けるための手続について、正しく理解しているかを問う問題である。

問4

 原料用とするための酒類についても、上記@事後申告制度として、問2の手続により未納税移出の適用を受けることが可能であるが、やむを得ない事情があるために、上記の「未納税移出酒類移入明細書」を納税申告書に添付することができないが、当該申告書の提出期限から3月以内に提出が予定されるときは、そのことにつき、その申告書の提出先の税務署長に届出を行い当該予定日までに、また、当該申告書の提出期限から3月を経過した日以後に提出が予定されている場合で、その申告書の提出先の税務署長の承認を受けたときは、税務署長の指定した期限までに、それぞれの書類を提出すればよいこととされている。
 本問は、問題文から状況を把握し、上記の宥恕規定を受けるための適切な手続について正しく理解しているかを問う問題である。

【第二問】

 本問は酒税法の総合的な理解を問うため、事例を基に製造場から移出した酒類について、酒類の品目及びその判定理由並びにその酒類の課税標準数量に対する酒税額、控除を受けようとする酒税額、納付すべき酒税額までの算出を求める問題である。
 主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 製法や性状等による酒類の分類
  2. 酒税法では、酒類の製法や性状等に着目して4つの種類に分類し、さらに17の品目に区分している。従量課税制度を採用している酒税制度においては、個々の酒類に対して、担税力に応じた負担を求めるため、酒類の製法等による種類・品目の分類により異なる税率が設けられている。

  3. (2) 各品目の税率の計算方法
  4. (1)の分類に従い同一の種類に属する酒類には、原則として同一の基本税率を適用することとなっている。各種類に分類される各品目の酒類のうち一定のものについては基本税率と異なる税率が適用されるため、各品目の税率の計算方法を理解していることが必要となる。

  5. (3) 酒税の課税標準の規定や免税の規定
  6. 酒税の課税標準は酒類の製造場から移出し、又は保税地域から引き取る酒類の数量とされている。本問の課税標準の確定に当たっては、輸出する目的で酒類をその製造場から移出する場合の輸出免税の取扱いや、酒類等がその製造場において飲用されたときには、移出の事実がなくても酒類の移出があったとみなす例外規定を理解していることが必要となる。

  7. (4) 租税特別措置法に定める酒税の税率の特例の規定
  8. 一定の政策的配慮から、租税特別措置法により税率の軽減措置が定められており、酒税額の算出には、その適用される要件や数量の計算方法を理解していることが必要となる。

  9. (5) 戻入控除等の適用要件及び控除額の計算方法
  10. 課税移出され、又は保税地域から引き取られた酒類が酒類製造場に戻入れ又は移入される場合がある。戻入れされた酒類については、移出がなかったと同じ状態に戻るため、戻入れがあった日の属する月以後に提出期限の到来する納税申告書(期限内申告に限る。)に記載された酒税額からその酒類に対する酒税を控除することとなる。
     また、移入酒類についてはその酒類が製造方法申告書に従って酒類の原料として使用された場合、新たな酒類として再び課税されることとなるので、二重課税を避ける意味で、移入された酒類を酒類の原料として使用した際に、その日の属する月の翌月以後に提出期限の到来する納税申告書(期限内申告に限る。)に記載された酒税額からその酒類に対する酒税を控除することとなる。

 酒税額の算出に当たってはこれらの規定を正しく理解し、実際の事例に当てはめて計算できることが必要であり、実務においても重要であることから、その理解度を問う問題である。