出題のポイント

【第一問】

 本問は、法人税法における基本的な事項の中から、受取配当等の益金不算入に関する事項及び会社清算に関する事項を取り上げて、それぞれの事項に係る課税上の取扱い等について、正しく理解しているかを問う問題である。

問1

 本問は、法人が受け取る配当等について、その支払いを行う法人の属性及び株主等である法人との関係性等に伴う課税上の違いについての正しい理解を問う問題である。
 内国法人が他の内国法人から配当等の額を受ける場合には、その配当等の額(完全子法人株式等、関連法人株式等及び非支配目的株式等のいずれにも該当しない株式等に係る配当等の額にあってはその配当等の額の50%相当額とし、非支配目的株式等に係る配当等の額にあってはその配当等の額の20%相当額)は、各事業年度の益金の額に算入しないこととされている。ただし、この制度は短期保有株式等に係る配当等の額及び自己株式の取得が予定されている株式等に係る配当等の額でその予定されていた事由に基因するものについては適用しないこととされている。
 また、関連法人株式等に係る配当等の額から控除する利子の額は、令和2年度税制改正において、その配当等の額又は支払利子等の額に基づき概算的に算定することとされている。
 次に、内国法人が外国子会社から配当等の額を受ける場合には、その配当等の額からその配当等の額の5%相当額を控除した金額は、各事業年度の益金の額に算入しないこととされている。この制度の対象となる外国子会社は、内国法人がその発行済株式等の25%以上を配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き有している外国法人等に限られるが、令和2年度税制改正において、その外国子会社及び受ける配当等の額がそれぞれ一定の要件に該当する場合には、内国法人が有するその外国子会社の株式の帳簿価額から、その配当等の額につき益金不算入とされた金額相当額を減額することとされている。
 こうした近年の改正事項について関心を向けつつ、一定の差異に基づく誤りやすい事項に適切に法令を適用するためには、制度の内容を正しく理解していることが必要であり、本問は、その内容を問う問題である。

問2

 本問は、法人の解散及び清算中に適用される法人税の規定についての正しい理解を問う問題である。
 法人が解散をした場合には、解散の日前1年以内に終了した事業年度又は解散の日の属する事業年度のいずれかの事業年度に欠損金があるときは繰戻還付が認められるが、この場合の還付請求書の提出期限は解散の日から1年以内とされている。
 また、清算中の事業年度について会社法の規定による解散の場合には、残余財産の確定の日までの間は、解散の日の翌日から1年ごとの期間が清算中の事業年度となり、残余財産が確定する日の属する事業年度の確定申告書の提出期限はその確定した日の翌日から1月以内となり、期限延長の特例の適用はない。
 さらに、一定の完全支配関係にある子会社の残余財産が確定した場合において未処理欠損金額がある場合には、その株主等である法人に未処理欠損金額の引継ぎが行われる一方で、その子会社株式の譲渡損益は計上されないこととなるのであるが、本問は、これらの取扱いについて問う問題である。

【第二問】

 本問は、同族会社である中小法人における法人税法上の取扱いについて、その事業年度の中途において、その定款等に定める会計期間を変更したことによる影響を考慮した上で、所得金額の計算から納付すべき法人税額を算出するまでの過程について、その理解を問う問題である。

  1. (1) 租税公課・納税充当金に関する事項
  2. 法人税法における租税公課に関する取扱いは、基本的事項であり、非常に重要である。
     本問は、租税公課・納税充当金に関する当期の会計処理から、税務上調整すべき金額を正しく把握することを求めている。また、前期の確定申告について修正申告を行った場合において、当期に当該修正申告に係る会計処理を行う場合の税務上の処理について、正確な理解を問う問題である。

  3. (2) 外貨建資産等・外国税額控除に関する事項
  4. 我が国の企業が国外の企業と商取引を行うことは珍しくない状況となっている。
     本問は、外貨建資産等の期末換算についての理解を問う問題であり、特に、先物外国為替契約等による決済が行われた場合に為替予約差額の配分を行うこと、また、国外源泉所得がある場合に、国外にて源泉徴収された外国法人税に対して外国税額控除を適用することについて、その理解を問う問題である。

  5. (3) 役員給与に関する事項
  6. 役員給与は、特に中小法人が稼得した利益を社外流出させる手段として非常に重要であることから、法人税法においては、様々な取扱いが規定されている。
     本問は、使用人兼務役員の判定、定期同額給与及び事前確定届出給与について、実務においても税理士として指導・助言をする機会が多いと考えられる事項について問う問題である。特に、役員に対して経済的利益が供与された場合の定期同額給与の範囲及び事前確定届出給与の取扱いについて、正確な知識とその理解を問う問題である。

  7. (4) 減価償却に関する事項
  8. 法人が事業年度を変更した場合には、減価償却費の償却限度額の計算において減価償却資産の償却率を改定する必要があり、また、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を適用する際の損金算入限度額の計算において当該事業年度の月数を反映させる必要があるなど、特に留意が必要である。
     本問は、中小法人が事業年度を変更した場合の改定償却率の算出方法及び償却限度額の月割計算についての正確な理解を問う問題であり、また、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用について、納税者が最も有利となる方法を取るために適用対象とする減価償却資産の選定における注意力も問うている。

  9. (5) 暗号資産に関する事項
  10. 暗号資産は、短期売買商品等に該当するものでありながら、決済手段にもなり得るものである。中小法人においても暗号資産の保有が珍しいものではなくなっていることから、法人税法における暗号資産の取扱いは、税理士業務においても必須の知識となりつつある。
     本問は、暗号資産を決済・交換した場合には、当該暗号資産の譲渡損益の計上が必要であることについての正確な理解を問う問題であり、また、市場暗号資産の期末時価評価について、その知識も問うている。

  11. (6) 寄附金に関する事項
  12. 寄附金の損金算入限度額の計算においては、当該事業年度の月数をその計算に反映させなければならない。
     本問は、法人が支出した寄附金の区分についての正確な理解を求め、事業年度の変更があったことによる影響を理解した上で、その計算を行うことを問う問題である。

  13. (7) 所得の金額の計算に関する明細書及び各事業年度の所得に係る申告書に関する事項
  14. 法人税法においては、当期の確定した決算に基づく当期利益又は当期欠損の額から所得金額を計算するに当たり、税務調整項目の金額のみならず、その留保・社外流出の別が非常に重要となる。それは、法人において生じた税務調整項目について、翌期以降での取戻しによる税務調整の有無に関わるからである。したがって、税理士は実務において、常に税務調整項目の留保・社外流出の別に留意する必要がある。
     本問は、算出した税務調整項目について、留保・社外流出の別の正確な理解を問う問題であり、また、資本金1億円以下の普通法人については、各事業年度の所得に対する法人税の軽減税率の適用があることから、事業年度が1年でない場合の法人税額の計算についての正確な理解も問うている。