出題のポイント

【第一問】

問1

 所得税法上、個人の納税義務者は、法施行地(日本国内)における住所又は居所の有無等に基づいて、1居住者(非永住者以外の居住者)、2居住者(非永住者)又は3非居住者に区分されており、その区分に応じて課税所得の範囲や課税方法等を規定している。
 個々人の社会的・経済的な結びつきが国を超えてますます深まり、それに伴い居住形態や収入形態が多種多様となる中で、非永住者や非居住者の申告等が法令にのっとり的確に行われることは大変重要であり、税理士としてその申告等に関する見解や判断を問われる場面は多いと思われる。
 本問は、納税義務者の区分等を判断する際のよりどころとなる規定について、基本的かつ重要な点を明瞭に理解しているか確認するため、

  1. 1 納税者は、住所の有無等により、非永住者以外の居住者、非永住者である居住者又は非居住者に区分されること
  2. 2 その区分に応じて、課税所得の範囲が定められていること
  3. を問いつつ、非居住者にスポットを当て、

  4. 3 非居住者が取得する国内不動産の賃貸料は、賃借人により所得税等が源泉徴収された上で総合課税の対象となること
  5. 4 非居住者が適用できる所得控除は、雑損控除、寄附金控除及び基礎控除のみであること
  6. について説明を求めるものである。

問2

 事業所得等の金額の計算上生じた損失の金額について、損益通算をしても控除しきれない金額がある場合、すなわち「純損失の金額」が生じた場合には、一定の要件の下で「純損失の繰越控除」及び「純損失の繰戻しによる還付の請求」が可能となる。
 近年において、災害を含む各種要因による経営環境の変化は目まぐるしく、各年の所得額に大きな変動が生じることが稀有とは言えない中、純損失が生じた納税者が、各年の所得額の変動を平均化し税負担の抑制を図ることは当然のことであり、税理士はそのような納税者の求めに応じて、個々の制度を的確に選択し適用する必要がある。
 純損失が生じた場合、まずは繰越控除の適用が検討されるとも考えられるが、事業を廃止した場合を含め、個々の納税者の状況を踏まえれば、「純損失の繰戻しによる還付の請求」を選択すべき場面も少なくないと考えられる。
 本問は、純損失の繰戻しによる還付の請求に焦点を当て、純損失が生じた場合には、その金額を前年に繰り戻すことにより還付請求ができること並びにその場合の適用要件、計算方法及び手続を問いつつ、事業を廃止した場合には、廃止した年の前年に生じた純損失の金額を、廃止した年の前々年に繰り戻すことにより還付請求ができることなどについても理解しているかを問う問題である。

【第二問】

 所得税法では、所得を10 種類に分類し、これらの各種所得ごとにその所得金額を計算し、課税標準である総所得金額等を計算する。そして、課税標準から所得控除額を控除して課税総所得金額等を計算し、その課税総所得金額等に対する税額を計算する。
 本問は、相続した賃貸不動産及びいわゆる等価交換による店舗併用住宅の譲渡事例を通じて、不動産所得及び譲渡所得を中心に、一連の計算過程の理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 不動産所得及び事業所得の収入金額の範囲並びに計上時期
  2. (2) 不動産所得及び事業所得の必要経費の範囲
  3. (3) 資産の損失額の計算
  4. (4) 減価償却資産の償却計算
  5. (5) 店舗併用住宅の譲渡所得の計算及び特例の有利不利判定
  6. (6) 所得控除額の計算
  7. (7) 金融所得の課税関係
  8. (8) 外国税額控除