出題のポイント

〔第一問〕

問1

 国税徴収法第79条は、差押えを解除しなければならない場合及び差押えを解除することができる場合の要件を規定したものであるところ、その効果については、差押えによる処分禁止の効力を将来に向かってのみ失わせるものである。
 本問は、国税徴収手続において差し押さえた財産につき、「差押えを解除することができる場合」を問うものであり、「差押えを解除しなければならない場合」との違いについての正確な理解がポイントとなる。

問2

  1. (1) 税務署長は、不動産等のうち、
    1. 1 不動産以外の財産を換価に付するときは、公売期日等から起算して7日を経過した日
    2. 2 不動産を換価に付するときは、公売期日等から起算して、7日を経過した日から21日を経過した日までの期間内で、税務署長等が指定する日

    において最高価申込者に対して売却決定を行うこととされている(徴法1131、徴規1の6)。

    不動産等については、売却決定に伴う影響が動産等に比して一層大きく、かつ、その買受人の保護規定もないため、これに代わる売却決定の安定化の一環として、更に、不動産については、不動産公売における暴力団員等の買受け防止措置を講じるため、上記規定が設けられている。
     本問は、不動産等の売却決定手続についての理解がポイントとなる。

  2. (2) 公売した財産に係る売却決定を行った場合であっても、一定の事由が生じたときには、その売却決定が取り消される場合がある。
     具体的には、次の事由が生じた場合である。
    1. 1 徴収上、違法又は不当な処分があった場合
    2. 2 最高価申込者等が入札等を取り消した場合(徴法114)
    3. 3 買受人が買受代金を期限までに納付しない場合(徴法115)
    4. 4 買受代金納付前に換価財産に係る国税が完納した場合(徴法117)
    5. 5 公売実施の適正化のための措置(徴法108)

    本問は、換価した財産に係る売却決定が取り消される場合についての正確な理解がポイントとなる。

〔第二問〕

 本問は、滞納整理における具体的な設例において、1参加差押えをした税務署長による換価執行に関する手続等及び2差押不動産の換価代金の配当額の計算を問う総合問題である。

問1

 本問は、参加差押えをした税務署長による換価執行については、差押機関に対する換価の催告(徴法89の21)、差押機関の同意(徴法89の22)、換価執行決定の告知(徴法89の23)、換価執行決定をした場合の通知(徴法89の24)及び換価に必要となる書類の引渡し(徴令42の21)等についての正確な理解がポイントとなる。

問2

 国税は、滞納者の総財産について、原則として全ての公課その他の債権に先立って徴収する(徴法8)が、国税の法定納期限等以前に質権又は抵当権が設定されているときは、その国税は、換価代金につき、その質権又は抵当権に担保される債権に次いで徴収するとされている(徴法15、16)。また、国税と地方税との優先関係は、差押えに係る国税又は地方税は交付要求に係る国税又は地方税に先立って徴収し(徴法12)、先にされた交付要求に係る国税又は地方税は後にされた交付要求に係る国税又は地方税に先立って徴収する(徴法13)が、担保国税は、その担保財産の換価代金につき、他の国税及び地方税に先立って徴収することとされている(徴法14)。
 本問は、差押不動産の換価代金の配当額を計算する問題であり、直接の滞納処分費の優先(徴法10)、国税及び地方税等と私債権との競合の調整(徴法26)等についての正確な理解がポイントとなる。