出題のポイント

〔第一問〕

問1

 収益に関する事項である法人税法第22条及び第22条の2についての問題である。
 資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、その資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとされている。そして、その益金の額に算入する金額は、別段の定めがあるものを除き、その販売若しくは譲渡した資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得べき対価の額に相当する金額とされている。
 また、無償による資産の譲受けなど、資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供以外の取引に係る収益の額については、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算することとされている。
 これらの規定を正しく理解した上で、具体的な事例に適切に当てはめられるかがポイントとなる。

問2

 寄附金の損金不算入に関する事項である法人税法第37条及び寄附金に該当しない場合の費用又は損失の処理に関する規定についての問題である。
 寄附金の額は、寄附金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与で、広告宣伝及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきものに該当しないものをした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとされている。そして、こうした定義に当てはまらず寄附金の額に該当しない場合においても、資産の提供に係る費用又は損失の額について、一般に公正妥当な会計処理の基準又は繰延資産のように別段の定めに従って損金の額を計算することとされている。
 また、法人との間に完全支配関係がある他の法人に対して寄附金の額を支出した場合については、その全額が損金の額に算入されないことや、当該法人の利益積立金額に一定の金額を加算し、同額を他の法人の株式の帳簿価額に加算することとされている。
 これらの規定を正しく理解した上で、具体的な事例に適切に当てはめられるかがポイントとなる。

〔第二問〕

問1

 中小法人に係る税理士の実務に頻出し、重要な判断を要する事項について、正確な理解を求める問題である。

  1. (1) 租税公課・納税充当金に関する事項
  2. 本問は、租税公課・納税充当金に関する当期中の経理処理から、税務上調整すべき金額を正しく把握することを求める問題である。具体的には、1納税充当金の処理、2利子税と延滞税・延滞金の違い、3その他損金不算入とされる租税公課の適正な理解がポイントとなる。

  3. (2) グループ法人税制に関する事項
  4. 企業グループを対象とした各種の法整備が行われるなか、法人税法においても様々な特別規定が置かれている。本問は、完全支配関係にある法人間の取引に対する特別規定についての理解を求める問題であり、具体的には1寄附金、2譲渡損益調整資産の譲渡が行われた場合及び譲受法人で譲渡損益調整資産の譲渡が行われた場合の税務調整、3別表五(一)への記載方法の正確な知識を問う問題である。

  5. (3) 貸倒引当金に関する事項
  6. 資本金1億円以下の中小法人等は、金銭債権の貸倒れによる損失の見込み額として貸倒引当金を繰り入れることができる。本問は、貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲、債権の内容ごとの繰入限度額の計算、一定の事由により債権の切捨てがあった場合の税務上の取扱いについての理解を求める問題であり、計算力がポイントとなる。

問2

 人手確保の問題や不測の事態等により、やむを得ず廃業手続に移行することも多く見られる昨今の情勢から、清算をめぐる法人税法上の取扱いについての知識の確認を行う問題である。

  1. (1) 期限切れ欠損金の取扱いに関する事項
  2. 本問は、残余財産が確定した事業年度中の会計処理について、その正確な把握及び理解とともに、清算手続の結果、残余財産がないと見込まれる場合の期限切れ欠損金の取扱いについて正確な知識を求める問題である。

  3. (2) 現物による残余財産の分配が行われる場合の取扱いに関する事項
  4. 本問は、残余財産が確定した後、現物による残余財産の分配という損益取引と資本等取引の両方の性格を持つ取引が行われる場合における所要の調整及びみなし配当の計算について正確な知識を問う問題であり、現物による残余財産の分配における法人税法特有の思考についての理解がポイントとなる。