出題のポイント

〔第一問〕

問1

 本問は、「青色申告特別控除」について、制度の理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 青色申告特別控除は、税務署長に青色申告の承認を受けている年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、次の区分に応じ、ぞれぞれ次の金額を控除することができる制度であること。
    1. 1 簡易な簿記で記帳している場合:10万円
    2. 2 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む者が正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳し、確定申告書に控除額に関する事項等の記載並びに損益計算書、貸借対照表及び事業所得等の計算に関する明細書の添付があり、確定申告書を確定申告期限内に提出した場合:55万円
    3. 3 上記2のうち、次のいずれかに該当する場合:65万円
      • 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律の承認を受け、同法の規定に基づき、帳簿書類に係る電磁的記録の備付け及び保存を行っている場合
      • 損益計算書、貸借対照表、事業所得等の計算に関する明細書及び確定申告書に記載すべき事項を確定申告期限内に情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律の規定により電子情報処理組織(e-Tax)を使用して送信した場合
  2. (2) 青色申告特別控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額の順に控除し、これらの金額が控除額よりも低い場合には、これらの金額が限度とされること。

問2

 本問は、「国又は地方公共団体から支給を受ける給付金等」について、その課税関係の理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 個人事業者が昨年よりも売上げが減少したことに伴い支給を受ける持続化給付金
  2. 事業の収益の補償として支給を受ける給付金は、事業所得の付随収入に該当することから、事業所得に区分されること。

  3. (2) 新型コロナウイルス感染症緊急経済対策として支給を受ける特別定額給付金
  4. 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律において非課税所得とされていること。

  5. (3) Go Toイベント事業により支給を受ける給付金
  6. Go Toイベント事業により支給を受ける給付金は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、譲渡所得、山林所得には当たらず、営利を目的とする継続的な行為から生ずる所得、継続的に発生する所得、資産の譲渡や役務の提供の対価としての性質を有する所得に当たらないことから、一時所得に区分されること。

  7. (4) ベビーシッターを利用した者が毎月支給を受ける助成金
  8. ベビーシッターを利用した者が毎月支給を受ける助成金は、所得税法において非課税所得とされていること。

  9. (5) 個人事業者が事業用の機械の購入費用に充てるために支給を受ける補助金
  10. 個人事業者が事業用の固定資産の購入費用に充てるために支給を受ける補助金は、事業所得の付随収入に該当することから、事業所得に区分されること。
     なお、国庫補助金等の総収入金額不算入を選択して、固定資産の取得価額から補助金の額を控除することにより、その年の事業所得の総収入金額に算入しないこともできること。

〔第二問〕

 所得税法では、所得を10種類に分類し、これらの各種所得ごとにその所得金額を計算し、課税標準である総所得金額等を計算する。そして、課税標準額から所得控除額を控除して課税総所得金額等を計算し、その総課税所得金額等に対する税額を計算する。問1は、この一連の計算過程の理解を問う問題であり、問2は、譲渡所得の所得金額計算の理解を問う問題である。

問1

 本問は、海外赴任時に海外で取得した中古不動産及び相続した不動産の賃貸事業並びに海外不動産及び相続空き家の譲渡に関する事例を通じて、不動産所得及び譲渡所得を中心に、一連の計算過程の理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 退職所得控除額の特例計算
  2. (2) 不動産所得の収入金額の対象範囲及び計上時期
  3. (3) 不動産所得の必要経費の範囲
  4. (4) 資産損失の計算
  5. (5) 減価償却資産の償却計算
  6. (6) 所得控除額の計算
  7. (7) 居住用財産の譲渡所得の特例
  8. (8) 相続空き家の譲渡所得の特例

問2

 本問は、民法改正によって新設された配偶者居住権等に関する所得税法上の課税関係の理解を問う問題であり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 配偶者居住権等の合意解除に伴い取得する対価の所得区分及び所得計算
  2. (2) 中古取得の不動産の土地と建物の取得対価の区分計算
  3. (3) 配偶者居住権等を取得した後に当該権利の目的である建物の増改築費用の取扱い
  4. (4) 配偶者居住権等を合意解除によって消滅させた後の譲渡に係る譲渡所得の計算方法