出題のポイント

〔第一問〕

問1

 本問は、帳簿組織に関する問題である。簿記は財務諸表作成のための主要簿だけでなく、日常的な経営管理のために不可欠な補助簿から構成されている。
 本問では、かつての特殊仕訳帳制で問われていた能力を、現代的視点から、補助簿、証ひょう等の情報から取引を推測し、複式簿記を復元できるか、帳簿、勘定間の連携を理解できているかを問うている。

問2

 本問は、今年度から適用される「収益認識に関する会計基準」に関する問題である。収益認識に関する会計基準で要求されている利息区分法と、固定資産の割賦購入において、帳簿上、債務を純額で計上する償却原価法を採用した場合の処理を理解しているかを問うている。
 割賦販売の処理については、簿記上の債権債務管理と財務諸表上の取扱いに対応するための評価勘定による処理を理解しているかについても問うている。

〔第二問〕

問1

 本問は、固定資産について自家建設・交換・購入で取得した場合に、その取得原価と減価償却の会計処理についての基本的な理解を問う問題である。

  1. (1)は、自家建設をした工場の取得原価の計算において、材料費・労務費・経費のほかに、借入金の利息について建設期間中の算入可能額を適切に計算できるかについて問うている。
  2. (2)は、複数の固定資産を対象に総合償却する場合の平均耐用年数を計算できるかについて問うている。
  3. (3)及び(4)は、同種同用途の固定資産を交換で取得した場合の会計処理、複数の固定資産を総合償却する場合の会計処理、及び総合償却をしている固定資産グループの一部を除却した場合の会計処理を問うている。

問2

 本問は、子会社株式の取得と、その後一部を売却した場合についての会計処理及び連結精算表上での処理についての基本的な理解を問う問題である。

  1. (1)は、資本連結手続上で認識した子会社の資産・負債の時価と簿価の差額は、「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」第21項によれば連結財務諸表固有の一時差異に該当するため、時価評価に伴う税効果を認識し、その金額を適切に計算できるかを問うている。
  2. (2)は、子会社と親会社の投資・資本相殺消去時の評価差額、のれん及び非支配株主持分の額を計算し、適切に仕訳ができるか、より正確には連結精算表上の処理を仕訳形式で示すことができるかを問うている。
  3. (3)は、子会社の株式の一部を売却した場合、親会社の帳簿上の処理において、売却原価を計算し、適切に仕訳ができるかを問うている。
  4. (4)は、子会社株式の一部売却後も支配が継続する場合の処理について、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の平成25年改正で変更となった売却持分と売却価額との間に生じた差額と、のれん未償却分の処理についての理解を問うている。
  5. (5)は、子会社の非支配株主への利益振替時の処理について、前後の貸借対照表より当該年度の利益剰余金額を適切に算出できるか、また、売却時のタイミングから適切な非支配株主の持分比率を識別して計算ができるかを問うている。

〔第三問〕

 本問は、決算整理前残高試算表から、問題文に示した決算整理事項等に基づき決算整理後残高試算表を作成する総合問題である。問題文に示された取引事実等を正確かつ迅速に理解し、あるべき会計処理を迅速に導き出す応用力を判定することを目的としている。
 個別的には、現金、当座預金における銀行勘定調整、商品、売掛金、買掛金、減価償却費及び貸倒引当金等といった実務における頻出重要項目のほか、金融商品、棚卸資産の評価、税効果会計、借入金、社債及び外貨建て取引等に係る会計基準を中心とした会計理論の基礎的な理解度及び簿記論における仕訳並びに計算技術の達成度を問うている。