出題のポイント

〔第一問〕

 本問は、法人税法における基本的な事項の中から、自己株式を取得する場合のみなし配当に関する事項及び内国法人における法人税の納税義務者及び課税標準に関する事項を取り上げて、それぞれの項目について、正しく理解されているかを問うものである。

問1

 論点は、法人税法第23条及び第24条の規定の正しい理解である。法人税法上、自己株式の取得は、金融商品取引所の開設する市場で購入するなどのケースを除き、みなし配当事由に該当することとなり、法人が自己株式を取得した場合には、法人税法施行令の規定に基づいて資本金等の額や利益積立金額を減算することになる。
 また、法人が株式を取引時の時価よりも著しく低い価額で売却した場合、法人税法第37条や第61条の2の規定がどのように適用されることとなるのか、これらの規定を正しく理解できているかがポイントとなる。

問2

 論点は、法人税法第4条、第5条及び第7条の規定の正しい理解である。
 法人税法では、普通法人は各事業年度の所得が課税対象とされるが、公益法人等や人格のない社団等は各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得のみが課税対象とされている。この収益事業の意義について正しく理解できているかがポイントとなる。
 また、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づく「一般社団法人」等に関しては、法人税法上の非営利型法人の要件を満たすものは公益法人等に該当し、要件を満たさないものは普通法人に該当することとされ、同じ法律を根拠とする法人格でありながら、法人税の課税所得の範囲が異なる制度となっている。
 さらに、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律に基づく「公益社団法人」等に関しては、公益目的事業として認定された事業については、法人税法上の収益事業から除かれることとされており、これらが正しく理解できているかがポイントとなる。

〔第二問〕

 本問は、他の税目と比較した場合における法人税の特徴に着目し、役員との取引、出資者との取引等の社外流出に関する事項についての正確な理解を問うものである。

問1

  1. 1.役員給与に関する事項
     法人税法は、法人の所得を恣意的に調整することを防止する観点から、役員給与の損金算入について一定の制限を行ってきたが、現行法人税法では第34条において損金不算入規定を設け、一定の場合に損金算入を認めるルールを設けている。本問は、その損金算入ルールの正確な理解、特に、事前確定届出給与における役員の職務執行期間の全期間を一個の単位として判定すべきこと等の理解を問うものである。
  2. 2.圧縮記帳に関する事項
     本問では、圧縮記帳の適用のある代替資産の範囲、圧縮限度額の計算についての理解がポイントとなる。
  3. 3.受取配当等に関する事項
     受取配当等の益金不算入制度は、株式の保有割合に応じて益金不算入割合が異なっている。本問は、このような受取配当等に係る法人税の課税ルールについて、特に保有割合に応じた控除負債利子の計算や、益金不算入割合の違いの正確な理解を問うものである。
  4. 4.所得税額の控除に関する事項
     所得税額の控除の計算は、実務上接する機会が多い項目であり、細かく粘り強い計算力が求められる点が特徴である。具体的には、当該規定が元本所有期間に対応する部分の金額だけが税額控除の対象となること、原則的な計算方法と簡便的な計算方法について法人に選択が認められている点について、正確な理解を問うものである。

問2

 特定同族会社の特別税率(留保金課税)の規定は、社外流出を促す税制として、重要性の高い項目であると考えられる。具体的には、留保金課税の基本的な構造、留保所得金額の計算上、控除する法人税等や、留保控除額の正確な知識がポイントとなる。