出題のポイント

〔第一問〕

  1. 1 行政機関は、滞納者の財産について他の強制換価手続が開始された場合には、その強制換価を執行する執行機関に対して交付要求をしなければならない(徴法82)。
     また、他の強制換価手続が開始された場合において、交付要求をしたときであっても、当該強制換価手続が何等かの理由で解除されると、これについてされた交付要求も効力が失われる。このような場合には、その解除された強制換価手続に代わって交付要求をした国税が自らの強制換価手続として手続を続行することが望ましいところ、この問題を解決するものとして、国税及び地方税相互間等における二重差押えと同様な効力を生ずる交付要求として参加差押えの制度(徴法86)を設けている。
     本問は、先行の執行機関に対して後行の執行機関として行う、交付要求及び参加差押えの異同についての正確な理解がポイントとなる。
  2. 2 徴収職員が滞納処分を行うに当たっては、滞納者が差押対象財産を有しているか、その財産が価値、換価性等において差し押さえることが適当か、又は、その財産の権利関係やその差押えによる影響などを調査するため、種々の権限が与えられている。
     具体的には、徴収職員は、必要と認められる範囲内において、
    1. 1 滞納者等の特定の者に質問又は検査をすること(徴法141)、
    2. 2 滞納者等の特定の者の物又は住居その他の場所について捜索を行うこと(徴法142)、
    3. 3 捜索等をする場合において、支障があると認められるときは、これらの処分に関係を有する者以外の者は、その場所に出入りすることを禁止できること(徴法145)、
    4. 4 官公署等に対し、調査に関して参考となる帳簿書類等の閲覧又は提供その他の協力を求めること(徴法146の2)、
    ができる。
     本問は、徴収職員に認められている財産調査権限についての正確な理解がポイントとなる。

〔第二問〕

 法人が解散し、清算人がその法人の国税を納付しないで残余財産の分配等をしたことにより徴収不足となっているなど一定の要件に該当するときは、その清算人については分配等をした財産の価額を限度として、また、残余財産の分配等を受けた者はその受けた財産の価額を限度として、滞納に係る国税を納付する義務を負うこととされている(徴法34)。
 また、滞納者がその財産を無償又は著しく低い価額の対価で譲渡することにより徴収不足となっているなど一定の要件に該当する場合は、その財産を譲り受けた者は、その無償譲渡により受けた利益の額を限度(譲り受けた者が特殊関係者でないときは現に存する利益の限度)で、その滞納に係る国税を納付する義務を負うこととされている(徴法39)。
 さらに、滞納者が譲渡した財産でその譲渡により担保の目的となっているもの(以下「譲渡担保財産」といいます。)があるときにおいて、徴収不足となっているなどの一定の要件に該当するときに限り、譲渡担保財産から滞納者の国税を徴収することができる(徴法24)。
 本問は、設例における法人の解散に伴う一連の事実関係から、これらの制度を適用することができることを解答できるかがポイントである。