問1
相続時精算課税は、平成15年度税制改正において、高齢化の進展に伴い、相続による次世代への資産移転の時期が従来よりも大幅に遅れてきていること、高齢者の保有する資産の有効活用を通じて社会経済の活性化にも資するといった社会的要請などを踏まえ、将来において相続関係に入る特定の親子間の資産移転について、生前贈与と相続との間で、その時期の選択に対する課税の中立性を確保することにより、生前贈与による資産移転の円滑化に資することを目的として創設された。同時に相続時精算課税の贈与者の年齢要件を緩和した住宅投資促進のための「特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」も創設された。
また、平成25年度税制改正においては、被相続人の高齢化が進み、相続又は遺贈による若年世代への資産移転が進みにくい状況ともなっていることを踏まえ、若年世代への資産の早期移転を促進する観点から、贈与者の対象年齢を65歳から60歳に引下げ、租税特別措置法により、
受贈者に孫を追加する等の相続時精算課税の対象範囲を拡大することとされた。
さらに、平成30年度税制改正においては、中小企業の円滑な世代交代を集中的に促進し、生産性向上に資する観点から、10年間の時限措置として創設された「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の利用を一層促す観点から、当該特例の適用を受ける場合には、贈与者の推定相続人又は孫以外の者であっても相続時精算課税の適用を受けることが可能となった。
令和元年度税制改正においても、上記と同様に「個人の事業用資産についての贈与税の納税猶予及び免除」の利用を一層促す観点から、当該特例の適用を受ける場合にも、贈与者の推定相続人又は孫以外の者であっても相続時精算課税の適用を受けることが可能となった。
本問は、近年の税制改正を踏まえた相続税法及び租税特別措置法に規定する相続時精算課税の適用要件等について、説明を求めるものである。
問2
災害により損害を受けた者に係る相続税については、従来から、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下「災害減免法」という。)により、相続等により取得した財産について、その価額は、物理的に被害を受けた部分の価額を控除した金額とするといった措置が講じられていた。
他方、阪神・淡路大震災及び東日本大震災については、その被害の規模や性質を踏まえ、それぞれ震災特例法を制定し、震災に基因する地価下落といった経済的な損失についても対応するための更なる特例措置が設けられていた。平成29年度税制改正においては、平成28年4月の熊本地震をはじめ近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者の不安を早期に解消するとともに、税制上の対応が復旧や復興の動きに遅れることのないよう、租税特別措置法において「特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例」など災害に対応する特例が常設化された。
このように、災害減免法及び租税特別措置法において規定されている災害があった場合に適用が可能な相続税の課税価格の計算の特例は、平成30年7月豪雨や平成30年北海道胆振東部地震など近年も引続き災害が頻発している状況を踏まえると非常に重要な特例である。
本問は、これらの特例の内容について、説明を求めるものである。
相続税法全般に関する理解度を測定するため、個別の財産評価、課税価格の算定、相続税の総額及び各相続人等の納付すべき税額までの算出を求める総合問題である。主なポイントは次のとおりである。