出題のポイント

〔第一問〕

問1

 本問は、事業所得者が、取引銀行から債務の免除を受けるという事例を通じて、債務の免除を受けた個人の所得税の取扱いについての理解を問うものである。その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 事業所得者が、取引銀行から債務の免除を受けた場合における債務免除益については、原則として、その者の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入されること
  2. (2) 事業所得者が、破産法の免責許可の決定又は民事再生法の再生計画認可の決定があった場合その他資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合に取引銀行から債務の免除を受けたときは、債務免除益については、その者の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入しないものとすること。
     ただし、債務免除益のうち次に掲げる金額の合計額に相当する部分については、その者の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入されること
    • その免除を受けた日の属する年分の事業所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合のその損失の金額
    • 純損失の繰越控除により、その免除を受けた日の属する年分の総所得金額等の計算上控除する純損失の金額がある場合におけるその控除する純損失の金額
  3. (3) 事業所得者が、一定の債務処理計画に基づき取引銀行から債務の免除を受けた場合(債務免除益について、上記(2)の措置の適用を受ける場合を除く。)において、その事業の用に供される減価償却資産等の価額についてその債務処理計画に定められた方法により評定が行われているときは、その減価償却資産等の評価損の額を、事業所得の金額の計算上、必要経費に算入すること

問2

1 本問は、国外財産調書及び財産債務調書に関する基本的な事項の理解を問うものである。その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 国外財産調書
    • 提出の対象者は、その年の12月31日において5,000万円を超える国外財産を有する非永住者以外の居住者であること
    • 国外財産調書には、国外財産の種類、数量及び価額等を記載する必要があること
    • 国外財産調書は、その年の翌年3月15日までに、所得税の納税地等の所轄税務署長に提出しなければならないこと
  2. (2) 財産債務調書
    • 提出の対象者は、確定申告書を提出すべき者で、その年の総所得金額等の金額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において3億円以上の財産又は1億円以上の国外転出特例対象財産を有する者であること
    • 財産債務調書には、財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額等を記載する必要があること
    • 財産債務調書は、その年の翌年3月15日までに、所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこと
    • 国外財産調書の提出義務がある場合における国外財産に係る財産債務調書に記載すべき事項(その国外財産の価額を除く。)については、その財産債務調書への記載を要しないこととされていること

2 本問は、国外財産調書又は財産債務調書に係る過少申告加算税又は無申告加算税の加重措置に関する基本的な事項の理解を問うものである。その主なポイントは次のとおりである。
 過少申告加算税又は無申告加算税の加重措置は、

  • 国外財産(財産債務)に関して生ずる所得に対する所得税に関し修正申告等があり、
  • その修正申告等について過少申告加算税又は無申告加算税の規定の適用があり、
  • 国外財産調書(財産債務調書)の提出がない場合又は国外財産調書(財産債務調書)に修正申告等の基因となる国外財産(財産債務)の記載がない若しくは記載が不備の場合

について、国外財産(財産債務)に関して生ずる所得の部分に係る過少申告加算税の額又は無申告加算税の額が、5%加重されるものであること

〔第二問〕

 所得税法では、所得を10種類に分類した上で、これらの各種所得ごとにその所得金額を計算し、課税標準である総所得金額等を計算することとしている。そして、課税標準の額から所得控除の額を控除して課税総所得金額等を計算し、その課税総所得金額等に対する税額を計算することとしている。問1はこの一連の計算過程の理解を問うものであり、問2は被相続人が死亡した場合の被相続人及び相続人の総所得金額等の計算の理解を問うものである。

問1

 本問においては、土木工事業及び建設機械賃貸業の事例を通じて、事業所得、譲渡所得及び雑所得を中心に、一連の計算過程の理解を問うものであり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 工事契約に関する売上の計上時期
  2. (2) 貸倒引当金の繰戻額と繰入額の計算
  3. (3) 減価償却資産の償却費の計算(特別償却及び特別税額控除の適用の判定を含む。)
  4. (4) 機械装置を譲渡した場合の所得区分と所得金額の計算方法
  5. (5) ゴルフ会員権を譲渡した場合の所得区分と損益通算の可否
  6. (6) 寄附金についての所得控除と税額控除の有利不利の選択
  7. (7) 住宅ローンの借換えがあったときの住宅借入金等特別控除額の計算方法

問2

 本問においては、被相続人が死亡して、相続人が不動産貸付業務を引き継いだという事例を通じて、被相続人の準確定申告及び相続人の確定申告における総所得金額等の計算の理解を問うものであり、その主なポイントは次のとおりである。

  1. (1) 遺産分割協議が成立するまでの不動産所得の帰属
  2. (2) 相続人が引き継いだ業務に係る建物及び建物附属設備の償却費の計算方法
  3. (3) 被相続人の死亡後に、相続人が受領した給与や年金の帰属
  4. (4) 相続により取得した非上場会社の株式を発行会社へ譲渡した場合のみなし配当の特例
  5. (5) 特定の事業用資産の買換特例を適用した場合の譲渡所得の金額の計算方法