出題のポイント

〔第一問〕

問1

 資産や負債の評価を決めるのはその外形ではなく、それらの保有目的であることの理解を問うている。すべての資産や負債を一律に時価や公正価値で評価すれば、貸借対照表のストック情報を通じて企業価値をより良く評価できるようになる、という議論もみられるが、日本の基準設定主体はそのような考え方を採用していない。適切な業績把握という観点に立てば、どのような投資に向けられている資産や負債なのかに応じて、複数の異なる評価基準が求められることとなる。

問2

 期待値による評価の合理性と限界を問うている。期待値による評価は、最頻値による評価よりも「無条件に」望ましい、という類いの議論がみられる。ある特定の条件下で期待値による評価が最頻値による評価よりも望ましい側面を有しているのは確かであろう。しかしそれはあくまでも特定の条件下に限ったことであって、無条件に言いうることではない。それを理解しているかどうかが問われている。

〔第二問〕

問1

 歴史的原価会計の基礎概念である実現主義、費用収益対応の原則、取得原価主義および費用(原価)配分の原則に関する基礎的理解を問う問題である。また、その他有価証券の会計処理に関する基礎的な考え方を理解しているかどうかを問う問題である。

問2

 本問は、リース取引の分類および会計処理に関する基礎的理解を問う問題である。また、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引の減価償却に関する基礎的な考え方を理解しているかどうかを問う問題である。

〔第三問〕

 本問は、会社法及び会社計算規則に基づく計算書類等並びにキャッシュ・フロー計算書の基本的な理解度を広範囲に問う問題である。資料を正確かつ横断的に読み取って、貸借対照表及び損益計算書並びにキャッシュ・フロー計算書を適切に作成できるかを問うものである。

  1. (1) 現金及び預金について、為替換算及び基本的な組み替え事項に関する理解を問う。
  2. (2) 売上の計上基準に関する理解を問う。また、金銭債権について、「金銭商品に関する会計基準」における債権区分の考え方と貸倒引当金の会計処理に関する理解も問う。
  3. (3) 有価証券について、「金融商品に関する会計基準」における有価証券の評価方法等に関する理解を問う。
  4. (4) 棚卸資産について、「棚卸資産の評価に関する会計基準」における棚卸資産の評価基準及び評価方法に関する理解を問う。
  5. (5) 有形固定資産について、取引の処理方法の理解を問う。
  6. (6) 借入金に関連して、その処理と表示に関する理解を問う。また、金利スワップの特例処理についての損益計算書の表示に関する理解を問う。
  7. (7) 社債について、その処理と表示に関する理解を問う。
  8. (8) 従業員賞与及び役員賞与について、その処理と表示に関する理解を問う。
  9. (9) 退職給付会計について、「退職給付に関する会計基準」における簡便な方法に基づく引当金の処理に関する理解を問う。
  1. (10) 自己株式について、「自己株式及び準備金の減少等に関する会計基準」における取得及び処分に関する理解を問う。
  2. (11) 諸税金の処理について、納付税額の処理方法の理解を問う。
  3. (12) 税効果会計について、「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産の会計処理と表示に関する理解を問う。
  4. (13) 会計法及び会計計算規則に定める貸借対照表及び損益計算書の区分、項目及び名称に関する理解を問う。
  5. (14)  「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」に定める表示と作成方法に関する理解を問う。