出題のポイント

〔第一問〕

問1

  1. (1) 公売は、強制的に滞納者の財産を売却するものであるため、その財産の見積価額は、客観的な時価から公売の特殊性による減価を控除して決定する必要がある(徴法98)。
  2. (2) 公売においては、最高の価額で入札した者であっても、その価額が見積価額以上でない場合は、公売財産を買い受けることができない(徴法104、113)。このように、見積価額は、公売による売却価額の最低額を保障し、その売却価額が客観的な時価よりも著しく低廉になることを防止している。
     また、見積価額を公売の前に公告することにより、その価額を目安として入札をすることが可能となり、より多くの買受希望者が公売に参加することが期待される。
     本問は、公売における見積価額の趣旨を正しく理解しているかを問うものである。

問2

 抵当権などの第三者の権利の目的となっている財産が差し押さえられた場合において、滞納者が他に換価の容易な財産を有しているなど一定の要件に該当するときは、その第三者は、税務署長に対し、換価の容易な財産を代わりに差し押さえるよう請求することができる(徴法501)。
 この差押換えの請求をする機会を第三者に与えるために、税務署長は、これらの第三者の権利の目的となっている財産を差し押さえた場合は、その第三者に差し押さえた旨を通知することが義務付けられている。
 本問は、税務署長が第三者に対して差押えの事実を通知する趣旨を正しく理解しているかを問うものである。

問3

 滞納者がその財産を無償で譲渡することにより徴収不足となっているなど一定の要件に該当する場合は、無償で財産を譲り受けた滞納者の親族は、その無償譲渡により受けた利益を限度として、滞納に係る国税を納付する義務を負うこととされている(徴法39)。
 また、滞納者の財産に設定された抵当権が国税に劣後する場合において、滞納者がその抵当権を設定したまま財産を譲渡するなど一定の要件に該当するときは、その抵当権者が配当を受けるべき金額のうちから国税を徴収することができることとされている(徴法22)。
 本問は、設例の事実関係から、第二次納税義務者から徴収するために不動産を差し押さえた上で公売し、さらにその公売において抵当権者が受ける配当金からも徴収することができることを解答できるかがポイントとなる。

〔第二問〕

 本問は、換価の猶予(徴法151の21)を受けた後に適用される一連の制度(猶予の取消し、担保物処分、納付計画の変更、猶予期間の延長)の理解度を問うものである。

問1

 換価の猶予において分割して納付する金額をその期限までに納付しなかったときは、原則として猶予が取り消されることとなる(徴法1524、通法491二)。
 この場合は、換価の猶予のために担保として提供されていた財産は、担保不足ではない限り、滞納者の財産よりも先に、滞納処分の例により処分されることとなる(通法5214)。

問2

 換価の猶予を受けた滞納者は、猶予期間内の各月において、その財産の状況等からみて合理的かつ妥当な金額により、分割して納付しなければならない(徴法1521)。
 分割納付が不履行となった場合であっても、その不履行となったことにつきやむを得ない理由があると認められるときは、換価の猶予を取り消すことなく(徴法1524、通法491二)、引き続き猶予を継続することができる。
 この場合において、やむを得ない理由があり、今後、分割納付の計画どおりに納付することができないと認められるときは、その納付計画を変更することができる(徴法1524、通法469)。
 この納付計画の変更は、当初の猶予期間を超えて行うことはできないものの、やむを得ない理由により、当初の猶予期間内に完納できないと認められるときは、猶予期間を延長することができる(徴法1524、通法467)。