問1
相続税法は、原則として、相続又は遺贈(死因贈与を含む。)によって財産を取得した個人を相続税の納税義務者と定めている。
一方、その例外として、相続税の不当な減少を防止する観点から、代表者又は管理者の定めのある人格のない社団又は財団に対し財産の遺贈があった場合やその人格のない社団又は財団を設立するため財産の提供があった場合は、その社団又は財団を個人とみなして、相続税を課すこととされている。また、持分の定めのない法人に財産の遺贈があった場合やその法人の設立のために財産の提供があった場合において、その遺贈等により遺贈をした者の親族その他一定の特別の関係がある者の相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときは、その法人を個人とみなして、相続税を課すこととされている。
さらに、委託者等が死亡した場合に、受益者等が存在しない信託等の特例の適用があり、信託の受託者が個人以外であるときは、その受託者を個人とみなして、相続税を課すこととされている。
上記のほか、平成30年度税制改正においては、個人から一般社団法人又は一般財団法人に対して財産の遺贈があった場合の相続税の課税について、相続税の負担が不当に減少する結果となる要件が明確化されるとともに、特定の一般社団法人又は一般財団法人の理事である者等が死亡した場合には、その法人が、その法人の純資産額をその死亡の時における同族の理事(被相続人を含む。)の数で除して計算した金額に相当する金額をその被相続人から遺贈により取得したものとみなして、その法人に相続税を課すこととされた。
本問は、相続税法において、個人以外の者に相続税を課すこととされている規定について、平成30年度税制改正を踏まえた内容等を理解しているかについて説明を求めるものである。
問2
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例は、昭和58年に制度が創設されて以来、累次の改正が行われてきたところであるが、平成30年度税制改正では居住又は事業の継続への配慮という本来の政策目的に沿った特例の適用に限定するという観点から、持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、相続開始前3年以内にその者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者及び相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者が除外されるとともに、貸付事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等(相続開始の日まで3年を超えて引き続き事業的規模で貸付事業を行っていた者がその貸付事業の用に供したものを除く。)を除外することとされた。
小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例は、適用件数及び相談件数も多く、実務において非常に重要な特例であり、本問は、平成30年度税制改正において改正のあった小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用対象となる特定居住用宅地等及び貸付事業用宅地等の適用要件について説明を求めるものである。
相続税法全般に関する理解度を測定するため、個別の財産評価、課税価格の算定、相続税の総額及び各相続人等の納付すべき税額までの算出を求める総合問題である。主なポイントは次のとおりである。