出題のポイント

〔第一問〕

 本問は、法人税法における基本的な事項の中から、資産の評価損の取扱い及び青色欠損金の繰越控除制度を取り上げて、それぞれの項目について、正しく理解されているかを問うものである。

問1

 論点は、法人税法第33条の規定の正しい理解である。資産の評価損は、原則、損金算入されず、損金算入が認められるには、物損等の事実や法的整理の事実といった特定の事実が必要となる。
 このうち物損等の事実は、棚卸資産、有価証券、固定資産、繰延資産ごとに定めがあり、これらの資産の区分ごとに定められた事実が正しく理解できているかがポイントとなる。
 また、具体的事実関係への適用について、1に関しては、過剰生産による時価の下落は物損等の事実に該当しないこと、2に関しては、災害により著しく損傷したことは物損等の事実に該当すること、3に関しては、期末価額が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回らないものは物損等の事実に該当しないこと、4に関しては、製造方法の急速な進歩等によって旧式化したことによる経済的価値の著しい低下は物損等の事実に該当しないことが、それぞれ正しく理解できているかがポイントとなる。

問2

 論点は、法人税法第57条の規定の正しい理解である。青色欠損金の繰越控除制度は、中小法人等とそれ以外の法人で繰越控除できる限度額が異なるため、制度の適用に当たっては、中小法人等の範囲が正しく理解できていることがポイントとなる。
 また、この制度の概要や適用要件に関しては、1青色欠損金の繰越期間が10年とされていること、2中小法人等以外の法人は、青色欠損金の損金算入について当該事業年度の所得金額の50%相当額が限度とされていることなど、これまでの改正事項を踏まえた現在の制度が正しく理解できているかがポイントとなる。

〔第二問〕

 本問は、税理士が実務において直面する事項の中から、主として役員給与等に関する事項、中古資産を取得して事業の用に供した場合の取扱い及びいわゆるグループ法人税制に関する事項を取り上げて、それぞれの法的要件等が正しく理解されているかを問うものである。
 また、法人税の申告書作成業務の中で特に重要な、別表の関連性に関する知識を確認するため、法人税法施行規則別表5(1)の記載を求めるものである。

問1

 論点は、法人税法第34条及び第36条の規定、すなわち役員給与及び使用人給与についての正しい理解である。本問の会社は同族会社に該当するため、役員等の範囲の判定に当たっては、同族会社の判定、所有権割合に基づく役員等の判定に関する知識が必要となる。
 次に、役員給与の損金不算入額の算定においては、同法第34条第1項及び第2項の関係を正しく理解する必要がある。そのため本問では、定期同額給与等に該当するものと不相当に高額であると認められる給与とを、それぞれ個別に問うこととした。併せて、事前確定届出給与の要件に関する知識を確認することとした。
 また、特殊関係使用人該当性の判断及び該当者に対する過大給与の損金不算入額の算定も出題した。

問2

 論点は、1減価償却資産の取得価額に算入すべきもの及び算入しないことができるものの判定、2資本的支出の判定、3中古の減価償却資産の見積耐用年数の見積り及び4減価償却の法定償却方法である。
  具体的なポイントは、1に関しては、取得価額に算入しないことができるものであっても算入した場合には申告調整で損金算入することができないこと、2に関しては、中古資産の移築費用にかかる資本的支出の判定、3に関しては、簡便法による資産の耐用年数の設定、4に関しては、平成28年4月1日以後に取得をされた建物附属設備の減価償却方法が定額法に一本化されていること等である。

問3

 論点は、いわゆるグループ法人税制に関し、1完全支配関係(直接完全支配関係及び間接完全支配関係)の判定及び完全支配関係を有することとなった日の意義、2譲渡損益調整資産の判定及び譲渡損益の正しい処理である。
  具体的なポイントは、1に関しては、従業員持株会及びストック・オプションの権利行使により取得した役員等の持株の取扱い、2に関しては、譲渡損益調整資産に該当する有価証券を取得した譲受法人が当該資産を完全支配関係にある別の法人に譲渡した場合の取扱い及び譲渡損益調整資産の譲渡につき圧縮記帳の適用を受ける場合の取扱い等である。