出題のポイント

〔第一問〕

問1

  1. (1) 滞納処分により差し押さえられた財産の使用又は収益は、その財産の性質に応じて制限されている。動産及び自動車は、その使用又は収益が原則として禁止され、国税の徴収上の支障がないと認めるとき、又は営業上の必要その他相当の理由のあるときは、使用又は収益が許可される(徴法61、69)。これに対し、不動産は、原則として使用又は収益が可能であり、その価値が著しく減耗する行為がされると認められる場合に限り、その使用又は収益が制限される(徴法716)。
     本問は、この差押財産の性質に応じた使用又は収益の制限についての正確な理解がポイントとなる。
  2. (2) 差押財産の換価は、その公正の維持と高価売却を図るため、公売の方法によることが原則とされている(徴法94)。一方、公売に付することが公益上適当でないと認められるとき、取引所の相場によって売却するとき、公売に付しても入札等がないときなど、公売のように広く買受希望者を募ることができないといった場合には、特定の者に売却することができる(徴法1091)。
     本問は、この例外的な換価の方法である随意契約による売却ができる場合の正確な理解がポイントとなる。

問2

 滞納処分による財産の差押えは、強制的に租税債権を満足させるために行われるものであることから、そのために必要な財産以外の財産の差押えは禁止され、また、国税に優先する担保権の設定があり、差押えによっても配当が見込まれない財産の差押えも禁止されている(徴法48)。さらに、私法秩序との調整を図りつつ、国税の収入を確保するため(徴法1)、徴収職員は、財産の差押えに当たっては、滞納処分の執行に支障がない限り、その財産につき第三者の有する権利を害さないよう努めなければならない(徴法49)。
 本問は、これらの差押えの一般的な制限についての理解度を問うものであり、与えられた事実関係から、国税の全額を徴収するために差し押さえるべき財産を適切に選択することができるかどうかがポイントとなる。

〔第二問〕

問1

 滞納者につき滞納処分の執行をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、税務署長は滞納処分の執行を停止することができる(徴法1531二)。この場合において、差し押さえた財産があるときは、税務署長はその差押えを解除しなければならない(徴法1533)。
 本問は、この滞納処分の停止の要件及び効果に関する理解度を問うものであり、設例の事実関係から、給料の差押えの可否、及び滞納処分の停止の適否を適切に判断することができるかどうかがポイントとなる。

問2

 滞納者が事業に係る国税を滞納したまま親族にその事業を譲渡した場合は、一定の要件の下、その事業を譲り受けた親族は、譲受財産及びその異動により取得した財産を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負うことになる(徴法38)。
 本問は、この事業を譲り受けた親族の第二次納税義務に関する理解度を問うものであり、特に滞納処分の対象が譲受財産及び取得財産に限られる物的第二次納税義務の性質についての正確な理解がポイントとなる。