出題のポイント

〔第一問〕

問1

 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付けによる所得をいう。不動産所得には、事業所得と雑所得の計算に差異があることと同様、その所得が「事業」から生じたものか「業務」から生じたものかによって課税上の取扱いの差異があり、そのどちらに区分されるかの判定は、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付け等を行っているかどうかによるとされている。
 両者の課税上の取扱いの差異については、利子税の必要経費算入の可否、資産損失の必要経費算入の可否、貸倒損失の取扱い、貸倒引当金の設定の可否、事業を廃止した場合の必要経費の特例の取扱い、青色事業専従者給与の必要経費算入の可否、事業専従者控除額のみなし必要経費の特例の適用可否、青色申告特別控除の適用の可否などが挙げられる。
 本問は、不動産所得が「事業」または「業務」のどちらから生じているかに起因する、課税上の取扱いの差異に関する基本的な事項について、正確に理解しているか問うものである。

問2

 給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう。つまり、一定の勤務関係に基づき、被用者が勤務先に対して行った人的役務の提供に対して受ける報酬をいうのであるが、出張旅費、一定の通勤手当等、非課税とされるものがある。
 給与所得の金額の計算については、給与等の収入金額から「給与所得控除額」を控除して計算することとされており、収入金額から必要経費を差し引いて計算する通常の所得金額の計算方法とは異なっている。なお、特定支出がある場合には、その合計額が給与所得控除額の2分の1相当額を超える等の要件を満たせば、給与所得からその超える部分の金額を控除することができる。
 また、居住者が給与等の支払いを受ける場合には、その税額については源泉徴収されることとなり、扶養控除等により生じる年税額との過不足額については、年末調整により精算される。
 本問は、給与所得の意義、給与所得の金額の計算方法、源泉徴収及び年末調整といった、給与所得に関する基本的な事項について、正確に理解しているか問うものである。

〔第二問〕

問1

 所得税法では、担税力等を考慮して所得を10種類に分類した上で、まず、これらの各種所得ごとにその金額を計算し、課税標準である総所得金額等を計算することとしている。そして、その課税標準額から所得控除額を控除して課税総所得金額等を計算し、その課税総所得金額等に対する税額を計算することとしている。
 本問においては、以下の事項を中心に、各種所得の分類のほか、所得金額の計算から申告納税額までの計算をするための基礎的知識を有しているかどうかを問うものである。

  1. (1) たな卸資産を自家消費・贈与した場合の総収入金額算入
  2. (2) 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
  3. (3) 合同運用信託の損失の取扱い
  4. (4) 各種所得控除額の計算
  5. (5) 課税総所得金額等に対する税額の計算
  6. (6) 配当控除額、復興特別所得税額及び源泉徴収税額の計算

問2

 所得税を課税する場合、居住用財産の売買については、担税力・社会政策等を考慮し、様々な課税の特例が設けられている。
 本問においては、既に所有している居住用財産を譲渡し、新たにそれに代わる居住用財産を取得した場合にどのような課税の特例が適用できるのかを確認した上で、それぞれの特例を適用して税額の算出を行うことができるかどうかを問うものである。

  1. (1) 居住用財産を取得した場合の住宅借入金等特別税額控除等の適用
  2. (2) 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除等の適用
  3. (3) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の税額軽減の適用
  4. (4) 特定の居住用財産の買換えの場合の課税の特例の適用