Q3−1 租税条約上の仲裁手続とはどのようなものなのでしょうか。

○ 租税条約上の仲裁手続とは、租税条約の規定に適合しない課税を受けた事案について、両締約国の税務当局が相互協議を開始してから一定の期間内に合意に至ることができない場合に、当該事案の申立者からの要請に基づき、当該事案の未解決の事項を仲裁に付託する手続です。仲裁のための仲裁委員会は、両締約国の税務当局以外の第三者から構成されます。我が国が締結している一部の租税条約には、仲裁手続に関する規定(仲裁規定)が定められています。
○ 仲裁に付託された未解決の事項についての決定(仲裁決定)は、申立者等がこれを実施する相互協議の合意を受け入れない場合を除き、両締約国を拘束するものとされ、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず実施されます。
○ 我が国が締結している租税条約における仲裁規定の内容については、該当する各租税条約(これに付属する議定書を含みます。)をご覧ください。
○ 仲裁規定が設けられた租税条約においては、仲裁の要請からおおむね2年以内に仲裁決定が実施されることを確保するために、両締約国の税務当局間で仲裁規定の実施のための取決めを合意によって定めることとされています。これまでに合意した取決めの内容については、個別の仲裁手続に係る実施取決めをご覧ください。
(参考)1.我が国が締結している租税条約は、おおむねOECDモデル租税条約に沿った規定を採用しています。OECDモデル租税条約には、以下の仲裁規定が定められています。
OECDモデル租税条約第25条5(仮訳)
  • a)一方の又は双方の締約国の措置によりある者がこの条約の規定に適合しない課税を受けた事案について、1の規定に従い、当該者が一方の締約国の権限のある当局に対して申立てをし、かつ、
  • b)当該事案に対処するために両締約国の権限のある当局から求められる全ての情報が両締約国の権限のある当局に対して提供された日から2年以内に、2の規定に従い、両締約国の権限のある当局が当該事案を解決するための合意に達することができない場合において、

当該者が書面によって要請するときは、当該事案の未解決の事項は、仲裁に付託される。ただし、当該未解決の事項について、いずれかの締約国の裁判所又は行政審判所が既に決定を行った場合には、当該未解決の事項は仲裁に付託されない。当該事案によって直接に影響を受ける者が、仲裁決定を実施する両締約国の権限のある当局の合意を受け入れない場合を除くほか、当該仲裁決定は両締約国を拘束するものとし、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず実施される。両締約国の権限のある当局は、この5の規定の実施方法を合意によって定める。

Q3−2 誰が仲裁の要請を行うことができるのでしょうか。

○ 仲裁規定が租税条約に定められており、かつ、当該租税条約に基づき行われる相互協議において、両締約国の税務当局が相互協議の開始の日から仲裁規定に定められた期間内に合意に至ることができない場合には、その相互協議の申立者は仲裁の要請を行うことができます。
○ 相互協議の開始の日については、国税庁相互協議室が相手国等の税務当局との間で確認し、申立者に通知します。
○ 仲裁の要請を行うことができるのは租税条約の規定に適合しない課税を受けた事案に限られます。

Q3−3 仲裁の要請を行うための手続を教えてください。

○ 仲裁の要請は、「仲裁要請書」1部を国税庁相互協議室に提出することにより行っていただく必要があります。
○ 仲裁要請書の様式については「仲裁要請書(別紙様式6)(PDF/232KB)」をご覧ください。
(注)1.仲裁の要請を行った者は、Q2−17の通知(相互協議の合意の通知)を受けるまでの間、「仲裁要請の取下書」を国税庁相互協議室に提出することにより、仲裁の要請を取り下げることができます。仲裁要請書の取下書の様式については、「仲裁要請書の取下書(別紙様式7)(PDF/144KB)」をご覧ください。
   2.仲裁の要請を行った者が、仲裁の要請の取下げとともに相互協議の申立ての取下げを行う場合には、「相互協議申立ての取下書」を国税庁相互協議室に提出することで足り、別途「仲裁要請の取下書」を提出していただく必要はありません(Q2−20参照)。

Q3−4 仲裁の要請を行う場合、手数料を支払う必要はあるのでしょうか。

○ 我が国においては、仲裁の要請について手数料は不要です。

Q3−5 仲裁の要請を行う際の留意事項を教えてください。

○ 相互協議における未解決の事項について、我が国又は相手国等の裁判所又は行政審判所が既に決定を下している場合には、仲裁の要請を行うことができないことにご留意ください。