(2006年9月15日 韓国・ソウル)

第3回FTA会合は、2006年9月14-15日、ソウルにて開催。35か国・地域の税務長官らは、各国税務当局の直面する主要な問題への対処における懸念や経験を共有。

効率的な税務行政に向けた組織改革

各国税務当局は納税者の権利に配意しつつ、税法上の税額と実際の徴税額の格差を縮小するという課題。そのため、効率的かつ実効的な税務行政システムを確立すべき。

各国税務当局は、税政策の変更、徴税や納税者サービスの向上、定員・予算の削減、税以外の新たな機能、規制緩和、グローバル化・技術革新、職員の高齢化と新規採用、「全政府的な」公共サービス、といった内外の改革圧力に直面。

これらの改革圧力をひとつの改革努力に統合することが主要な課題であり、FTAは各国の経験の共有、グッドプラクティスの特定、各国税務当局間の協調の強化を通じてこれを推進しうることに同意。

国際的なノンコンプライアンスへの対処

貿易・資本の自由化、通信技術の進歩により、税法の執行は困難化。開放的な経済環境が国内外の納税者により濫用され、ノンコンプライアンス(税法違反)が助長される可能性。実効的な執行と予防策により納税者によるコンプライアンス(税法遵守)を確保することは各国税務当局の責務。

国際的なノンコンプライアンスが重要かつ拡がりを見せる問題であることを確認。

  • ◆個人による、オフショアの銀行口座、信託、ペーパーカンパニーを利用した資産・所得の隠蔽。また、オフショアに保有されたクレジットカードを利用した隠蔽資産へのアクセス。
  • ◆全ての規模の事業者による、オフショアのペーパーカンパニーを利用した、関連者間で取引される財・サービスの過大(過少)評価による所得の移転。
  • ◆多国籍企業(金融機関を含む)による、高度な国際的スキームや投資ストラクチャー(租税条約の濫用や移転価格の操作を含む)を利用した所得や費用の移転。

また、ノンコンプライアンスや容認できない租税最小化の取極めの促進に関して、コーポレートガバナンス、税務アドバイザーや金融機関の役割に対する継続した懸念が示されるとともに、プライベートエクイティファンドへの資金流入の増加が各国税務当局の潜在的な問題となりうることを確認。

これらの多面的な問題の解決のために各国レベル、国際レベルにおける執行面の対処が必要。各国税務当局は、それぞれの法的、政治的、経済的環境を考慮して、以下のさまざまな方法で対処。

  • 組織・運用面での実効的なリスクマネジメント手法の採用、リスクアセスメントの納税者との共有
  • 税務執行の強化、ノンコンプライアンスへの民事上・刑事上の対処、国際協調への更なるリソースの投入
  • オフショアのノンコンプライアンスを専担する組織の必要性の検証
  • タックスシェルターの利用の拡大における会計・法律事務所、投資銀行などの役割問題の解決
  • 大企業の経営陣や監査委員会(CEOや取締役会など)が自社の税務戦略に関心を持ち、経営責任の問題として捉えることの促進
  • 「全政府的な」アプローチの推進

OECD租税委員会は、FTA等において、以下の国際協調の促進に取組み。

  • タックススキームの特定及び各国税務当局の対処戦略に係る情報の共有
  • 租税条約における情報交換条項の強化及び実務面の改善、(適当な場合は)オフショアの金融センターとの情報交換協定の締結の推進
  • OECD移転価格ガイドラインのアップデートと一貫した適用、租税条約の濫用回避のためのセーフガードの確保
  • 税務当局と他の執行当局との間の実務的な協調の向上

また、公共サービスの質、市民と政府との間の信頼関係などの要因も納税者のコンプライアンスに影響。

現行の二国間の枠組みの中で更なるコンプライアンスを達成し、仮に必要ならば国際的なノンコンプライアンスの把握のための新たな手法の必要性を検討すべく、国内的・地域的・多国間のイニシアティブを利用。これを踏まえ、OECDの下で、現行の取組みを強化し、新たな作業を始めるべき、4つの分野を特定。

  1. (1) 濫用的タックスプランニングのスキームのディレクトリーの更なる開発
  2. (2) 税務仲介者(法律・会計事務所、税理士、金融機関など)の役割の調査(2007年末までに検討を終了)
  3. (3) 2004年OECDコーポレートガバナンス・ガイドラインを拡大し、税務と良いガバナンスとの間の関連性に着目
  4. (4) 各国税務当局間の職員派遣を含め、国際課税に係る税務職員の研修の改善

次回会合(2007年末頃から2008年初め 於:南アフリカ)にてこれらの進捗をレビュー。