2009年6月

 我々、34か国・地域の税務当局の長官及び次席は、第5回OECD税務長官会議(FTA)のために、2009年5月28日〜29日にフランス・パリで会合を開いた。

 世界は、前例のないグローバル金融経済危機に直面している。それがもたらす課題は、経済的かつ社会的なものである。政府は、危機から脱出するための費用を賄うための、維持可能な方法を探す必要がある。これを達成するには、すべての主要関係者(政府、ビジネス、市民社会)との連携が求められる。ここにおいて、税務当局は果たすべき重要な役割がある。

 2日間にわたる我々の議論は、世界中の税務当局と納税者が現在直面している課題や機会に焦点を当てた。我々は、ビジネス界幹部も交えて協働し、各国当局の対応強化及び新規共同施策の検討を目的として、経験や知見を共有した。我々は、金融経済危機が、世界中において、税制の公平性や税務コンプライアンスの改善のための新たな機会を提供すると確信している。これを実現するため、我々は、相互協力の新たな方法を探求する。今日、我々は、共同行動を更に増加させることにコミットした。これらの行動は、税収の改善に寄与するだけでなく、公平性も増加させるであろう。また、我々は、納税者やアドバイザーとの対話の強化にコミットするとともに、税務コンプライアンスを、良好なコーポレートガバナンスの一部とすることを決定した。

 議論の結果として、そしてケープタウン会合の結果を踏まえ、我々は、次のことを引き続き行うことに合意した

  1.  国内・国際の双方に係る税務行政、納税者サービス及び税務コンプライアンスの向上を図るために協力する。

     我々は、納税者サービスを向上させると決意しており、また、各国税務当局が、オフショア取引を含むノンコンプライアンスの阻止、摘発及び対応を行うことができるよう、情報や知見の共有のための更なる作業を行う。

  2.  租税分野における強力なコーポレートガバナンスを推進する。

     我々は、税務コンプライアンスが良好なガバナンスの一部として必ず含まれるよう、引き続き、ビジネス界や、コーポレートガバナンスに関する規則・ガイドラインの整備を担当する当局と協働していく。

  3.  発展途上国の税務行政を支援する。

     我々は、税務行政分野における発展途上国のニーズに関する認識を深め、関連するFTAの成果物、経験及び知見を共有する。

 今回の会合及びこれらのコミットメントは、我々全体のビジョン、すなわち、

「・・・税務行政に携わる者が、関連する世界的潮流を認識・議論してそれに影響を与え、世界中の税務行政の改善に向けた新たなアイデアを検討するためのフォーラムを作り出す」

ことの実現に向けた取組の一部である。

 我々の目標は、税務行政の効率性・効果・公平性の改善やコンプライアンスコストの削減について税務当局を支援することで、納税者サービス及び税務コンプライアンスを向上させる点にある(FTAビジョン全文は、別添資料1のとおり)。

1 我々は、国内・国際の双方に係る税務行政、納税者サービス及び税務コンプライアンスの向上を図るために引き続き協力する。

 国内・国際双方に係る納税者サービスと税務コンプライアンスの向上は、引き続き我々の作業の主眼である。我々は、一体として、そして各々において税務当局が成し遂げた進展を誇りに思うが、なされるべき仕事は更にある。税法に対するノンコンプライアンスは依然として大きな課題であり、それを阻止・摘発し、対応するための我々の努力は続くであろう。

 我々の作業には、2つの目的がある。適切な国で適切な時期に適切な租税を納めようとする納税者を励まして支援することと、国内的・国際的な納税義務を果たさない納税者に厳正に対処することである。

 我々の最近の作業は、大企業や個人富裕層及びそのアドバイザーに焦点を当ててきた。これらの納税者は、税収に対する影響が大きく、そして税制の公平性全般に関する一般的な認識に影響を与える。また、彼らは、複雑で、往々にして国際的な側面を有する取引を行っている。過去3年の間、我々は、我々全体の知見を活用して、これらの納税者と協力する包括的なアプローチを検討してきた。我々の目的は、建設的な対話を促進し、納税者サービスや税務コンプライアンスを向上させることである。

 2006年のFTAのソウル宣言は、国際的税務アドバイザーや金融機関・その他の機関のノンコンプライアンスに関する役割、そして容認できない租税最小化のための取引の促進に対し、我々全体の懸念を表明した。これに対し、我々は協力して「税務仲介者の役割に関する調査(2008年)」を作成した。この報告書は、税務当局と大規模企業納税者、税務アドバイザーの間の相互信頼関係の向上のための枠組みとともに、すべての当事者による効果的なリスク管理が協調と透明性の向上のために果たす重要な役割に焦点を当てた。この重要な報告書の成果は、洗練された税務リスク分析や(多くの場合における)コンプライアンス確保のための協力的アプローチなど、大企業コンプライアンス管理に関する各国に適合したアプローチの設計に際して、多くの税務当局にガイダンスを与えてきた。我々は、この報告書の原則に、引き続きコミットしている。

 この報告書に続き、我々は本日、関連する2つの報告書、すなわち、「金融機関との透明性の高い税務コンプライアンスの構築(金融機関に関する報告書)」と「税務コンプライアンスに関する個人富裕層との協働(個人富裕層に関する報告書)」を承認した。「金融機関に関する報告書」は、複雑な金融取引に関する詳細な分析を提供するとともに、現在の金融経済危機に関連するリスクなど、金融機関がもたらす税務リスクを税務当局がより良く理解することを可能にしている。「個人富裕層に関する報告書」は、一部の個人富裕層とそのアドバイザーが、税務当局に大きなリスクをもたらし続けていることを示すとともに、個人富裕層の専担部署の創設など、税務当局がそのリスクをより良く管理するための多くの革新的なアプローチを提示している。我々は、OECDに対し、我々の職員が個人富裕層に関する議論を続けられるフォーラムを、引き続き提供するよう要請した。

 これらの納税者に対する我々の注目が一層鮮明になるに従い、これら2つの報告書は、税務当局とこれらの納税者及びそのアドバイザーとの関係に好ましい影響を与えると確信している。報告書の主要な結論は、別添資料2のとおりである。

 これらの報告書やより広範なFTAにおける作業の特色であるグッドプラクティスの共有は、税務当局間の協力強化の基盤である。この協力によって、税務当局は、納税者サービスを向上させ、そして、あらゆる納税者のコンプライアンスを確保するための戦略を検討することができる。我々の努力と知見の共有の結果として、税務当局は、

  •  継続的に、納税者サービスを向上させ、税務コンプライアンスコストを削減している。
  •  税務に関する透明性をより一層高めることや、これを達成するための戦略の実施が必要であることに合意している。
  •  税務リスクの阻止、摘発及び対応のためにリソースをより効果的に利用している。
  •  個々において、そして全体として、濫用的租税回避スキームをより適切に把握して対処できるとともに、ビジネス目的の戦略と租税軽減目的の戦略との相違をより一層理解できる。
  •  大規模企業、金融機関及び個人富裕層やこれらの納税者によるリスク、そして適正に対処するために必要とされる戦略に ついて、より一層精通している。
  •  二国間及び多国間でのコンプライアンス戦略について、より一層協働している。

 これらの取組を継続するためには、中長期にわたり、税務当局が持続的にリソースを利用できることが不可欠である。今後12ヶ月の間に、我々は、これらの報告書の提言を各国税務当局が如何に実施するかについての情報や知見の共有を継続するとともに、納税者サービスの向上並びにノンコンプライアンスの阻止、摘発及び対応のための実践的な方法を探る努力を続けるであろう。この報告書の影響に関する評価は、2010年のFTA会合において、紹介されるであろう。

 我々は、引き続き、OECDに対し、濫用的租税回避及びこうしたスキームに対する我々の対応の実効性を高めるために必要な措置について、分析を強化するよう促す。また、我々は、中小企業に係る我々の作業を促進する。

オフショア税務コンプライアンス

 グローバル金融経済危機の結果、オフショアを用いた体系的なノンコンプライアンスのために、一部の納税者がタックスヘイブンを利用していることが、より鮮明となった。その結果として、OECDのイニシアチブに基づいた透明性及び情報交換に関する国際的な基準を整備することに関し、多くの国が一層の必要性を認識した。我々は、OECDグローバルフォーラムに参加する84の国・地域すべてが、基準にコミットしたという事実を大変歓迎している。

 この透明性向上は、税務当局が濫用的租税回避や脱税目的の国際的タックスシェルターの利用を早急に解明することを手助けし、税制の公平性を強化するとともに、政府がグローバル経済を再生する際に助けとなる相当額の資金を、税務当局が解き放つことを手助けしている。

 オフショア取引を利用する者は、世界中の税務当局から一層の精査を受けることとなろう。我々は、このような取引を行っているすべての納税者に対して、関係する税務当局とオープンに議論をし、問題点を解消するよう、強く促す。今後12か月の間に、我々は、オフショア取引を利用したノンコンプライアンスを防ぐための税務当局の施策について、自主開示戦略も含め、情報・知見を共有するための更なる作業を実施するだろう。

2 我々は、租税分野における強力なコーポレートガバナンスを引き続き推進する。

 効果的な税務リスク管理は、強力なコーポレートガバナンスのために必要不可欠な要素である。金融業界及びその他のいくつかの業界で最近明るみになった事件、及び現在のグローバルな金融経済危機の発端となった不十分なコーポレートガバナンスは、コーポレートガバナンスが重要であることや、企業セクターによっては変革する必要性があるということを明確に示している。

 税務リスクを効果的に評価することは、ビジネスにおける意思決定プロセスにおいて、必要不可欠であると我々は考えている。我々は、あらゆる企業に対して、コーポレートガバナンス実務を見直し、税務上の影響が大きい取引の決定に関しては、取締役会と上級経営者が十分に関与し、説明責任を果たすよう促す。現在、多くの税務当局は、リスク評価プロセスの一環として、コーポレートガバナンス及びリスク管理制度に関する企業納税者の能力に、一層の焦点を当てている。

 コーポレートガバナンスにおける税務リスク管理の重要性は、様々なFTAの報告書の中で強調されている。今回の会合で、オーストラリア・カナダ・チリの税務当局は、「コーポレートガバナンスと税務リスク管理」に関する報告書を提示した。この報告書を踏まえ、我々は、税務コンプライアンスが良好なガバナンスの一部として必ず含まれるよう、引き続き、ビジネス界や規制当局、コーポレートガバナンスに関する規則・ガイドラインの整備を担当する当局と協働していく。我々は、FTAの次回会合において、進捗状況の報告を行うつもりである。

3 我々は、発展途上国の税務行政を引き続き支援する。

 租税は、グローバル化の費用及び便益の適切な配分を実現するとともに、歳入調達・成長促進・格差是正・政府の正統性強化を通じ、発展において基本的な役割を果たす。効率的・効果的・公正で、汚職がなく、コンプライアンス確保に必要なスキルを持った税務当局は、これらの目標達成にとって重要である。

 FTAビジョンに示された我々の主要目標の1つは、次のとおりである。我々は、税務行政面での能力開発に関する途上国からの支援要請について、適切と認められる場合には、リーダーシップを発揮してグローバルな対応に影響を与える。このため、FTAは、税務行政分野における発展途上国のニーズに関する認識を深め、関連するFTAの成果物、経験及び知見を共有する。FTAは、既存のOECDのプログラム(Global RelationsやInternational Tax Dialogue等)を利用し、そして、他の国際的・地域的な機関と協力して作業を進める。

 また、我々は、アフリカ税務行政フォーラム(ATAF)の創設に向けた重要な作業を支援することを再確認し、アフリカ大陸に国際租税センターを設置する構想を描いた。ATAFの目的は、アフリカ各国の税務当局の能力開発について、すべてのアフリカ諸国の協力関係を奨励し、支援することである。FTAの次回会合では、我々は、ATAFに、その活動を報告してもらいたいと考えている。


 今般の会合は、次の点を明確に示した。すなわち、我々は、我々のビジョンを前進させる中において、大企業や金融機関、個人富裕層、アドバイザーの行動に係る認識や、現下の金融経済危機の中で彼らの行動に影響を与える手段について、経験を共有する必要があるということだ。


 今回のFTA会合は、当初メキシコ・メリダでの開催が予定されていた。我々は、メキシコの同僚の会議準備への尽力と、会議成功への顕著な貢献に対して大変感謝している。

 我々は、この1年間、FTAの主要な調査をリードすることで大きな貢献をしてきたオーストラリア・カナダ・チリ・英国の長官及び調査チームに感謝したい。

 また、我々は、FTAで多大なリーダーシップを発揮してきたプラヴィン・ゴードハン前南アフリカ歳入庁長官に感謝の意を表明するとともに、彼の財務大臣任命を祝福したい。更に、我々は、この機会を活用し、FTAの3人の副議長、すなわち、マイケル・ダセンゾ氏(オーストラリア)、ジャンマルク・フネ氏(フランス)、デーブ・ハートネット氏(イギリス)を歓迎したい。

 最後に、2010年9月15日〜16日に開催される第6回FTA会合を主催することを寛大にもオファーしてくれたことに対し、トルコ歳入庁モハメット・キルシ長官に謝意を表したい。

 今回の会合への参加国・地域及び参加機関のリストは、別添資料3のとおりである

別添資料1

FTAビジョン

 FTAビジョンとは、税務行政に携わる者が、関連する世界的潮流を認識・議論してそれに影響を与え、世界中の税務行政の改善に向けた新たなアイデアを検討するためのフォーラムを作り出すためのものである。

 グローバル経済や急速な技術変化、政府の財政的課題という文脈の中、FTAは、税務行政の効率性・効果・公平性の改善やコンプライアンスコストの削減に向けて税務当局を支援することで、納税者サービス及び税務コンプライアンスを向上させることを目的としている。

 FTAは参加国による以下の取組を通じて、このビジョンや目的を達成する。

  • 税務行政上の課題について税務長官及びそのチームが経験・知見を共有できる他に類のない国際的フォーラムを提供する。
  • 参加する税務当局全体の力を活用し、必要に応じ、税務行政の主要な問題について共通の発言をし、共同行動プログラムを検討する。
  • 高潔・効果的・効率的・公正な税務行政に係る世界クラスの成果物及び基準を開発・促進する。
  • 主要関係者(企業及び個人納税者、税務仲介者、税制の企画立案者、金融当局等)との対話を実施し、それと平行した国内レベルの対話を支援する。
  • 各国間の協力を促進し、OECD内の他のフォーラムや国際的・地域的な税関連組織と協力する。

目標

 FTAのビジョン及び目的を基礎とし、かつ、税を巡るグローバルな環境がもたらす課題や機会に対応するために、以下の項目を今後5年間のFTAの目標とする。

  1. 以下を通じた税務当局の戦略的計画及び意思決定への情報提供
    • 将来を予測するための機会を提供する。FTAは、台頭しつつあるグローバルな(経済的、社会的、政治的)潮流やその税務行政への影響に関し、世界中から多様な視点を集約する。
    • 比較分析を実施し、グッドプラクティスを把握・促進する。
  2. 基本的価値観の普及を通じて、税務行政の公正性への信頼感を高める。基本的価値観とは、あらゆる公的支出の財政的基盤を提供する上での、税務当局の業務や税の重要な役割を支えるものであり、具体的には、公平性、誠実さ、情報公開、透明性、説明責任、プログラム実施の優秀さが挙げられる。
  3. 以下を通じた税務当局内での更なる能力開発
    • 税務職員がFTAビジョンを実現する上で重要な存在であることを認識し、税務職員の専門知識向上のための適切なプログラムの把握、開発、促進を支援する。
    • 現代の効率的な税務行政の基本的要素である、戦略実施、組織構造、職業倫理、知識及び情報システム、業務運営及びテクノロジーに係る相互支援及び経験共有を実施する。
  4. 税務コンプライアンス及び納税者サービスの問題に対する新たなアプローチの開発(主要な国際的なリスクへの対応等)
  5. 以下のような重要な税務行政上の課題に取り組むための、主要関係者(企業及び個人納税者、税務仲介者、税制の企画立案者、金融当局等)との国際的・国内的対話の支援及び強化
    • これら主要関係者とのより良い関係
    • 不必要な行政負担の軽減
    • 税務当局、納税者及び税務仲介者の透明性の向上
    • 良好な企業ガバナンスの中核としての税務コンプライアンスの役割
  6. 我々は、税務行政面での能力開発に関する途上国からの支援要請について、適切と認められる場合には、リーダーシップを発揮してグローバルな対応に影響を与える。このため、FTAは、税務行政分野における発展途上国のニーズに関する認識を深め、関連するFTAの成果物、経験及び知見を共有する。FTAは、既存のOECDのプログラム(Global RelationsやInternational Tax Dialogue等)を利用し、そして、他の国際的・地域的な機関と協力して作業を進める。

 以上の目標が、定期的に見直されるFTAの5年間の作業計画の基礎となる。FTAは、定期的な長官会合などを通じて、ビジョンや目標、作業計画及びその影響を再検討する。

別添資料2

金融機関との透明性の高い税務コンプライアンスの構築

主要な結論

  • 税務当局にとって、金融機関によって利用されている複雑な金融商品や取引を理解することや、これらのうち税務リスクを含むものを特定することには、困難を伴う可能性がある。
  • 金融機関は、自己が使用するため及び顧客に提供するために、複雑な金融取引の開発を行っている。税務当局は、透明性を欠き、租税を主要な動機としている複雑な金融取引に対して懸念を有している。
  • より一層の信頼や透明性、協調性のある環境を促進するために、税務当局は、以下の機会を模索するべきである。
    • − 金融機関とリスク評価を共有する。
    • − 著しい不確実性を伴う場合には、早期の自主開示や論点の議論を勧奨する。
    • − 商品やサービスに関する結果が不確実であり得る場合には、相互信頼関係又は協調的関係を追求する。

税務当局への主要な提言

税務当局は:
  • 税務職員が、金融機関の業務、特に金融機関のガバナンス構造や複雑な金融取引の組成過程に関する理解を深めることができるよう、金融機関とのイニシアチブを検討する。
  • 通達、ルーリング及びリアルタイムでの議論を通じて相互信頼関係を構築する一環として、金融機関と協働する。
  • 複雑な金融取引の商業上の背景や詳細な内容をより一層理解できるよう、金融機関に対して更なる透明性を促す。
  • 濫用的租税回避の阻止、摘発及び対応のために必要な戦略を確保する。
  • オフショアプロモーターやオフショアの脱税に対処するため、執行当局や規制当局と一層密接に協働する。
国際的な協力促進のために、税務当局は:
  • OECDモデル租税条約第26条の実施に関する大きな前進を最大限に活かすため、金融機関の活動に関する実効的な情報交換に係る障害を、共同して精査し、除去する。
  • OECDの濫用的租税回避ディレクトリーの整備を促進し、特にこの取組を、スキームに対抗するための施策に関する経験の共有に活用する。
金融機関への主要な提言
  • 金融機関の税務部門が取引の実施に反対した場合には、CEOや取締役会の意思決定を仰ぐことなくそれを覆すべきではない。
  • 金融機関の税務部門は、顧客や金融機関自身のために実施された複雑な金融取引のガバナンスに関し、透明性をより一層向上させることが奨励される。
  • 相互信頼関係又は協調的関係の一環として、金融機関は、税務上の取扱いに関して不確実性があると見込まれる場合には、商品やサービスの税務リスク評価に関する見解を税務当局と共有すべきである。金融機関は、他の大企業と同様、ガバナンスの枠組みの一部として、税務リスクを考慮すべきである。

税務コンプライアンスに関する個人富裕層との協働

主要な結論

  • 個人富裕層は、大口資産家と高額所得者で構成され、次の理由により税務当局の関心が特に高い。
    • − 個人富裕層の税務上の論点の複雑さ、支配し得るエンティティーの多さ
    • − 影響を与える税額規模
    • − 濫用的租税回避を企てる機会
    • − 税制の公平性全般に対する影響
  • 税務コンプライアンス向上のために、税務当局は、個人富裕層専担部署の創設など、効果的にリソースを集約し、個人富裕層関連の活動に焦点を当てるため、組織構造の改革を検討することができる。
  • 戦略・業務レベルの双方における、より一層の国際的な協力は、税務当局間の、特にクロスボーダーの変化に関する情報や知見の共有を促進するだろう。

主要な提言

 税務当局は、以下の施策によって個人富裕層のコンプライアンスを改善し得る。

  • 個人富裕層に関するリスクについて以下のとおり一層の理解を深める。
    • − 市場に流通する濫用的租税回避(ATP)スキームの類型やATPの供給者、個人富裕層の動機を把握する。
    • − 個人富裕層が有している多くの懸念事項(プライバシー、資産保全、将来世代への資産移転等)に対する商業上の認識を高める。
  • 個人富裕層への対応のために税務当局に適切な組織を設置することにより、税務リスク管理の実効性を高めるとともに、以下のようにリソースを集約する。
    • − 経験豊富な職員を適切に配置した専担部署を創設する。
    • − 税務当局幹部と個人富裕層及びそのアドバイザーとの間の対話の枠組み を創設する。
  • 個人富裕層専担部署のトップや税務当局内の他の専門職員の定期的な会合の活用を含む、国際的な協力を促進する。
  • 我々の戦略をフォーカスするための包括的なアプローチを採用することにより、特定の濫用的租税回避リスクに対処するための適切な法的枠組みを整備する。

詳細については、www.oecd.org/ctp/fta2009を参照のこと。

別添資料3

第5回FTA参加国・地域及び参加機関

 オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、香港、ハンガリー、インド、アイルランド、イタリア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、中国、ポルトガル、ロシア、シンガポール、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、米国

 欧州委員会、米州税務長官会議(CIAT)、国際通貨基金(IMF)、欧州税務長官会議(IOTA)