清酒

令和6年8月30日指定

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

 南会津の純米酒は、総じて、口当たりがやわらかく、米由来の優しい甘みと南会津ならではの水質と醸造環境(豪雪)によって酵母の特徴であるフルーティーさが引き立てられ、後味がすっきりとしている点に特徴がある。
 色は透明から淡い金色である。
 特に、純米大吟醸酒や純米吟醸酒は、口に含むと、口の中に上品な甘みがやわらかく広がり、リンゴやメロンといった果実を思わせる爽やかな香りも感じられる。また、甘みと香りが調和することにより、すっきりとした余韻が楽しめる。
 口当たりがやわらかく、後味がすっきりした南会津の純米酒は、塩蔵によって保存された山菜やキノコを用いた料理と一緒に楽しめる食中酒として、古くからこの地域の人々に好まれている。また、特産品である南郷トマトや会津田島アスパラガスを用いた煮びたしや天ぷらなど、心地よい酸味や苦味と油分が調和したコクのある料理とも非常に相性が良い。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 南会津町は、日本の東北地方(本州北部)の一番南側に位置する福島県内行政区で、栃木県那須塩原市や日光市に隣接している。
 南会津町の総面積(886.47)の約9割は森林で占められ、越後山系から連なる 帝釈山たいしゃくさん(標高約2,060m)をはじめ、四方を急峻な山々に囲まれた豪雪地帯である。
 この地域は太平洋に注ぐ利根川水系男鹿おじか川と日本海に注ぐ阿賀野川水系阿賀あが川の分水嶺に近く、阿賀川(別名:荒海あらかい川)や伊南いな川の上流域に位置していることもあり、ミネラル分の溶け込みが少ない平均硬度約30(mg/L)の軟水が豊富に供給されている。この軟水を仕込水に使用することで、発酵が穏やかに進み、口当たりがやわらかく、上品な甘みの酒質が形成される。
 この地域は、年間降雪量が9mを超える豪雪地帯であり、最低気温がマイナス10度以下となることもある。一方で、夏場の昼夜の寒暖差が大きく、豊富な雪解け水があることから、福島県所縁の酒造好適米「夢の香」をはじめとする米作が盛んに行われており、米の旨味が感じられる原料米が産出されている。
 また、冬場は、酒蔵に降り積もった雪が天然の断熱材となることから、外気の影響を受けにくい。このため、酒蔵内部の温度が一定に保たれることから、繊細な温度管理が必要な酒造りに最適な環境となっており、この環境によって酵母の良好な働きが促され、フルーティーな香りを醸し出す一因を成している。

ロ 人的要因
 この地域に現存する最も古い酒蔵の記録によると、この地域では、江戸時代の元禄年間(1688年〜1704年)の頃から酒造りが行われている。また、奥会津(現在の南会津町)の豪商・細井家の「善次郎端阿ぜんじろうただくま日記」によれば、文化9年(1812年)以降、この地域の酒造りで相応の利潤を上げていたとの記載があり、江戸時代「南山みなみやま御蔵入領おくらいりりょう(天領地)」の一部であったこの地域では、現在の会津若松を中心とした会津藩とは異なる文化圏を形成しながら、酒造りが盛況に行われていたことが窺える。
 当時、この地域では、豪雪により交通が遮断されてしまうことが多く、継続的・安定的に杜氏を招くことが困難であったことから、この地域の人々が、試行錯誤しながら自ら酒造りをしたことで、この地域の食文化に合った酒質が形成されていった。
 この地域の食文化としては、山々からもたらされる清流で育った川魚のほか、貴重な食糧を塩漬けにして保存する塩蔵品が挙げられる。また、この地域が海から遠く離れていることから、海産物を入手することは困難であったが、北前船により蝦夷地(現在の北海道)から干物などの加工品が越後国(現在の新潟県)に運ばれ、その後、阿賀川の水運と人力によってこの地域まで塩とともに運ばれていた。このように、この地域では、干物などの乾物、塩蔵された山菜やキノコなどを用いた料理がよく食されており、これら料理と合うように、口当たりがやわらかで後味がすっきりした酒質となった。
 この地域の酒造りは、研究熱心な地域の人々によって脈々と育まれてきたが、現在においては、福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターと連携して、温度管理や麹の酵素力価などを数値化・データ化し、科学的な視点を取り入れてより一層酒質の向上を図るなど進化を続けている。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

 地理的表示「南会津」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。

(1)原料

イ 米及び米こうじに、産地の範囲内で収穫した米(注)のみを用いていること。

(注)農産物検査法(昭和26年法律第144号)により3等以上に格付けされたものに限る。

ロ 水に産地の範囲内で採水した水のみを用いていること。

ハ 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第7号イに規定する「清酒」の原料を用いていること。

(2)製法

イ 酒税法第3条第7号イに規定する清酒の製造方法により、産地の範囲内において製造したものであること。

ロ 清酒の製法品質表示基準(平成元年11月国税庁告示第8号)第1項の表の右欄に掲げる製法品質の要件に該当するものであること。

ハ 製造工程上、貯蔵する場合は産地の範囲内で行うこと。

ニ 消費者に引き渡すことを予定した容器に産地の範囲内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

 地理的表示「南会津」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地の主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:地理的表示南会津管理協議会
     住所:福島県南会津郡南会津町界字中田646−1

(花泉酒造株式会社内)

   電話番号:0241-73-2029
メールアドレス:giminamiaizu@yahoo.co.jp

4 酒類の品目に関する事項

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