静岡の清酒は、総じて含まれる酸が少なく、淡麗で穏やかな旨味を感じることのできる、きれいで丸みのある酒質である。
香りは総じてバナナ様を基調とした穏やかな香りである他、純米吟醸酒や吟醸酒ではメロンなどの果実香を感じることができる。
また、やわらかい口当たりとスッと引くキレの良い余韻が両立し、呑み飽きせず食材の特徴を引き立て続ける食中酒に適した酒である。
淡麗で穏やかな静岡の清酒は、新鮮なカツオ・マグロの刺身や生シラスといった、この地域の豊かな魚介類との相性がとても良い。
イ 自然的要因
静岡県は日本のほぼ中央に位置し、東は熱海から西は浜松まで約155qにわたる東西に長い地形である。県北部には富士山、
ロ 人的要因
この地域の酒が庶民にも広く親しまれるようになったのは江戸時代からである。江戸開府により、江戸と京都、そして中継地である
静岡県は
酒造りを支えたのは、大井川河口の
明治期を経て昭和に入ると蔵元は県外から技術力のある広島、能登、越後、南部等の杜氏を迎え入れたことで各流派の杜氏が競い合い、技術力が向上した。
また、県の醸造指導機関として、昭和4年に県立醸造研究所(昭和18年廃止)、昭和29年に静岡県工業試験場醸造課(現:静岡県工業技術研究所沼津工業技術支援センター。以下「県試験場」という。)が設置され、昭和35年完成の醸造工場で試験醸造も開始され、県内酒造業者の醸造技術向上に資する様々な取組を行ってきた。
高度成長期を過ぎ、清酒の消費量が減少に転じてきた昭和50年代になると、抜本的な品質向上による需要創出が急務となり、県試験場は静岡の気候と水に適した高品質な清酒(吟醸酒)の製造を目標に、県試験場職員の故
また、静岡県酒造組合も酒造講習会の開催による最新の醸造技術の習得や定期的なきき酒訓練等を実施するとともに、静岡県清酒鑑評会においても県試験場が指導する酒質を品質審査方針に取り込み、静岡らしさを象徴する酒質の方向性が確立することとなった。
昭和61年開催の全国新酒鑑評会において県内から21蔵が出品し17蔵が入賞、うち10蔵が金賞を受賞して以来、全国から注目を集めるようになり、静岡酵母と静岡の水で醸される酒は「静岡吟醸」と呼ばれ、吟醸王国静岡と称される程の評価を得るまでに至っている。
地理的表示「静岡」を使用するためには、次の事項を満たしている必要がある。
イ 米及び米こうじに国内産米(農産物検査法(昭和26年法律第144号)により3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したもの)のみを用いていること。
ロ 水に静岡県内で採水した水のみを用いていること。
ハ 発酵に用いる酵母は、静岡酵母(静岡県が3(1)で定める管理機関と共同開発した醸造用酵母をいう。)とする。ただし、管理機関が指定した酵母についても静岡酵母と併用する場合のみ使用できるものとする。
二 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
ただし、酒税法施行令(昭和37年政令第97号)第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の10を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。
イ 酒税法第3条第7号に規定する「清酒」の製造方法により、静岡県内において製造すること。
ロ 清酒の製法品質表示基準(平成元年11月国税庁告示第8号)第1項の表の右欄に掲げる製法品質の要件に該当するものであること。
ハ 製造工程上、貯蔵する場合は静岡県内で行うこと。
ニ 消費者に引き渡すことを予定した容器に静岡県内で詰めること。
(1) 「管理機関」の役割と所在
地理的表示「静岡」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「2 酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。
(2) 「発酵に用いる酵母」の管理
2(1)ハで規定する発酵に用いる酵母については、その特性が変化しないよう、業務実施要領に基づき管理機関が管理を行う。
清酒