令和3年6月30日指定

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

イ 官能的要素
 大阪のワインは、デラウェア等の食用品種を主体とし、醸造用ぶどうの生産にも大阪で長年培われた食用ぶどう栽培技術を活かすことで、ワイン原料に新鮮で美しいぶどうを用いることを特徴とする。そのワインは総じて、凝縮された果実味と穏やかな酸味やほどよい旨味を感じることができ、心地よい余韻が残る、食との相性が良いものである。
 特に、デラウェアを原料としたワインは、爽快で瑞々しい香りと豊満な甘味を特徴としている。このワインは、ぶどうを早摘みしたものは柑橘様の爽やかな風味が強調され、成熟したぶどうを用いたものは凝縮された、豊かな甘い香りが強調されるなど、収穫時期によって変化を楽しむことができる。
 また、食用ぶどう品種以外を原料とした白ワインは豊かでフルーティーな香りを有し、柔らかな味わいながらしっかりとした飲みごたえがあり、赤ワインは芳醇な香りと柔らかな果実味をほどよいタンニンが引き締め、しっかりとしたボディが感じられる。

ロ 化学的要素
 大阪のワインは、アルコール分、総亜硫酸値、揮発酸値及び総酸値が次の要件を満たすものをいい、発泡性を有するものも含む。
(イ) アルコール分は9%以上。
    ただし、甘口のもの(残糖分が45g/L以上のものをいう。)は4.5%以上。
(ロ) 総亜硫酸値は190mg/kg以下。
(ハ) 揮発酸値は0.98g/L以下。
(ニ) 総酸値は3.5g/L以上。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 大阪府は、日本列島の中央付近に位置しており、人口や都市機能が集中する大阪平野を中心として、西側には大阪湾が広がっている。近畿地方における経済の中心都市であり、陸路や海路における交通の要所である。
 北、東及び南の三方は山地に囲まれており、北側には標高800m程度の北摂山地、東側には標高400mから1,000m程度の生駒山地及び金剛山地、南側には標高400mから900m程度の和泉山脈がある。
 主要なぶどう産地である河内地域(羽曳野市、柏原市、太子町など)が位置する金剛山地の山麓は、山地から丘陵地帯を経て大阪平野に向かって緩やかに下っているため、日光が遮られることがなく、日照時間が十分に確保できる。また、地質は基層が中央構造線に特有の花崗岩で構成されており、緩傾斜である表層の砂壌土と合わせて排水や通風が良い。
 また、大阪湾は瀬戸内海の一部であり外洋に面していないため、季節風が中国山地や四国山地により遮られるため、年間を通じて天候が安定しており、温暖で降水量は少ない。特に、夏季は降水量が際立って少なくなるため、ぶどうのベレーゾン期における健全な生育に適しており、ぶどうの味に厚みが生まれ、着色が良好で裂果の少ない美しいぶどうが安定して収穫できる気候である。このぶどうを原料としたワインは、原料由来の凝縮された果実味と穏やかな酸味やほどよい旨味を有したものとなる。

ロ 人的要因
 明治政府の殖産興業政策の一環として、1870年頃より日本における産業としてのぶどう栽培が普及し、1880年頃には、堅下村(大阪府柏原市堅下)に甲州種の苗が移植されたのを契機として、当時衰退しつつあった綿作に替わる産業として食用に適したぶどうの栽培が盛んになり、ぶどう農家も増加していった。
 また、大消費地に近接していたほか、1889年には鉄道開通により流通面で市場が拡大したことにより更にぶどう栽培が盛んになっていった。
 大正時代以降(1912年以降)には、ぶどうの栽培地域が河内地域全域に広がったほか、1914年頃にはデラウェアが導入されるなど、地域にぶどう栽培が根付いていき、1930年頃にはぶどうの栽培面積が日本でも有数のぶどうの産地となった。
 このように、大阪は食用ぶどうの一大産地として発展してきたが、その過程では、果樹園が規格外の食用ぶどうを活用するため、1914年に初めて本格的な醸造所が作られるなど、甲州種やデラウェアなどの食用ぶどうを原料としたワイン醸造も行われてきた。
 昭和時代(1926年以降)に入ってからは、欧州種のぶどうを原料としたワインを醸造するという機運も高まり、ワイン製造者は食用ぶどうの栽培で培った技術を活かし、品種や栽培方法の検討という地道な努力を続けた結果、大阪の気候風土に適する欧州種のぶどうを見極め、食用ぶどうと同様の着色が良好で裂果の少ない美しいぶどうが収穫できるようになった。
 また、同じ食用品種であっても「ワインのためのぶどう」作りとして、収穫方法などの工夫により、品質向上に力を注いだ。
 近年では、2018年に地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所『ぶどう・ワイン研究拠点』が整備され、大阪の伝統や歴史、気候、土壌などの特色を活かした醸造用ぶどうの開発や醸造技術の向上策の検討が行われるなど、産地内のワイン製造者と連携して、品質向上に取り組んでいる。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

(1)原料

イ 果実に産地の範囲内で収穫されたぶどう(次に掲げる品種に限る。)のみを用いたものであること。

(イ) 食用ぶどう品種
デラウェア、甲州、マスカット・ベーリーA、巨峰、ピオーネ

(ロ) 食用ぶどう品種以外の品種
 シャルドネ、リースリング、ソービニヨン・ブラン、シラー、シュナン・ブラン、ピノ・ノワール、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、アルモ・ノワール、プティ・ヴェルド、タナ、アルバリーニョ、サンジョベーゼ、バルベーラ、グルナッシュ、プティ・マンサン、大阪R N-1、キャンベル・アーリー、ナイアガラ、ネオマスカット、ベーリー・アリカントA、ブラック・クイーン、ヤマソービニヨン、ビジュノワール、富士の夢、カベルネ・フラン、レゲント、バッカス、ケルナー、モンドブリエ、テンプラニーリョ

ロ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の原料を用いたものであること。
 ただし、同法第3条第13号ニに規定する香味料は、ぶどうの果汁又はぶどうの濃縮果汁(いずれも産地の範囲内で収穫されたぶどうのみを原料としたものに限る。)に限り用いることができる。

ハ 次に掲げる例外を除き、果汁糖度が16%以上であるぶどうを用いること。
 ただし、ぶどう栽培期間の天候が不順であった場合には、当該ぶどう栽培期間を含む暦年内に収穫されたぶどうに限り、それぞれの必要果汁糖度を1.0%下げることができる。
 1 デラウェア 果汁糖度18.0%以上
 2 甲州 果汁糖度14.0%以上
 3 デラウェアのうち早摘みのもの(注) 果汁糖度12.0%以上
4 酒税法第3条第13号ハに規定する製造方法により製造するもののうち、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器内で発酵させるワインの原料ぶどう 果汁糖度12.0%以上 (注)早摘みのデラウェアとは、着色始期の果実を指し、果皮色が主に緑色や黄緑色から一部赤紫色の部分を含むもの(作型によっては赤紫色を多く含む。)をいう。

ニ 原則として水、アルコール及びスピリッツを使用していないこと。
 ブランデーについては、他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器内で発酵させたものに、発酵後、当該容器に加える場合に限り使用すること。

(2)製法

イ 酒税法第3条第13号に規定する「果実酒」の製造方法により産地の範囲内において製造されたものであり、「果実酒等の製法品質表示基準(平成27年10月国税庁告示第18号)」第1項第3号に規定する「日本ワイン」であること。

ロ 酒税法第3条第13号ロ、ハ又はニに規定する製造方法により、糖類を加える場合には、その加えた糖類の重量の合計が、果実に含まれる糖類の重量以下であること。

ハ 酒税法第3条第13号ニに規定する香味料(以下単に「香味料」という。)を加える場合は、当該加える香味料に含有される糖類の重量が当該香味料を加えた後の果実酒の重量の100分の10を超えないこと。

ニ 色調の安定化、亜硫酸調整等の品質保全の目的でpH調整を行う必要最小限の補酸として1.0g/Lまで認める。

ホ 除酸剤については、総酸値を1.0g/L低減させるまで加えることができること。

ヘ 製造工程上、貯蔵する場合は大阪府内で行うこと。

ト 消費者に引き渡すことを予定した容器に大阪府内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

(1) 地理的表示「大阪」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法(昭和28年法律第6号)第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:地理的表示「大阪」管理委員会
     住所:柏原市太平寺2丁目9番14号カタシモワインフード株式会社内
        大阪ワイナリー協会事務局
   電話番号:072-971-6334

(2) 管理機関は、業務実施要領に基づき、ぶどう栽培期間の天候が不順であったと認める場合には、直ちにその旨を公表する。

4 酒類の品目に関する事項

 果実酒