令和3年6月14日指定

1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

イ 官能的要素
 佐賀の清酒は、総じてふくよかな米の旨みを多く残す、口当たりはまろやかで、口内全体に米特有の甘味の広がりが感じられる芳醇な酒である。
 その中でも、吟醸酒、純米酒や本醸造酒といった特定名称酒(注)は、ゆっくりと喉から鼻に抜けていく香りの余韻が芳醇な香味と調和することにより、米特有の甘味の広がりの後に、確かな旨みを感じることができる芳醇旨口な酒である。
 このような佐賀の清酒は、料理とともに味わう食中酒として、比較的味の濃い料理と良く調和する。

(注)清酒の製法品質表示基準(平成元年11月国税庁告示第8号)第1項の表の右欄に掲げる製法により醸造された清酒をいう。

ロ 化学的要素
 特定名称酒の製法品質の要件に該当しないものについては、次の算式により求められる甘辛度が0を超えること。
 甘辛度=193593/(1443+日本酒度)-1.16×酸度-132.57

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 佐賀県は、九州の北西部に位置し、北側に玄界灘、南側に有明海と2つの海に接している。北東部から中央部にかけては、標高1,000メートル程度の背振山や天山等が連なる背振山地があり、断層運動の繰り返しにより形成された丘陵地帯を挟んで、南西部にある標高996メートルの多良岳に高地が繋がっている。
 背振山地の南側から有明海にかけては、山地から流れる筑後川や嘉瀬川等の多くの河川がもたらす土砂の堆積により形成された佐賀平野が広がっている。
 広大で平坦な低地である佐賀平野は、年間を通じて温暖な気候にも恵まれており、河川から水路によって細部まで導かれた水資源によって多くの水田が造成され、古くから九州でも有数の穀倉地帯として活用されてきた。
 この地域で生産された良質で潤沢な米は、丘陵地帯の断層沿いの谷に整備された唐津往還や長崎街道等を用いて佐賀の各地に輸送することができ、また、背振山地や多良岳等からの豊富な伏流水も佐賀の各地で活用できたことから、古くから酒造りを行いやすい環境にあったといえる。

ロ 人的要因
 佐賀における酒造りの歴史は古く、12世紀から13世紀頃の鎌倉時代に「肥前酒」の名称にて、当時の政府(鎌倉幕府)に酒を献上していたとの伝承も伝えられている。
 清酒造りが盛んになったのは19世紀中頃(江戸時代末期)である。佐賀藩10代藩主となった鍋島直正公が、疲弊した藩の財政を立て直すため酒造りを奨励したことによるといわれており、米のない地域には米が潤沢にある佐賀平野等の地域から貸し付けることによって、佐賀全域で清酒を造らせたとのことである。こうして、佐賀における酒造りの技術は、潤沢にある米の特性を活かし、ふくよかな米の旨みを多く残すことを目指した酒造りとして、地域内全域で発展・蓄積していくこととなった。
 また、鍋島直正公により、近代的産業として発達した酒造りは、長崎街道等を用いて佐賀以外の九州各地域にも流通・販売がされることとなるが、日本の南に位置し比較的平均気温の高い九州では、甘味と旨みが豊かな醤油による甘辛い味付けの料理も多く、それらに調和する食中酒として、甘味につながるふくよかな米の旨みと発酵等により生じる酸味成分が一定のバランスで整えられた芳醇な清酒の特性が形成されてきた。
 近年では、それぞれの蔵元が酒造技術の研鑽に日々取り組んでいるほか、佐賀県が主体となって組織した「佐賀県原産地呼称管理委員会」によって、佐賀の酒造りの勃興当時の原料である「佐賀県産の原料と水を100%使用」を要件とし、味覚審査で味や香り、バランスに優れた清酒のみを合格とする「The SAGA 認定酒」の活動も行うなど、伝統的でより地域に根差した佐賀の酒を尊重しつつ、更なる品質の向上に努めている。
 さらには、佐賀県による「佐賀県日本酒で乾杯を推進する条例(平成25年6月27日)」の公布・施行を行う等、官民一体となって酒質向上への取組や、「佐賀」の清酒ブランドの普及拡大に向けた取組を行っている。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

(1)原料

イ 米及び米こうじに国内産米のみを用いたものであること。ただし、3(2)に基づき「The SAGA 認定酒」を表示する場合は、米及び米こうじに産地の範囲内で収穫した米のみを用いたものでなければならない。

ロ 水に産地の範囲内で採水した水のみを用いたものであること。

ハ 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
 ただし、酒税法施行令第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。

(2)製法

イ 酒税法第3条第7号に規定する清酒の製造方法により、産地の範囲内において製造したものであること。

ロ 製造工程上、貯蔵する場合は産地の範囲内で行うこと。

ハ 消費者に引き渡すことを予定した容器に産地の範囲内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

(1) 地理的表示「佐賀」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「2 酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:GI佐賀管理委員会
住所:佐賀市駅南本町六番十四号(佐賀県酒造組合内)
電話番号:0952-24-3201
メールアドレス:info@sagasake.or.jp

(2) 地理的表示「佐賀」の使用と併せて「The SAGA 認定酒」を表示する場合は、業務実施要領に基づき表示することとする。

4 酒類の品目に関する事項

 清酒