1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項

(1)酒類の特性について

 三重の清酒は総じて暖かみがあり、芳醇な酒質を有している。
 口に含んだ瞬間から旨味を感じさせる滑らかな舌触りにより芳醇さを感じさせる反面、甘味や辛味はいずれも穏やかであるため、液体の温度によらない暖かみが口の中に広がっていく。同時に、爽やかな酸味が砂浜に寄せる波のように静かに鼻に抜けていき、飲み込むという所作がまるで不要に感じるかのようにのどの奥に収まるため、透明感のある余韻となる。
 例えば魚介類等の脂分が少なくたんぱくな味わいの食材と合わせることで、食材の旨味が酒の旨味と相まってほどよく強調されるとともに、食材の臭みが爽やかな酸味により覆い隠されることから、特に貝類や甲殻類などと共に食中酒として楽しむことができる。

(2)酒類の特性が酒類の産地に主として帰せられることについて

イ 自然的要因
 三重県は、日本列島のほぼ中央部にある紀伊半島の東側に位置し、北部から西部にかけては紀伊山地や鈴鹿山脈の1,000mを超える山々が連なっており、東部から南部にかけては、伊勢湾と太平洋に面している。
 夏季は太平洋を流れる黒潮の影響により温暖な気候であるが、冬季には北東から紀伊山地や鈴鹿山脈を越えて「鈴鹿おろし」や「布引おろし」と呼ばれる乾いた寒冷な風が吹き、冷涼な気候となる。特に、比較的内陸部にある伊賀盆地では気温差が大きい。また、鈴鹿山脈に冬季に降り積もった雪や、日本屈指の多雨地帯である紀伊山地に降り蓄えられた雨水が、醸造に適した優良な水となって三重県全体に豊富に供給される。
  このような気候や豊かな水資源により、三重の暖かみがあり芳醇な酒質が形成されている。

ロ 人的要因
 三重には伊勢神宮があり、江戸時代頃より「お伊勢参り」として全国から多くの参拝者が訪れていた。このような参拝者をおもてなしするための酒として三重では酒造りが盛んに行われるようになった。
 伊勢湾と太平洋に面する三重では、多様な海産物資源に恵まれており、古代から平安にかけては「贄(にえ)」と言われる主に海産物を朝廷に献上する役目が与えられていた。特に、第11代垂仁天皇の皇女である倭姫命がその美味しさから毎年献上を命じたというあわびは、三重を代表する海産物である。このような豊かな魚介類と共に飲む酒として三重の清酒は発展してきた。
  近年では、三重県工業研究所とも協力し、独自の清酒酵母の開発に取り組むなどの研究活動も活発に行っているほか、三重の気候風土に適合した醸造技術の開発や、若手技術者による「三重県清酒研究会」での情報交換や酒造講習会の開催による最新の醸造技術の修習など、酒造技術者等の資質向上にも努めている。

2 酒類の原料及び製法に関する事項

(1)原料

イ 米及び米こうじに国内産米(農産物検査法(昭和26年法律第144号)により3等級以上に格付けされたものに限る。)のみを用いたものであること。

ロ 水に三重県内で採水した水のみを用いたものであること。

ハ 酒税法(昭和28年法律第6号)第3条第7号に規定する「清酒」の原料を用いたものであること。
  ただし、酒税法施行令第2条に規定する清酒の原料のうち、アルコール(原料中、アルコールの重量が米(こうじ米を含む。)の重量の100分の10を超えない量で用いる場合に限る。)以外は用いることができないものとする。

(2)製法

イ 酒税法第3条第7号に規定する清酒の製造方法により、三重県内において製造したものであること。

ロ 清酒の製法品質表示基準(平成元年11月国税庁告示第8号)第1項の表の右欄に掲げる製法品質の要件に該当するものであること。

ハ 酒造工程上、貯蔵する場合は三重県内で行うこと。

ニ 消費者に引き渡すことを予定した容器に三重県内で詰めること。

3 酒類の特性を維持するための管理に関する事項

 地理的表示「三重」を使用するためには、当該使用する酒類を酒類の製造場(酒税法第28条第6項又は第28条の3第4項の規定により酒類の製造免許を受けた製造場とみなされた場所を含む。)から移出(酒税法第28条第1項の規定の適用を受けるものを除く。)するまでに、当該使用する酒類が「1 酒類の産地に主として帰せられる酒類の特性に関する事項」及び「2 酒類の原料及び製法に関する事項」を満たしていることについて、次の団体(以下「管理機関」という。)により、当該管理機関が作成する業務実施要領に基づく確認を受ける必要がある。

管理機関の名称:三重県酒造協同組合
住所:三重県津市大谷町141番地の4
連絡方法:電話番号 059-226-2297
WEBサイトアドレス http://www.mie-sake.or.jp

4 酒類の品目に関する事項

 清酒