(回答)

  1. 平成18年度税制改正により、平成18年4月1日以後の相続開始により取得した財産に係る相続税を対象として、延納の許可を受けた相続税額について、延納条件を変更してもなお延納を継続することが困難となった場合には、一定の要件により延納から物納への変更することができることとなりました。
     これを「特定物納制度」といいます(相続税法48条の2)。
  2. 特定物納制度には、次のような要件が必要です(相続税法48条の2第1項、2項、5項)。
    • (1) 特定物納申請を行うときに、延納条件の変更を行ったとしても、延納によっても金銭で納付することが困難な事由があること及びこの延納によっても金銭で納付することが困難な金額を限度とすること
    • (2) 延納許可に係る相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日)から10年以内に申請されること
    • (3) 特定物納申請書及び物納手続関係書類を所轄税務署長に提出すること
    • (4) 特定物納制度が利用できるのは、特定物納申請の日までに分納期限の到来していない延納税額に限られること
  3. 特定物納申請が行われた場合も、延納は継続しているものとして取り扱われます。特定物納申請により延納から物納へ変更を求めようとする延納税額については、特定物納申請の日から特定物納の許可による納付があったものとされる日(却下・みなす取下げの場合は、却下又はみなす取下げの日)までの期間に到来する分納期限については、特定物納の許可による納付があったものとされる日(却下・みなす取下げの場合は、却下又はみなす取下げの日の翌日から起算して1月を経過する日)まで、分納期限が延長されます。
     また、特定物納申請が却下、みなす取下げ又は取下げされた場合には、当初の延納許可に係る延納条件(上記の分納期限の延長を除きます。)が引き続き適用されることになります(相続税法48条の2第4項1号)。
  4. 特定物納が許可された場合、物納許可税額に対して、特定物納申請日前の分納期限の翌日から特定物納許可に係る納付があったものとされる日までの期間について、当初の延納条件による利子税を納付する必要があります(相続税法48条の2第4項2号)。
     また、特定物納に充てる財産の評価は、特定物納申請を行う時の価額によることになります。この価額は特定物納申請財産について、特定物納申請書が提出されたときの財産の状況により、財産評価基本通達を適用して求めた価額をいいます。
  5. 特定物納に充てることのできる財産については、管理処分不適格な財産でないこと、物納劣後財産に該当する場合は他に物納に充てるべき適当な財産がないこと、物納に充てることのできる順位によっていることなど、通常の物納申請の場合と同様の要件に該当することが必要です。
     ただし、特定物納申請財産が延納担保になっている場合で、特定物納許可によりこの延納担保に係る抵当権が抹消できるとき(この他には抵当権等が付されていない場合に限ります。)には、この財産は管理処分不適格財産として取り扱わないこととしています。