「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略 」(令和2(2020)年12月農林水産業・地域の活力創造本部決定)において、酒類のうち、清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛の3品目を輸出重点品目と位置づけ、品目ごとのターゲット国、輸出目標等を定めました。この目標の達成に向け、この重点3品目を中心に、認知度向上や販路拡大などに取り組んでいます。
イ 販路開拓支援
日本産酒類の販路を一層拡大するため、酒類輸出コーディネーターの設置、日本産酒類輸出促進コンソーシアム、オンラインを中心とした海外商談会の3事業を一体として実施しています。
このほか、海外の大規模展示会への出展支援、海外市場調査を実施するなど、輸出拡大への取組を支援しています。
ロ 国際的プロモーション
日本産酒類の認知度向上のため、令和3(2021)年7月、東京オリンピック・パラリンピックの開催に併せて、海外メディアを対象にプロモーションを行いました。また、同年12月、東日本大震災からの復興10周年の節目として台湾で開催された「日本の食・酒」イベントでプロモーションブースを出展しました。
令和4(2022)年3月には英国・ロンドンのジャパン・ハウスと連携し、日本酒及び酒蔵ツーリズムをテーマとしたプロモーションイベントを実施しました。
ハ フロンティア補助金
令和2(2020)年度には、「酒類業構造転換支援事業費補助金(フロンティア補助金)」を創設し、商品の差別化、販売手法の多様化などの活用に関する新規性・先進性のある取組を支援しました。本年も、「新市場開拓支援事業費補助金(フロンティア補助金)」として、酒類業の構造的課題に対応するための取組や新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題への解決に向けた取組を支援しています(酒レポート3(3))。
ニ 日本産酒類の販路拡大・消費喚起に向けたイベント推進事業(Enjoy SAKE! プロジェクト)の実施
「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(令和3(2021)年11月閣議決定)に基づき、新型コロナウイルス感染症の影響による外食産業の落ち込みに伴う酒類消費の大きな減退に対応するため、酒類事業者による販路拡大や消費喚起に向けた各種イベントや情報発信について実施及び実証分析を行い、有効な開催手法や形態に関するモデル事例を構築しています。
イ 酒蔵ツーリズムの推進等
令和3(2021)年度に、「日本産酒類海外展開支援事業費補助金(ブランド化・酒蔵ツーリズム補助金)」を創設し、酒類事業者の主体的な取組を支援することで、業界全体でのブランド化及び酒蔵ツーリズムを推進しています(酒レポート3(2))。
ロ 地理的表示(GI)1普及拡大
国内外における酒類のブランド価値向上等の観点から、GI指定や普及拡大に取り組んでいます(最新の指定状況は、国税庁ホームページの「酒類の地理的表示一覧等」をご覧ください。)。説明会・セミナーの実施やガイドブックの作成・全国6か所の書店でのPRのほか、シンポジウム等を開催しています。
ハ 酒類の表示ルールの定着のための取組等
日本洋酒酒造組合が、「ジャパニーズウイスキーの表示に関する自主基準」を制定し、令和3(2021)年4月から運用を開始しています(自主基準の詳細は、日本洋酒酒造組合ホームページをご覧ください。)。国税庁では、令和4(2022)年3月に「ジャパニーズウイスキーシンポジウム」を開催するなど、事業者や消費者に対する周知啓発のための側面的な支援を行っています。
その他、スピリッツに係る着色度規制を撤廃し蒸留酒類の商品の多様化を図る制度見直しを行っているほか、「清酒の製法品質表示基準」の製造時期や受賞記述の表示方法等の改善や、JAS規格の対象に「有機酒類」を追加する「日本農林規格等に関する法律」の改正など、日本産酒類のブランド価値向上に資する制度改正を行っております。
EPA等の国際交渉において、関税や輸入規制等の撤廃、GIの保護等を求めています。令和4(2022)年1月に発効した地域的な包括的経済連携(RCEP)協定では、日本が初めてEPAを締結する中国・韓国から清酒等の関税の段階的撤廃を獲得しました。また、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故を起因とした各国の輸入規制については、引き続き、科学的根拠に基づき撤廃を求めていきます(酒レポート3(2))。
イ 醸造技術等の普及の推進
各国税局には、技術部門として鑑定官室(沖縄国税事務所主任鑑定官を含みます。)を設置しており、酒類製造者への指導や相談対応、鑑評会や研究会等の開催、酒造組合の講習会等への職員派遣などを通じ、酒類総合研究所の研究成果をはじめ、先端技術などの普及を推進しています。
ロ 日本酒、焼酎・泡盛などのユネスコ無形文化遺産への登録に向けた取組
文化庁や「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」等と連携して、伝統的な酒造り技術の保護・継承及びユネスコ無形文化遺産への登録実現に向けた取組を実施しています。
なお、「伝統的酒造り」は、令和3(2021)年12月に登録無形文化財に登録され、令和4(2022)年3月にはユネスコ事務局へ提案書が提出されました(酒レポート3(3))。
令和3(2021)年12月2日、「伝統的酒造り」が登録無形文化財に登録されました。登録無形文化財は、同年6月14日に一部が施行された文化財保護法の一部を改正する法律により新設された制度であり、書道と並び、登録無形文化財として初の登録になります。登録された伝統的酒造りのわざの要件は3点から成り、概要としては、米などの原料を蒸すこと、手作業で伝統的なこうじ菌を用いてバラこうじを製造すること、並行複発酵を行い、水以外の物品を添加しないこと等が挙げられます。また、登録無形文化財の保持団体として、「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」(令和3(2021)年4月16日設立)が認定されています。
更に、令和4(2022)年3月には「伝統的酒造り:日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術」のユネスコ無形文化遺産への提案が決定し、ユネスコ事務局に提案書が提出されました。「伝統的酒造り」は、伝統工芸技術、社会的習慣・儀式及び祭礼行事、自然及び万物に関する知識及び慣習の3つの分野において、無形文化遺産の保護に関する条約上の無形文化遺産に該当するものとして提案されています。
国税庁では、伝統的な酒造り技術の保護・継承及び日本酒、焼酎・泡盛等のユネスコ無形文化遺産登録に向け、文化庁や上記保存会等と連携し、様々な取組を実施しています。
(取組の一例)
○「伝統的酒造り」に係る調査等
○「伝統的酒造り」シンポジウム
「伝統的酒造り」について、酒造りの担い手や有識者を交えたシンポジウムを全国で順次開催
○PR動画
「伝統的酒造り」の魅力や歴史等を紹介するPR動画を制作し、YouTube「国税庁動画チャンネル」に掲載
○「伝統的酒造り」ポスター
○中吊り広告
ハ 酒類の品質及び安全性に関する支援
酒類の生産から消費までの全ての段階における酒類の安全性の確保と品質水準の向上を図ることを目的として、酒類の製造工程の改善などに関する技術指導を行っているほか、酒類の放射性物質に関する調査・情報提供などにより安全性を確認しています。
ニ 酒類総合研究所の取組
酒類総合研究所2は、酒類業振興の技術基盤を担う機関として、日本産酒類のブランド価値向上や酒類製造の技術基盤の強化等のための研究を行うとともに、酒類醸造講習等の酒類業界の人材育成に係る取組やアウトリーチ活動等を積極的に実施しています(酒レポート3(3))。
中小企業が大半を占める酒類業界が社会経済情勢の変化に適切に対応できるよう、日本酒造組合中央会の近代化事業をはじめ、業界団体の各種の取組を支援しています。また、関係省庁・機関や地方自治体等と連携しつつ、政府の中小企業向け施策(相談窓口、補助金、税制、融資等)について、事業者や業界団体に情報を提供し、活用の促進に取り組んでいます。
「酒類の公正な取引に関する基準3」等の周知・啓発や、酒類の取引状況等実態調査の実施により、公正取引の確保を推進しています。同基準については、平成29(2017)年6月の施行後の調査結果などを踏まえ、令和4(2022)年3月に改正しました(同年6月施行)(酒レポート3(4))。
イ 資源リサイクル等の推進
ビール業界では「地球温暖化対策計画」(令和3(2021)年10月閣議決定)に基づき策定した「低炭素社会実行計画」に取り組んでおり、国税審議会酒類分科会において、これらの取組を評価・検証しています(酒レポート3(4))。
ロ 20歳未満の者の飲酒防止対策
20歳未満の者の飲酒防止に向け、啓発ポスターやパンフレットを作成するほか、毎年4月を「20歳未満飲酒防止強調月間」と定め、関係省庁・業界団体と連携した啓発活動を行っています(酒レポート3(4))。
ハ アルコール健康障害対策
アルコール健康障害対策基本法(平成26(2014)年6月施行)に基づき策定された第2期の「アルコール健康障害対策推進基本計画」(令和3(2021)年4月〜令和8(2026)年3月)などを踏まえ、関係省庁、酒類業団体とも連携・協力しながら、20歳未満の者の飲酒防止対策やアルコール健康障害の発生防止等に向けた取組を推進しています。
そのほかの国税庁の取組等については、国税庁ホームページの「酒のしおり」(令和4年3月)をご覧ください。